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異世界で待ってた妹はモーニングスターで戦う魔法少女(物理)だった件  作者: 未知(いまだ・とも)
第2章 〜私たちの還る場所〜

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第59話「魔法少女、再起動!」

妹を消すか、自分が死ぬか。

究極の選択を迫られたまきぽんだが……


みきぽんと共に、第三の選択肢を見つけるために立ち上がる……!

「……おねーたん」


みきぽんは青白い光を身に纏いながら、力強く私を見上げている。


「こんどは、おねーたんのばんでち!」


みきぽんは胸元のブローチを叩く。

すると、ぽふん、という可愛らしい音とともに、銀色のスプーンとプリンが現れた。


「……え?」


プラスチックのカップからは、甘いカラメルの香りが漂ってくる。

それは、あの日——


私がこの世界スカに転移してしまった夜。

冷蔵庫の中に入っていた、デパ地下のプリンだった。


幼い私が泣いてまで欲しがった、

おかーさんの手作りプリンじゃない。


——だけど。


甘い香りとともに、おかーさんの優しい笑顔が、ふと浮かんだ。


仕事で疲れていたはずなのに、

私を喜ばせようとして、買ってきてくれたプリン。


不器用だけど、おかーさんの愛情は、ちゃんとそこにあったんだ。


みきぽんは銀のスプーンでプリンをひとさじすくうと、私の口元へ差し出した。


「おねーたん、……たべるでち!」


「う、うん……」


その言葉に背中を押されるように、私は震える唇を開いた。


ぱくり。


甘くて滑らかな口溶け。

そしてほんのり苦いカラメルが、舌の上でとろける。


その刹那——

胸の奥で凍りついていた何かが、音を立てて崩れた。


「あ……」


あったかい。


おかーさんは、どんな時でも私のことを忘れてなかった。


夜勤で帰ってこられなかった夜もあったけど、

次に会った時には、必ず抱きしめて、優しく頭を撫でてくれた。


そうだ、私は——。


「……いらない子なんかじゃ、なかった」


声にした瞬間、私の全身が淡いピンク色の光に包まれた。


「なっ……!?」


リヒトの表情から、余裕の笑みが消えた。


私の惨めな過去ばかりを映していたモニターに、次々とノイズが走る。

そして今度は、まばゆい光に上書きされながら、私の中に眠っていた記憶を映し出していった。


おかーさんと手を繋いで歩いた公園。

ハンバーガー屋さんで、一緒に宿題をした友達。


「そうだ……」


初めて配信にコメントをくれた、見知らぬ誰か。

笑いながら「また来るね」って言ってくれた、リスナーたち。


ひとつ、またひとつと、忘れていた思い出が

心の中に灯っていく。


《いまさら思い出してもな》

《お前のことなんか、みんな忘れてるさ》


「……違う!」


私は、私を否定する黒いコメントたちに、キッパリと言い放った。


「私は……ちゃんと、愛されてた」


【まきぽん、しっかり】

【負けないで!】

【俺はお前のこと、応援してるからな!】


(みんな……!)


胸の奥から、今まで感じたことのない力が湧いてくる。

私を取り巻いていたコメントが、一斉に光の奔流となって、辺りに満ち溢れた。


《ぐおっ!? なんだこの圧力》

《ダメだ、見ていられな——》

《うわぁぁぁぁぁぁっ!!》


そして、リヒトに味方していたコメントは、光に灼かれて次々と花火のように弾け飛んでいった。


「お、おい……お前ら!」


リスナーたちが消え、慌ててPCを操作するリヒトを尻目に、私はかたわらの妹を見た。


「みきぽん……気づかせてくれて、ありがとう」


みきぽんは希望に満ちた眼差しで私を見つめると、こくんと頷いた。


すると次の瞬間、私たちの背中から、白く輝く光の翼がふわりと広がった。


「なっ、なんだよそれ……!」


リヒトの声が掠れる。

彼の集中が途切れたせいか、一瞬、クー・シーの勢いが弱まった。


バルガンは、その好機を見逃さなかった。


「オラァッ! 食えねえなら、とっとと消えちまえっ!!」


重厚な戦斧が、渾身の力で振り下ろされる。


ズガァァァンッ!!


黒い魔狼は、真正面から叩き割られた。


「もう、邪魔はさせないわよ!」


ノエルが鎮魂のメロディをかき鳴らすと、


グオオオオオオン……


遠吠えを残しながら、クー・シーの身体は黒い砂のように崩れていった。


「やったわ!」


【うおおおお、やったぞ】

【わんころ倒した!!】

【みきまき、ここから反撃だ!】


ノエルは肩を弾ませながらこちらを振り向き、そしてハッと息を呑んだ。


「……まきぽんちゃん、みきぽんちゃん……!」


リスナーたちの熱気を集めて、私たちを取り巻く光はさらに強くなっていく。


そして、今までの夢かわでコミカルな世界とは少し違う、

清らかで、まるで天界のようなまばゆい空間が広がった。


どこからともなく、澄んだヴァイオリンの音色が流れ始める。


「……これって……」


脳裏に、懐かしい記憶がフラッシュバックのように浮かび上がった。


「『ふたりはピュアピュア』の……変身シーン……!!」


主人公のピュアピンクと、ピュアブルー。

幼い私に勇気をくれた、アニメヒロインたちの笑顔が蘇る。


すると、着慣れた初心者用の魔導士ローブが、光の粒になってほどけていった。

代わりに私の体を包んだのは、みきぽんと色違いの、ピンクの魔法少女ドレス。


目を閉じると、吹き上がった風に包まれて、髪がロングのポニーテールに変化する。


胸元で揺れるリボンに、花びらのように重なるフリル。

風を受けてふわりと広がるスカート。


そして私の手の中には——


いつものスマホが、七色に輝くジュエルに彩られてパワーアップしながら、

優しいピンク色の光を放っていた。


「おいおい、……まきぽんまで変身しやがったのかよ!?」


バルガンは戦斧を取り落とし、目を丸くして驚いている。


【これ……まさかピュアピュア!?】

【やべえ懐かしすぎる】

【まきぽん変身きたあああああ!!】


コメントが堰を切って流れ、私たちに魔力ちからを与えてくれる。

私の隣では、みきぽんが同じように魔法少女の姿で、モーニングスターを握りしめていた。


星の形のオーブをあしらった、可愛らしいステッキ。

そこからトゲトゲのいかつい鉄球がぶら下がった、あの唯一無二の武器。


向かい合い、手を取り合った私たちの背中で、それぞれ白い翼が大きく羽ばたく。

聖なる光が辺りを包み込み——


そして不思議なくらい自然に、口が動いた。


「愛の力で世界を守る……ピュアピンク!」


私はスマホを胸の前に構えて名乗る。


「悲しみを越えて、世界を創る……ピュアブルー!」


みきぽんがモーニングスターをくるりと回し、ぴしっとポーズを取る。

そして私たちはピタリと息を合わせて、お決まりの台詞フレーズをキメた。


挿絵(By みてみん)


「「一緒なら、なんだってできる!

  ふたりはピュアピュア!!」」


【うおおおおおピュアピンクきたぁぁぁ!!】

【ピュアブルー待ってたぞ!!】

【待って待って、神回なんだが!?】


最高潮の盛り上がりを見せる場と裏腹に、リヒトの顔からは、完全に余裕が消えていた。


「ふっ……ふざけんな……!」


「ふざけてなんかない!」


私はまっすぐに、リヒトを見据えた。


胸の奥の痛みは、まだ消えていない。

苦しかった過去も、悲しかった記憶も、なくなったわけじゃない。


だけど——


それでも私は、愛されていた。

ここにいてよかったと思えるだけの光を、ちゃんと受け取ってきた。


「リヒト——」


私は魔法少女のブーツで、力強く一歩前へ踏み出した。


「……今度こそ、終わりにしよう」


最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!


次回、ピュアピンクに変身したまきぽんの反撃開始——!?

お楽しみに♪

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