打ち上げ
「期末テストどうだったー!?」
「いやー俺結構ギリギリだわ」
「私今回結構調子良かったよ!」
期末テスト、長期休みを前にした最後の試練である。その試練を乗り越え歓喜するもの、そして絶望する人がいるのである。
「青嶋くんどうだった〜?」
「びっくりしたなんだよ!?」
期末テストが終わり教室で一息ついていた青嶋のもとに、綿谷が小声で話しかけにきた。
「教室では絡んでくんなって言ってんだろ、、!」
「だって気になるんだもん〜、ちなみに私は4教科100点だったよ〜」
点数を見せびらかしながら耳元に近づいてくる綿谷を押し返そうとするも、構わず話しかけにくる綿谷である。
「それで点数はどうだったの〜?」
「知らねえよ、赤点はねえんじゃねえの?」
「やった〜これでいっぱい遊べるね〜」
「てめえ遊びてえだけだろ」
両手でハイタッチしてこようとする綿谷の手を振り払う青嶋である。
「あなたたち珍しいわね」
「あ〜怜奈ちゃんだ〜」
そう話していると、青嶋たちの元に古谷も加わってきた。
「いつもは全く教室では話してないのに、今日は話してるのね」
「しらん、うるせえからどっか行け」
「相変わらず素っ気ない対応ね」
古谷が青嶋に話しかけると、青嶋はしっしと手で追い払う動作をした。
「ところで〜怜奈ちゃんはテストどうだったの〜?」
綿谷は古谷が持っているテストを拝借した。
(こいつ真面目そうだし、頭いいんだろうな)
古谷は見た目からして真面目そうな見た目をしており、クラスの役員にもなっている。
「もちろん、ほとんど赤点よ」
「は!?」
「なによ」
「あ、やべ、、!」
驚いた青嶋は大きめの声を出すと、周りが一斉にこちらの方を向いた。
「お前なんでそんな頭良さそうな感じして頭悪いんだよ、、!」
青嶋は古谷に小声でそう問いかけた。
「知らないわよ、あなたの勝手なイメージで私が勉強出来ると決めつけないでちょうだい」
「いや、、それはそうとしてほとんど赤点はやべえだろ」
「、、、、、うるさいわよ」
「やばいっていう自覚はあるんだな」
古谷は少し考え込みテストをくしゃくしゃにしてそっぽを向いた。
「でも青嶋くんも結構ギリギリだよね〜」
「うるせえ、赤点かそうじゃないかで雲泥の差なんだよ」
「そっか〜」
青嶋はギリギリ赤点を回避したテストを見せびらかし、そんな青嶋を綿谷は微笑ましそうに見ていた。
「ねえねえ!綿谷さんと青嶋くんって仲良かったの?」
「あ?」
「ご、ごめんなさい!」
そんなことを話しているとクラスの女子が青嶋たちの元に来て、がんを飛ばすと女子は頭を下げて謝り始めた。
「最近仲良くなったんだ〜」
「なってねえよ、勝手に事実を捏造すんな」
「え〜」
青嶋の言葉に綿谷は少し悲しそうな表情をした。
「青嶋くん良かったら期末テスト終わりの打ち上げこない?みんなでカラオケ行くんだけど、、」
女子は恐る恐る青嶋に話しかけた。
「あ?行かねえよ」
「私も青嶋くんも行くよ〜」
「は??」
綿谷の言葉に青嶋は困惑した表情を見せた。
「穂乃花が行くなら私も行くわ」
「ほんとに!?ありがとう!」
「うん〜また放課後ね〜」
そうして女子はその場から去っていった。
「おい!何勝手に話進めてんだよ!てか行かねえからな??」
「大丈夫だよ〜みんな歌う訳じゃないし私も歌わないから〜」
「カラオケの心配はしてねえよ!打ち上げ自体の話だわ!」
やはり会話が噛み合わない綿谷に頭を抱える青嶋である。
「来てくれたらポテトぐらいはご馳走してあげるわよ」
「食べ物で釣ろうとすんな、てか人の財布だぞそれ」
「穂乃花のお金は私のお金よ」
「ただの最低じゃねえか」
何故か古谷は綿谷の財布を取り出し、ポテトを奢る宣言をし始めた。
「確か今日行くカラオケにエビチリもあったと思うよ〜」
「、、、、、、まあ飯食うだけならついて行ってやる」
「チョロイわね」
「ふふふ」
青嶋はうるさい2人を静かにさせるため、''仕方なく''打ち上げに行くことになったのであった。
「愛と勇気だけがー!」
(うるせえ、、)
結局打ち上げに来てしまった青嶋は、カラオケの音量に苦しんでいた。元々静かな方が好きなので、青嶋にとって不適合の場所ではあるのだ。
「は〜い青嶋くんあ〜ん」
「ふぐっ、相変わらずうめえなエビチリはって、、、自分で食うからほっとけよ!」
そんなことを考えていると隣に座っている綿谷から口の中にエビチリが投下された。
「ったく、、頭痛くなってくるわ、、」
「ごめんね〜無理やり連れてきちゃって」
「わかってんなら無理やり連れんな、あと頭撫でるのやめろ」
苦しんでいる青嶋の頭を撫でている綿谷の手を、青嶋は振り払った。
「ったく、、、まあ金払ってくれるって言うから来た俺も悪いが、、」
実際エビチリに釣られてついてきた自分も自分であるので、綿谷を責めることもできない青嶋である。
「次綿谷さんだよー!」
「は〜い」
「え?お前歌わないんじゃ、、」
そんな青嶋の声は届かず、綿谷はマイクを持って歌い始めた。
「ねんね〜、ねんね〜、おてんばぼうや〜、今日はもう閉じちゃおうそのひとみ〜」
「なんで子守唄??」
先程までうるさかった歌声とは一変して、綿谷は静かな子守唄を歌い始めた。
「てか、、、うまくね、、??」
青嶋はいつの間にか綿谷のふわふわとした優しい歌声に聴き入っていた。
「そりゃあ穂乃花は吹奏楽部だもの、歌は上手いに決まってるわよ」
「へえ、、ただのポンコツじゃねえんだな、、」
「期末テスト学年1位になんてこと言ってるのよ」
綿谷はテストはほとんど100点であったため、言わずもがな1位だったようだ。
「おやすみなさいおてんばぼうや〜」
「綿谷さんすげえ!」
「歌も上手なんだね!」
「ありがと〜」
歌い終わると、綿谷の素晴らしい歌声にクラスメイト一同は感動していた。
「青嶋くん私の歌声どうだった〜?」
「しらん、普通だ普通」
青嶋に感想を求めようと近づいてくる綿谷を軽くあしらう青嶋である。
「む〜、、頑張ったのに〜、、」
思った返答が来なかった綿谷は、ぷくっと頬を膨らませた。
「歌は結構得意なんだよ〜?」
「しらん、俺に歌の良さはわからん」
「さっきあれほど上手いって褒めて聴き入ってたのに、よくそんなこと言えるわね」
「!!!!」
「ちょ、、!ちがっ、、!」
急な古谷の爆弾投下により、綿谷の表情は一気に変わった。
「やった〜褒められた〜!」
「お、俺は褒めてねえ!こいつが勝手に!」
「でも言ってた事実は変わらないわよ?」
「う、うるせえ!吹奏楽部なんだったらそりゃあ上手いに決まってるだろ!」
素直に褒めるのが恥ずかしい青嶋は、吹奏楽部というものをたてに使った。
「、、、?私吹奏楽部じゃないよ〜?」
「え?は、、?」
「あ、ごめんなさいねあれ嘘よ」
「はあああ!?!?」
突然の事実に驚きを隠せない青嶋である。
「褒めてくれて嬉しい〜今度もっと聴かせてあげるね〜」
「はあ、、もう知らん、、、勝手にしろ、、、」
褒められてニコニコご満悦な綿谷と、期末テストとカラオケと綿谷の疲れが一気にきて何も考えられなくなってしまった青嶋であった。




