ケーキとお嬢様
「いただきま〜す」
「どうぞー」
「よくねえよなんでだよ」
青嶋母が帰ってきて、何故か綿谷も再び家の中へと戻っていっていた。そして青嶋母が抱えていたケーキを何故か一緒に食べることになったのである。
「おいしい〜」
「おめえはなんで何食わぬ顔で普通に食ってんだ」
そう言いながら綿谷と一緒にケーキを頬張る青嶋である。
「もーこんな可愛い女の子連れてくるならもっと豪華な夕ご飯用意したのにー」
「連れてきたんじゃなくて勝手に来たんだよこいつは」
「え〜ちゃんと約束したよ〜」
「うん、勉強会をする約束をしただけな?家で遊ぶ約束はした記憶ねえよ」
そんなことをいいながら、ペロリとケーキを平らげる青嶋である。
「あらーエビチリ作ってくれたのねーありがとー」
青嶋母は冷蔵庫に作り置きしてあるエビチリを見て、綿谷に再びペコリとお礼をした。
「それにしても髪の毛ふわふわねーどんなお手入れをしているの?」
そう言いながら綿谷に駆け寄って髪の毛を触り始める青嶋母である。
「えっと〜、色々してるんですけど〜、」
「おい、嫌がってんだろ。やめろよその距離近えの」
「あら、綿谷ちゃんには優しいのねー」
「黙れ、てかお前も食い終わったんならとっとと自分の家に帰れ」
母親の言葉を交わしながら、しっしと綿谷を帰らせようとする青嶋である。
「はあ、、あんたって本当に女心がわかんないわね、ほんっと誰に似たのかしら」
「いてえ!親が子に暴力すんな!」
青嶋の発言に少しイラついた青嶋母は、青嶋に対して拳を突き立て頭をグリグリしていた。
「綿谷ちゃん美味しかった?来てくれれば毎日持ってくるわよ?」
「やった〜ありがとうございます〜」
「毎日来ねえし来させねえよ。ほら、はよさっさと帰れ」
「あ〜」
ケーキを食べ終わった綿谷を持ち上げ、帰らせようとする青嶋である。
「送ってくれないの〜?」
「送るわけねえだろバカか」
「バカはあんたよ!こんな夜中に女の子1人で帰らせようとするやつがどこにいるのよ!」
「痛えって!わかったから!送るから!」
綿谷を1人で帰らせようとすると、青嶋母の鉄槌が降りたので仕方なく綿谷を送り届けることになった青嶋である。
「ったく、、、頭ズキズキするわ、、、」
「おつかれさま〜」
「撫でんな、てか元はと言えばお前のせいだからな?」
痛がっているところを撫でようとする綿谷の手を振り払って、そう言葉を返した。
「青嶋くんがいれば夜に歩いてても安心だよね〜」
「お前は頼むからこの時間に1人で出歩いたりすんなよまじで」
「え〜なんで〜?」
「なんでって、、」
青嶋の言葉に首を傾げる綿谷である。
「おめえ危なっかしいんだよ、それがましてや夜に1人で出歩くとかダメに決まってんだろ」
青嶋は普段の日常からふわふわしていてなんだか危なっかしい綿谷に対して、そう忠告した。
「心配してくれてるんだ〜嬉しい〜」
「心配なんてしてねえよ!てか人に心配かける前にとっとと自分の家に帰れよ!」
「青嶋くんがいるからこの時間まで遊べるんだよ〜ありがとね〜」
「おめえと会話が噛み合ったことが1回もねえ気がするわ、、」
青嶋の言いたいことが綿谷に全くもって伝わらず、呆れ果てる青嶋である。
「ケーキ美味しかったな〜どこのケーキなんだろ〜青嶋くんしらない〜?」
「ああ、あのケーキは母さんがパン屋で作ってるケーキだ、毎回残ったやつを持ってくんだよな」
「え〜!?そうなの〜!?」
実は青嶋母はパン屋を経営しており、その余ったものを時々持ってくるのだ。そのまさかの情報に驚いた表情を見せる綿谷である。
「いいなあ〜美味しいケーキ食べ放題だ〜」
「別に俺甘いものそんな食わねえから、基本的に全部母さんが食ってるけどな」
「そうなんだ〜消費に困ったら私が食べに来てあげるよ〜」
「うん、それなら普通に店で買ってくれよな?」
「それじゃあお店の名前教えて〜」
「やっぱなんか嫌な予感するから教えねえ」
「え〜」
なんでか分からないが、店を教えると青嶋にとって厄介なことになりそうなので、教えないことにした。
「まあ、、ほんとに消費に困ったら学校にでも持ってきてやるよ」
「まかせて〜ケーキならいくらでも食べれるよ〜」
「太るぞ」
「あ〜女の子にそんなこと言ったらダメなんだよ〜?」
「食いすぎたら太るのは事実だろ」
「女の子は結構気にしてるんだよ〜?」
青嶋のデリカシーの無い言葉に、少しだけ怒った表情を見せる綿谷である。
「あ、私の家ついたよ〜」
「ん?ここか??見た感じ塀しかねえんだけど、、どこにあんだ?」
青嶋は辺りを見渡したがそこには長く続く塀しかなく、「家」と呼べそうなものはなかった。
「この塀の向こうが私の家だよ〜」
「は??これ??」
塀の奥に目線を向けた青嶋が見たものは、まるでお嬢様が住むような、小さめのお城とも言えるほどの大きさの「家」であった。
「鍵忘れちゃった〜」
「おかえりなさいませ穂乃花様、こちら鍵になります」
「ありがと〜」
「いやちょっと待てそれどころじゃねえんだけど」
あまりの情報量の多さに、頭がパンクしそうになる青嶋である。
「クソでけえ家に執事もいるとか、、、漫画でしか見たことねえ、、、お前ってお嬢様だったのか、、?」
「ん〜細かいことはよく分からないけど大きい家だよね〜」
「そ、そうか、、」
まるで他人事のように首を傾げる綿谷に、少しばかり呆気を取られる青嶋である。
「ま、まあ細かいことはどうでもいいか、、んじゃあ俺は帰るから、じゃあな」
「ばいば〜いまた明日ね〜」
そうして塀の外に出て帰ろうとする青嶋に、綿谷は玄関から手を振っていた。
「青嶋様、お車で自宅までお送り致します」
「いやいいって!なんか怖えわ!」
まるで映画でしか見たことない高級車を前にして、興味より恐怖が勝っている青嶋である。
「帰り際に何かあったら穂乃花様の責任になってしまいます。なのでお送りさせて頂きます」
「ああもうわかったよ!勝手にしろ!」
1人で帰ろうとすると執事のような人に引き止められ、半ば強制的に車に乗せられた青嶋である。
「てか、これあるんなら最初っから俺ん家まで迎えに来りゃ良かったんじゃねえか?」
青嶋は、広い車内の中でひっそりとそう呟いた。
「基本的には穂乃花様からご連絡があればお迎えにあがるのですが、今回は連絡がなかったので穂乃花様の意思で歩いて帰ることを選択されたのでしょう」
「んまあよく分かんねえけど、とりあえず勝手に人の家に入り込んで来るなって注意しといてくんねえか?」
「到着致しました」
「おい無視すんな」
執事を通して綿谷に対して注意をしようと思ったが、フル無視される青嶋である。
「改めて、穂乃花様と仲良くしてくださって本当に感謝しております。よく分からない子だとは思いますが、悪い子ではありません。どうか、これからも穂乃花様のことをよろしくお願いします」
「別に仲良くしてるつもりはねえんだけど、てかよく分からない子っていう認識はあんのかよ」
「穂乃花様は気まぐれですので。決して悪気がある訳じゃなく、ただ素直に行動してしまう子なので、悪い子ではないのです。それをわかって頂きたいのです」
執事は青嶋に対して頭を下げた。
「何を勘違いしてんのか知らねえけど、別にあいつ自体を悪いやつだとか嫌なやつだとは思ったことねえよ。ただ俺は人と関わるのが、人間自体が好きじゃねえんだよ」
「そうなのですね、安心致しました。是非これからも穂乃花様と仲良くしてくださって欲しいです」
「お前俺が今言ったことの意味絶対わかってねえだろ」
「、、、?何か勘違いをしているでしょうか?」
「はあ、、なんでもねえよ。てかはよ帰れ」
「かしこまりました」
そう言って執事は車に乗ってそのまま帰っていった。
「飼い主に似るって言うのはこういうことか?いやこれどっちが飼い主だ?」
少しだけ執事に対して綿谷に似た何かを感じて、家に帰ったあとはずっとそんなことを考えていた青嶋であった。




