出没
夏休みとは、勉強などのプレッシャーからはある程度解放され、自分の好きなことやゆったり過ごしたりなど、学生にとっては天国のようなものだ。しかしそんな中で1人、夏休みの過ごし方に悩んでいるものがいた。
「夏休みって、意外とやることねえんだよなあ、、」
夏休みは学校にも行かずにゆっくりと休めるので最初の方はいいのだが、1週間くらいしたらやることが無くなって暇になってくるのである。
『ピンポーン』
「そういやこの前頼んだ本届くの今日だったっけか」
そんな中家のインターホンが鳴ったので、青嶋は家の扉を開けた。
「はーいって、、、お前何しに来た、、?」
「こんにちは〜」
扉を開けると立っていたのは、配達員ではなく綿谷であった。
「おじゃまするね〜」
「ちょっおい!?勝手に入ってくんな!」
綿谷はそのままなりふり構わず青嶋の家の中へと入っていった。
「今何してたの〜?」
「いや、その前になんで来たのか理由を言ってくれよ」
何の連絡も無しに急に来た綿谷に少々恐怖感を抱いている青嶋である。
「いや〜青嶋くんが暇そうにしてる気がするな〜って」
「お前って俺の部屋に盗聴器でも仕掛けてる?」
「トウチョウキ、、?」
「いやすまん、なんでもない」
あまりにもピンポイントなタイミングで来たため、あらぬ疑いを綿谷にかける青嶋である。
「夏休みって意外とすることないよね〜」
「そ、そう!そうなんだよ!夏休みも夏休みで暇なんだよな!」
初めて綿谷との会話で共感できた気がして、思わず少しテンションが上がる青嶋である。
「それじゃあ暇ってことは夏休みの宿題も終わってるんだ〜」
「、、、、、、」
「あれ〜?」
無論、青嶋は夏休みの宿題に1個も手をつけておらず、綿谷の言葉はまるで届いていないように無言であった。
「ま、まあまだ始まったばっかだろ?そんな焦るもんでもない」
「焦るも何も夏休みの宿題ってコツコツやるものだよ〜」
「う、うるせえ、、」
綿谷の何気ない正論に思わず言葉が詰まる青嶋である。
「ま、まあ折角来たんだしゲームでもするか!」
「ん〜?」
「、、、、、」
勉強から逃げようとゲームを取り出すも、綿谷から机に放置されていたワークブックを見せつけられ、何も言わずに受け取る青嶋である。
「えらいね〜頑張って〜」
「クソガキが、、、」
何か言いたい青嶋だが、宿題をやっていない自分が全面的に悪いため、結局何も言えない青嶋である。
「てかお前は夏休みの宿題は終わってんのか?」
「暇だったから最初の3日くらいで終わっちゃった〜」
「ちっ、、この優等生が、、、」
綿谷はニコニコの笑顔で全て終わっているワークブックをカバンから取り出した。
「はあ、、、まあちゃんとやるから終わったらとっとと帰れよ?」
「ゲームは〜?」
「お前が勉強やれって言ったんだろうが!」
最近は上手く会話できていると思ったのだが、やはりところどころ噛み合わないこの2人である。そして数時間後。
「は〜、、、とりあえずこれでいいか、、?」
「お〜頑張ったね〜」
「お〜じゃねえんだよ」
このサボっていた期間分を何とか巻き返すくらいには終わらすことができ、綿谷に感心される青嶋である。
「ほら、勉強終わったんだからはよ帰れ」
「げーむ、、、」
「ああもうわかったよ!少しだけな少しだけ!」
「やった〜」
そうして結局2時間ほどゲームをした。
「お前なんで1人で帰れねえのにこんな遅くまで遊びやがるんだよ」
「楽しかった〜」
ゲームが終わった頃には19時を過ぎており、結局また青嶋が送り届けることになりそうなのである。
「はあ、、ほらとっとと行くぞ、、、って、、、」
「ありゃ〜」
青嶋が家のドアを開けると、まるで人が吹き飛びそうな程の風と当たると痛いぐらいの雨が降っていた。
「お前、、、また狙いやがったか?」
「プリンないの〜?」
「とぼけんな!あと人んちの冷蔵庫勝手に漁んな!」
偶然か必然か、前と同じように土砂降りの雨が降っており、とりあえず綿谷は青嶋の家に待機することとなった。
「てか、こういう時こその使用人なんじゃねえのか?車で迎え呼べばいいんじゃ?」
「こんな土砂降りの雨なのに迎えに来てもらうなんて危ないし申し訳ないよ〜」
「帰りたくねえのかそれともただの優しさなのかわからん」
「今日はお泊まりしてくるって伝えてあるから大丈夫だよ〜」
「やっぱお前狙ってるだろ、、、いやてか泊まらせねえよ!?!?」
何事もないかのように泊まろうとしている綿谷に驚愕する青嶋である。
「パンケーキ作っていい〜?」
「だからとぼけんな!あと人んちの棚の奥底まで勝手に漁んな!」
目を離すと勝手に物を漁り甘いものを食べようとする綿谷に青嶋は手をつけられなかった。
「どうするか、、、って、、なんだ?母さんから電話来たから1回静かにしろ」
「は~い」
そうして青嶋は携帯で電話をかけ始めた。
「もしもし、なに?」
『今帰ろうと思ったんだけど電車止まっちゃって家帰れないから今日はホテルに泊まるわね』
「いやちょ、、え?」
『夜ご飯は冷蔵庫の中のもので適当に食べてちょーだい、それじゃあねー』
「いやちょっとまっ、、、切りやがった!!」
「フライパンどこ〜?」
「ああ、下の棚にあるぞ、、じゃなくて!」
予想だにしない展開にパニックになる青嶋である。
「母さん今日帰れねえらしいから、雨止んだら送ってやるからとっとと帰れよ」
「え〜やだ〜」
「やだとかじゃねえんだよ帰れよとっとと」
ホットケーキを作りながら駄々をこねる綿谷である。
「着替えも持ってきてるんだよ〜」
「いや待て、、、本当に泊まろうとしてんのか??」
「だからそう言ってるじゃ〜ん」
「いやほんとに考え直せ!てかお前危機感ってもんはねえのか!?」
「?」
青嶋が綿谷に問いかけても、まるで分かってなさそうな顔をしている綿谷である。
「万一男の家に泊まって何かされたら、、とか考えねえのか??相当あぶねえことしようとしてんだぞ?」
「青嶋くんは私に何かするの〜?」
「いやしねえけど、、」
「なら大丈夫だね〜」
「そうじゃなくてだな、、うーん、、ああもう好きにしろ!!」
「やった〜」
反論しようとしたが何も思いつかなかっため諦めた青嶋である。
「万一俺がなんかしても知らんからな」
「別に疑ってないよ〜青嶋くんは優しいし、う〜んでも普段お世話になってるからちょっとならなんかしてもいいよ〜」
「いや、、、良くねえに決まってんだろ!」
「ありゃ〜」
ニヤニヤしながらそう言ってくる綿谷に少し顔が赤くなってしまう青嶋である。
「できたよ〜ホットケーキ」
「、、、お前まさかこれが夜飯って言うんじゃねえだろうな?」
「?」
「おめえの食生活が心配だよ俺は」
「心配してくれてるんだ〜ありがと〜」
「うんまあもうそういうことでいいや」
このくらいのことではそろそろ動じなくなってきた青嶋である。
「まあいい、それ食ったらとっとと寝ろよ」
「わ〜いやった〜」
そうして結局綿谷は青嶋の家に泊まることになってしまったのであった。




