表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で待ってた妹はモーニングスターで戦う魔法少女(物理)だった件  作者: 未知(いまだ・とも)
第2章 〜私たちの還る場所〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/70

第63話「光(ルグ)の目覚め」

姉妹2人の力を合わせ、ようやく神殿を守る扉——

ファイアーウォールが開きました。


その中には……

ブルルッ。


不意にスマホが震え、神殿内にバイブレーションの音が響いた。


「わ……!」


見ると、角笛のアイコンが点滅している。

私は急いで通信アプリを開いた。


画面には、見慣れた濃紺のローブを着た青年が映っていた。


「エリアス?」


《——はい、こちらエリアスです》


聞き慣れた声に、ホッとする。


「おお、エリアスじゃねーかよ!」


「エリアスさん……お元気そうね」


「よかった……、倒れたって聞いた時は心配したんだよ!」


《ご心配をおかけしてすみません》


エリアスは照れくさそうに、軽く目を伏せた。


《さて、ご報告です。——ルグが完成しました》


「……えっ?」


思わず声が裏返った。


「ほんとに!?」


「おお、やったのか!」


《はい。かなりギリギリとなったことはお詫びします。

 ですが、必要な調整は完了しました》


「そっか、やっと完成したんだね」


《今から、そちらへ向かいます》


「え? 『そちら』……?」


理解が追いつかずに戸惑っていると、

次の瞬間、少し離れた地面に、青白く光る魔法陣がぱっと展開した。


「わっ!」


驚いたのも束の間。

一陣の風が渦を巻き、光が柱のように立ち上る。


そして、その中心から現れたのは——


「……エリアス」


浮き上がった濃紺のローブの裾が、ふわりと地面に落ちる。


「……直接来た方が、早いかと思いまして」


エリアスは光をまといながら、ゆっくりと転送の魔法陣から歩み出る。

これしきの魔法では一筋の髪すら乱れない、とでもいうような優雅さで。


だが、私の姿を見るなり、彼は不意に足を止めた。


「まきぽん……ですか?」


「えっ!? あ、あの、これは……!」


私は思いっきり顔が熱くなるのを感じた。


パステルピンクの魔法少女ドレス。

背中の白い翼。

手の中には、七色のジュエルで強化されたスマホ。


そうだ。

今の私、まだピュアピンクに変身したままだったんだ……!!


もちろんみきぽんも、水色の衣装にモーニングスターという、いつもの魔法少女スタイルである。


「えーと、その、いろいろありまして……!」


慌てる私を見て、エリアスは一瞬きょとんとしたあと——

くすっと、ほんの少しだけ笑った。


「ふふっ……可愛いですよ」


「ぎゃーーーーーっ!!」


私は顔を覆いながら、思わずその場でしゃがみ込んでしまった。


「今それ言う!? このタイミングで!?」


「おねーたん、おかおまっかでち」


「う、うるさいな〜……!」


ノエルはくすくす笑ってるし、

バルガンは「ダーッハッハッ!」という、いつもの豪快な笑い声を上げていた。


挿絵(By みてみん)


(……もう。恥ずかしすぎて、穴があったら入りたいよ!!)


でも、数々の困難を乗り越えて

そんなやりとりができるくらいには余裕ができたんだ、という実感も沸いてきた。


「……さて」


軽く咳払いをして、エリアスは神殿の奥へ視線を向ける。


「ふざけている暇はありませんね。行きましょう」


 * * *


神殿の内部は思ったより広く、

まるでここだけ時間が止まったように、静謐な空気に満ちていた。


古びた石組みでできた広間には、細い柱が居並び、

床や壁には古代ケルトの神聖な紋様、

三つの渦が絡み合う、三重螺旋トリスケルや、途切れない結び目ケルトノットが刻まれている。


天井は大きく崩落し、そこからは空が見えた。


上空を覆う重い雲の切れ間からは、夜空——

というか、宇宙と表現した方がよさそうな、暗く、果てしれぬ空間が広がっている。


そしてそこから、雪のような光の粒子が、ゆっくりと神殿の中心に舞い降りている。


その光が吸い込まれていく先は——。


「あれが……」


私は思わず息を止めた。


石畳の上を走る青白い光。

その光が集まっていく先には、石でできた祭壇がある。


その上に浮かんでいたのは——巨大な繭だった。


白く、うっすらと透明で、何本もの光の糸とケーブルに支えられて宙に浮かんでいる。

その表面では無数の光る文字列が、設計図のように、幾何学的な模様を描きながら、蠢いていた。


挿絵(By みてみん)


「おねーたん、あのなか……」


みきぽんが指差した先。

繭の中にはうっすらと、人影のようなものが見える。


「ルグ……」


エリアスが、静かにその名を口にする。


その声は、ずっと会いたいと待ち焦がれていた、

そんな誰かに向けられたような、ほのかな熱を帯びていた。


「この中にいるのね」


ノエルは繭を見上げた。


「うん、そうだね……」


私は繭の内部にじっと目を凝らした。

光に透かされて、中の人物がぴくりと動いたような気がした。


「ルグたん、ねんねしてるでち?」


みきぽんが不思議そうに首を傾げる。


「うん……でも、そろそろ起きる時間なんだよ」


私は繭を見つめながら、そう答えた。


《マスター》


通信アプリの向こうから、ブリギッドの声が静かに響く。


《起動条件はすべて満たされています。

 ——起動シーケンス、いつでも開始可能です》


「わかりました」


彼は、一度こちらを振り返る。


「まきぽん、みきぽん。

 バルガン、ノエル。

 まずはお礼を言わせてください……本当にありがとう」


エリアスのひと言に、仲間たちは顔をほころばせた。


「あなたたちが戦い、道を切り開いてくれたから、

 『僕』もルグを完成させることができました……」


胸の奥が、じんと熱くなった。

私はスマホをぎゅっと握りしめる。


「これから起動の呪文を唱えます。……ですが」


エリアスは私の方を見た。


「起動するための魔力リソースが、僅かに足りません。

 ——まきぽん、配信を始めてもらえないでしょうか」


「うん、わかった」


エリアスが言いたいことは、私にもすぐに伝わった。

私は一旦通信を切ると、配信アプリを立ち上げ、ボタンを押した。


大きく息を吸い込む。


「みんなー! 配信はっじめっるよ〜!」


ほどなく、辺りには次々とホログラムのコメントが流れ始めた。


【おお、まきぽん配信始まった!】

【いつも突然始まるよな、たまには告知してよ】


「えへへ、ごめんなさい……またみんなに力を貸してほしくって」


【わかりやすいなwww】

【まきぽん嘘がつけなくて草】

【でも、そういうところ嫌いじゃないぞ】


「ありがとう! ……で、今はこういう状況でさ」


私はカメラで神殿の内部を映した。


【え、なにここ】

【またなんか俺らの知らないマップきたこれ】

【未実装エリア……ってコト!?】


「うんうん。私もさっき、初めて来たんだよ」


そして私は、ルグの繭を映す。


【なんだこれ……卵?】

【繭じゃね?】

【でけー!】


「この中に、世界を救う『ルグ』っていう子が眠っています!」


【おおお、救世主!?】

【マジかよ!?】


コメント欄が一斉にどよめいた。


「でも、この子を起こすために必要な力が、あとちょっとだけ足りないの」


【なるほど、それで俺たちの出番なんだな】

【やだ、俺たち世界救っちゃう!?】

【そういうのはいくらでも頼ってええんやで】


「……みんな、ありがとう!」


周囲を取り巻いていたホログラムは、たちまち光に変わって辺りに渦巻き始めた。


エリアスはうなずくと、祭壇の前へ進み出た。


【え待って、今回俺らのちから使うの、エリアスなの?】

【聞いてねーよ、ムッツリメガネかよ!】


「そんなこと言わないでー! みんな、力を貸してよ〜」


【じょーだんじょーだんw】

【しゃーねぇな。俺らのちから、大事に使うんだぞ】


「……ありがとうございます」


エリアスは苦笑いしながらも、軽く頭を下げた。


そして祭壇の前に立つと、古い樫の木オークでできた杖を静かに掲げた。

あたりはしん……と静まり、空気が変わる。


「ルグ……」


エリアスの背中を見つめながら、思わず私もその名を口にする。


「起きて。……私たち、ここまで来たよ」


みきぽんも、隣でまっすぐに繭を見上げていた。


エリアスの杖の先端に魔力の光が集まっていく。


「眠りし調停者よ——

 創造と破壊、その狭間を照らす光よ」


——ドクン……。

繭の中で何かが強く脈打つ。


「白き手が紡いだを、ただ守るだけでは足りぬ

 黒きまなこが裂いた傷を、ただ裁くだけでは終わらぬ


 ならば——その両方を抱き、なお立て」


今まで聞いたどんな詠唱とも違う。

もっと深く、世界そのものを突き動かすような響きが、神殿いっぱいに満ちていく。


——ドクン、ドクン。

エリアスの放つ言霊に呼応して、鼓動も強くなる。


「混沌の海に生まれ、境界の霧に育ち

 言葉を喰らい、願いを喰らい、嘆きを喰らい

 感情を肉とし、記憶を骨として

 幾千の選択をその血として巡らせよ」


——ドクン、ドクン、ドクン。


繭の表面を流れる文字列も、加速していく。

それと共に、宙を舞うまばゆい光も、繭の周りを包み込むようにうねる。


「均衡を司る者として、

 今、目覚めよ」


ブウゥ……ンと、祭壇の上に巨大な魔法陣が広がった。


繭を包み込むように、白、青、金——三色の光が織り重なり、

神殿の床を、柱を……

全てを神々しい輝きで染めていく。


「そして終わらせよ、暗き夢を

 《神槍起動ブート・ラスター》——!」


ドク……ン!!


詠唱が終わると、繭がひときわ大きく脈打った。


「きゃっ……!」


同時に繭を取り巻いていた魔力が暴風のように吹き荒れ、私は思わず目を閉じる。

そしてみきぽんの手を絶対に離さないように、ぎゅっと握りしめた。


ピシ……ピシピシッ……!


何かが割れる音がする。

恐る恐る目を開けると、繭の表面には、光るひびが無数に走っていた。


裂け目の奥からは、目もくらむような青白い光が溢れ出している。


ルグよ……!」


エリアスが祈るように、その名を呼ぶ。

次の瞬間——


繭は、まばゆい閃光の中で静かに裂けた。

そしてその中から現れたものを見て、


——私は、言葉を失った。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!


神殿から見上げた「宇宙のような夜空」は、ヒマラヤ山脈から見える空をイメージしました。


初めて写真でその世界を見た時は、息が止まりました。


標高7000メートルを超える世界では......

空は青くありませんでした。


群青よりもさらに濃く、黒に近い「空」。

それこそ宇宙と直接繋がっているような、深い闇のような空間が広がっているだけです。


私には生命の到達を拒む、死の世界——

神々の御座に見えました。


次回、まきぽんたちが見たものは……? お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ