アルバイト
「青嶋くんもパフェ食べる〜?」
「いらん、さっき散々食ったし腹いっぱいなんだよ」
青嶋たちはカラオケ終了後、近くのファミレスに寄っていた。そして綿谷と古谷の女子2人はすかさずパフェを口の中に運んでいた。
「じゃあ青嶋くんが食べない分は私が食べるわ」
「え〜俺も食べた〜い笑」
「、、、そんな目で見てもあげないわよ?」
「ひど〜笑」
そして古谷の隣には何故か先程までいなかった川上が座っていた。
「おめえ別のクラスだろ、なんでいんだよ」
「え〜笑別にいいじゃ〜ん笑」
「全然良くねえが」
川上は青嶋に対してにっこりとした笑顔を向けるも、それをあしらうかのように青嶋は冷酷な視線を川上に返した。
「てか、てめえら2人でここ来れば良かっただろ、わざわざ俺ら巻き込まんでも」
「は!?!?な、なんで私がこいつと2人で来なきゃいけないのよ!!い、嫌に決まってるでしょ!!」
古谷は顔を真っ赤にしながら立ち上がって大声で言葉を返した。
「え〜でも怜奈ちゃんこの前川上くんと2人で遊びたいってむぐぅ」
「しー!おい!おめえなんてこと言おうしてんだよ!」
「「???」」
綿谷がどうやら古谷にとってとんでもないことを口走りそうだったので、すかさず口を塞いで阻止する青嶋である。どうやら川上と古谷にはギリギリ聞こえていなかったらしく、困惑した表情を浮かべていた。
「ところでみんな夏休みの予定は〜?笑」
ひと段落したところで川上が青嶋たちに対して夏休みの予定を聞き始めた。
「お前には言わん」
「私は特にないかな〜」
「私も特にないわね」
言ったら何かありそうなので頑なに言わない青嶋と、本当に特に用事のない綿谷たちである。
「怜奈ちゃんは補習があるね〜」
「わざわざ思い出さないようにしてたのだから言わないで貰えるかしら」
散々赤点をとった古谷はもちろん補習祭りである。
「みんな暇だったら海とか行こうよ〜笑絶対楽しいよ〜笑」
「ふん、、まあ暇だったら考えてあげるわよ」
「そんな嫌そうな顔しないでよ青嶋くん〜笑」
青嶋はそんな提案に乗り気なはずもなく、虚無の顔をしていた。
「当たり前だ、なんでてめえらと海なんか行かねえといけねえんだよ」
夏休みは誰とも会わず静かに過ごすつもりだったので、尚更気が進まない青嶋である。
「私も海はどうしようかな〜」
「あ?なんだ?お前いつもこういうの乗り気だろ」
いつもはなにか遊びを提案されるといの一番に参加してくる綿谷であるが、今回はどうやらあまり乗り気では無いようだ。
「穂乃花は泳げないのよ、だからプールも海もいつも端っこで見てるだけ」
「あー、、まあ確かに泳げなさそうだもんなこいつ」
「ちょっと失礼じゃない〜?」
実は綿谷は泳げないのだ。常に危なっかしい感じがする綿谷は浮き輪でも溺れそうなので、プールなどではいつも水の中には入らないらしい。
「それなら2人で行ってきたら〜?そしたら怜奈ちゃんだって本望でむぐぅ、、」
「てことでお前ら2人で行って来いな!!こいつとはまた別の機会に遊んでやれ!あと夏休み中俺には連絡してくんな!」
またもなにか余計な発言をしようとした綿谷の口を抑える青嶋である。
「な、なんで私がこいつと2人で海に行かなきゃいけないのよ!!」
「え〜笑俺は行きたいけどな〜笑」
「う、うるさい!!あんたとなんて行くわけ、、、、まあ少しぐらいは考えてあげるけど!」
「え〜ほんとに〜?笑やった〜笑」
「少しぐらいよ!!行くなんて言ってないから!!」
「少しでも俺は嬉しいよ〜?笑」
「頭撫でてこないで!!」
「なんなんだこいつらは、、」
相変わらずの凸凹な関係に未だに慣れず、疲労困憊の青嶋である。
「ね〜カフェラテ頼んでいい〜?」
「呑気だなおめえは、なんか身に染みるわ、、」
「?」
隣に座っている綿谷も、こちらはこちらでふわふわとしていていつも通りな綿谷に、なんだか安心感を覚えてしまった青嶋であった。
「いらっしゃいませー、カレーパンとチョココロネですねー、400円になります」
夏休み初日、青嶋は母親のパン屋の手伝いに来ていた。普段もたまに暇な時は手伝いにくるのだが、夏休み中はいつもより少しだけ多く手伝う事になったのである。
「はあ、、ったく、、このクソ暑い時期になんでバイトなんて、、」
「ダメだよ青嶋くんお客さんの前で〜」
「あとなんでお前はここにいんだよ!!」
そして何故か青嶋の隣でエプロンを着て一緒にバイトをしている綿谷がいた。
「最近忙しいから綿谷ちゃんにも連絡して手伝いに来て貰ったのよ、ごめんねー綿谷ちゃん急に」
「大丈夫です〜」
「俺は全然大丈夫じゃねえんだけど」
奥の厨房から青嶋母もやってきてそう説明されたが、やはり納得がいくわけのない青嶋である。
「いらっしゃいませ〜〜」
「まあ声は普通に出てんな、申し分ない」
意外にも普段のふわふわした雰囲気とは少し違い、店内にしっかり通る声を出している綿谷である。
「アップルパイとメロンパンですね、400円になります」
「いらっしゃいませ〜〜」
このような感じで綿谷の初バイトは順調に進んでいるように思えた。しかし青嶋にとっては違和感しかなかった。
「すいません、トングありますか?」
「いらっしゃいませ〜〜」
「トングはこちらのトングを使ってお取りください」
「いらっしゃいませ〜〜」
「おいおま、、、綿谷さんちょっといいか?」
「なに〜?」
少し落ち着いてきたところで、青嶋は綿谷を呼び出した。
「声出してんのはいいんだけどよ、お前俺の横でいらっしゃいませ言ってるだけじゃね??」
「そんなことないよ〜?多分〜」
「そんなことあるだろ、ずっと見てたけどいらっしゃいませ以外の発声まだ聞いてないぞ」
「ずっと見ててくれてたの〜?」
「うん、少なくともお前が思ってるような言葉の意味じゃねえからな?」
実は青嶋はずっと綿谷のことを見守っていたが、今の所いらっしゃいませ以外の発声をまだ聞いていないのである。
「初日だから仕方ねえけど、、せめて何したらいいかくらいは聞いたらどうだ?」
「何したらいいの〜?」
「あーそうだな、、どうしよ、、」
仕事を任せたい気持ちと、任せたら何か変なことが起きそうで怖いという気持ちがせめぎ合っている青嶋である。
「んじゃあお客さんが買ったパンを袋詰めしてってくれ」
「任せて〜」
綿谷には、レジでパンを買ったお客さんのパンを袋詰めするという作業をやらせることにした。
「お客さんが会計するだろ?そのタイミングでパンを袋に詰めてくれ」
「わかった〜」
そうして2人の共同作業が始まった。青嶋が会計をし、その会計したパンを次から次へと袋に詰めていく綿谷である。
「うん、出来はわるくねえな、あとはもう少しスムーズになれば完璧だ」
「やった〜〜」
やはり女子なので手先は器用なのか、初めてにしては悪くないスピードで詰めていく綿谷である。
「頑張ってるわね2人共、綿谷ちゃん今日初めてだったからもう上がって大丈夫よー」
「は〜いありがとうございます〜」
「え?さすがに早くねえか?まだ1時間しか経ってねえぞ?」
しばらくした後、青嶋母が厨房からやってきて綿谷にそう伝えた。
「綿谷ちゃんいなくなって寂しいからって文句言わないの」
「んなわけねえだろ!」
母親から煽り気味で放たれた言葉に少しイラつく青嶋である。
「え〜私は寂しいよ〜?」
「んじゃあもうちょい手伝え、どうせ暇だろお前」
「え〜?いいの〜?」
「なんでそんな喜んでんだお前」
青嶋からの言葉になぜか目を輝かせる綿谷に困惑する青嶋である。
「だってまだ青嶋くんと一緒にいれるってことでしょ〜?」
「うん、すまん前言撤回早く帰ってくれ」
「やだ〜男に二言は無いよ〜」
「くそっ、、、まじミスった、、、」
綿谷の魂胆に気づいて帰らせようとするも時すでに遅く、結局青嶋のバイト終わりの時間まで2人一緒に作業することになったのであった。




