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主人公
緩む息の音がした。
「――つまり、地球、いや太陽系、いやいや、この宇宙こそ、そっくりムーワールドだったというわけだ。その帝王が、お前ということか?」
王たるショーグンの、とぼけ声だった。僕は首を振る。
「アナタは旅人族だったのね。どうりで……」
マリーが言う。僕は首を振った。
「行ってこい! 究極の宇宙!」
エマが涙顔で壮行の言葉をよこす。僕は首を振る。
僕は首を振る――
僕は、首を振ったのだった!!!
「彼女は、マリは――“主人公”とのみしか言ってない!」
「え?」
僕は、正面、やや下方を見据えると、声に出した。
「隠れてないで、出て来なさい……」
言葉に応じて、空間に何かが析出する。
それは――
ユイ、だった。
生まれたままの姿の、小学2年生。我が妹、白神結衣だった。
たった今――
日本とリアルタイムでリンクされたオリハボディ。ユイが、目をパチクリさせ――
「お兄ちゃん!」
と綺麗な声を発したのだった。




