第60話「心を一つに——ピュアピュア、反撃開始!」
愛されていた記憶を取り戻したまきぽんは、魔法少女ピュアピンクに変身!
二人の反撃が、今、始まる……
「くそっ……!」
魔力の供給が絶たれると共に、
場を支配していた黒いモニターも次々と消滅していき、リヒトは顔を歪めた。
「なんでだよ……!
お前みたいな底辺が、そんな目で俺を見るんじゃねえッ!」
彼がいくらPCを操作しても、もう配信画面は現れない。
さっきまでみたいな『公開処刑』は、もうできないようだ。
だがリヒトは、まだ歯軋りをしながらこちらを睨みつけている。
(なに? この人……まだ諦めてない?)
「……だったら、俺が直接やってやるよ」
低く吐き捨てるように言った、次の瞬間。
リヒトの背後から、どす黒い霧が噴き出してきた。
「なっ……!?」
そしてリヒトは立ち上がると、
神殿の階段を一段、また一段と降りてきた。
彼の背中では闇が大きくうねり、やがてそれは、骨のような節を持つ黒い蝙蝠の翼へと形を変えた。
バサッ——!!
禍々しい羽ばたきが、聖域の空気を震わせる。
「てめぇ……まだやる気かっ!」
バルガンは私たちを庇うように、戦斧を握り直した。
「……配信がダメでも、俺自身の魔力はまだ残ってんだよ」
彼はノートPCを抱え直すと、ニヤッと唇を歪めた。
「バロール様にもらった、この力がなッ!」
ドウンッ……!!
低い地鳴りと共に、リヒトの足元に闇色の魔法陣が広がった。
そこから吹き上がってくる負の波動に、私は思わず一歩後ずさる。
「おねーたん!」
みきぽんが、すぐ隣でモーニングスターを握りしめる。
彼女の瞳の奥には、
恐れを抱きながらも立ち向かう、ピュアブルーの勇気が宿っていた。
「大丈夫。一緒に戦おう!」
私はそう言って、スマホをぎゅっと握った。
手の中で、ピュアピンクのスマホが力強く輝いた。
【うおおおお、ラスボス第二形態!?】
【ブラックリヒトきた!】
【まきぽん、落ち着け! お前はもう一人じゃない!】
「ありがとう……私たち、負けないよ!」
相変わらずものすごい勢いで流れているコメントに、私は小さく頷いた。
リヒトは大きく羽ばたくと、ゆっくりと上空に浮かび上がっていった。
そして右手を掲げると、手のひらの上に黒くゆらめく火球を作り出した。
「……ここでくたばれ、まきぽんッ!!」
リヒトが振りかぶるように火球を投げる。
それは空中でいくつかに分裂すると、
逃げ場を塞ぐように、次々と私たちめがけて降り注いできた。
「させないでち!」
咄嗟にみきぽんが前に飛び出し、モーニングスターを構えた。
ブオォォン!
勢いよく振り回された鉄球に触れると、私たちを狙った火球の数々は、跡形もなく消え去っていった。
「ナイス、みきぽん!」
【ピュアブルー、ミサイル迎撃機能付きw】
【魔法少女とは……】
【今日も物理が絶好調な件】
「まだまだぁッ!」
リヒトは間髪を入れずに、再度火球を叩き込んできた。
「バルガンさん、今度は左から来るわ!」
「おう、見えてるぜっ!」
バルガンはノエルを庇うように、盾を構え直して一歩進み出た。
ドォォォン!!
火球は盾の表面で大爆発を起こしたが、ダメージを喰らうまでには至らなかった。
「チッ……邪魔すんな、雑魚が!」
「邪魔してんのは、おめーの方だろうが!」
バルガンの怒鳴り声が響く。
「みんな……負けないで!」
ノエルは竪琴をかき鳴らし、私たちの周囲に守護の光を巡らせた。
柔らかな旋律が、心を鼓舞してくれる。
(よし、このメンバーなら戦える!)
私は、スマホを握りしめながらリヒトを見た。
——だが。
(あれ?……なんか)
ふと、リヒトの仕草が気になった。
彼の大きな翼は、火球を打ち出した後……
必ず内側に閉じて、身を守ろうとしている。
そして火球を打ち出すために、翼が開かれた一瞬。
その中心では——
リヒトがノートPCを胸に抱え、絶対に死守しようとしているのが見えた。
「あ……」
頭の中で、ピコンと電球が点くような音がした。
(そうか!)
私はふん、と鼻から息を吐いて、少しだけ口元を緩めた。
「ねえ、リヒト」
「……は?」
突然笑われたのが気に食わないのか、リヒトが眉をひそめる。
私は全てお見通しとばかりに、カマをかけてみることにした。
「アンタ、そんなにそれが大事なの?」
「……何?」
「そのノートPC」
私は胸元に抱え込まれたPCを、まっすぐに指差した。
「それ、壊されたら困るんでしょ?」
リヒトの顔が、ぴくりと引きつった。
「ばっ……バカ言え!
これは『配信場』のコアだぞ! 壊されたら……」
そこまで言って、サッと顔色が変わった。
「……あっ」
【自分から白状してて草】
【攻略情報ありがとうございます】
【リヒトくん、焦ると口が軽いタイプwww】
「へえ、……そっか」
私は、にっこり笑った。
「ありがとね。弱点、教えてくれて!」
「て、てめぇ……!!」
リヒトの顔が真っ赤に染まる。
黒い翼がバサッと荒々しく広がり、再び私たちに向かって火球の雨が降り注いだ。
でも、もう遅い。
「みきぽん!」
「あい!」
私はスマホを握り直し、みきぽんはモーニングスターを構えた。
「目標、あのおにーちゃんのパソコン!」
「まかせるでち!!」
私の足元に、柔らかなピンクの魔法陣が広がった。
そしてみきぽんの足元には、深く澄んだ青の魔法陣。
二つの円陣は、互いに共鳴するように輝きを増していく。
(……すごい!)
溢れてくる力に、私は息を呑んだ。
みきぽんの勇気が。
みきぽんの決意が。
私の中に流れ込んでくる。
そして、私の胸の奥から生まれた光もまた、みきぽんへと繋がっていく。
(今なら、わかる……)
私たちは一つだった心を、二つに分け合って。
そうやって、いくつもの困難を乗り越えてきた。
だったら——
(今度は、その心を一つにして戦う!)
コメント欄は、もはやお祭り騒ぎだった。
【いけええええええ!!】
【合体技くる!?】
【うおおおテンション上がってきた!!】
勢いよく流れるコメントは、魔力に変換されて、私たちの周りを光の洪水のように渦巻いていく。
「いくよ、ピュアブルー!」
「おっけー! ピュアピンク!」
ふたりの声が重なった瞬間、
ピンクと青の魔法陣は、私たちの足元でひとつに重なって、巨大な光の輪となって広がっていった。
ドォォォンッ——!!
そして浮島全体を揺らすような、強い波動を放出した。
激しく風が吹き荒れ、私たちの背中で白い翼がはためく。
リヒトは焦りのあまり、唇をわななかせた。
「おい、よ、よせ……!」
彼はますますノートPCを抱え込む。
「それだけは……!」
私は、スマホを握る手にぐっと力を込めた。
みきぽんも、青白い光をまとったモーニングスターを大きく振りかぶる。
「アンタの『配信』は——」
私はリヒトを見据えた。
「これで終わり!」
「おねーたん、いっくよーー!!」
目を閉じると、幼い頃の記憶に刻まれた、ピュアピンクの技名が浮かんできた。
「ピュアハート♡サルベーションーーーッ!」
「マジカル☆シャイニング・モーニングスターーーッ!」
私たちの掛け声と共に、
ピンクとブルー、二つの光が螺旋を描きながら、リヒトめがけて走っていった——!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
守られて泣いているだけのお姫様じゃなくていい。
私たちも戦えるんだ——。
テレビの魔法少女たちは、幼い私に、そんな勇気を与えてくれました。
皆さんにとって、思い出深い魔法少女とは誰ですか?
ぜひ、感想で教えてくださいね♪




