表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で待ってた妹はモーニングスターで戦う魔法少女(物理)だった件  作者: 未知(いまだ・とも)
第2章 〜私たちの還る場所〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/70

第56話「堕ちた配信者、再び」

ルグの眠る神殿に向かうまきぽんたち。

でも、その前に立ちはだかったのは……?

「誰!?」


私は反射的に顔を上げた。


神殿へと続く階段の中腹。

そこには、黒いローブ姿の青年が腰かけていた。


ブリーチし過ぎたパサパサの金髪に、ネオングリーンのラインが走る黒いヘッドセット。

膝の上には、ガンメタのノートパソコン。


「あんたは……リヒト……!」


私が名前を呼ぶと、彼は満足そうに口角を吊り上げた。


挿絵(By みてみん)


「久しぶりだな、『底辺配信者』」


リヒトはゆっくりとこちらを見下ろす。

バルガンは咄嗟に戦斧を構え、ノエルも竪琴に手をかけた。


「ここまでよく来れたじゃねえか。

 凍える巨王フア・モールも、泣き女バン・シーも——楽しんでくれたみたいで何よりだ」


「やっぱり……あんたとバロールの差し金だったのね!」


「ああ。この先に行かせるわけにはいかねえからな」


私が睨むと、リヒトは心底楽しそうに笑った。


「はははっ! そうそう。その顔だよ」


ノートPCを軽く撫でながら、彼は階段の上から見下みくだすような視線を送ってくる。


「恐怖と怒りが混ざった顔。

 ……そういうのが一番、配信が盛り上がるんだよなぁ」


「見てたのね……悪趣味なヤツ」


「ああ、『俺ら』を楽しませてくれて、ありがとーな」


空気が、重くなる。


「『観客リスナー』ってのはな、他人の不幸や転落が大好きなんだよ」


リヒトはキーを叩く。

カタカタ、と乾いた音が響くと、彼の周囲に黒く歪んだ文字が集まっていく。


《よっ!底辺配信者》

《オメーらの怯える顔、最高だったわ》

《ああ、飯ウマだったよなwww》


配信が立ち上がると共に、リヒトの周囲にはリスナーたちのコメントが展開され始めた。


「泣け。怯えろ。そうすりゃコメントも伸びるし、視聴時間も増える」


彼は嗤う。


「そんな『劇場ステージ』の中で踊るのが、俺たち配信者だろ?」


「……ふざけないで」


胸の奥がカアッと熱くなる。


「誰かの苦しむ姿を面白がるのなんて、最っ底ーだよ!」


「へぇ?」


リヒトは、退屈そうに肩をすくめた。


「でもお前も、数字を稼ぐために、劇場そこに上がってたんじゃねーのか?」


「……何が言いたいの」


私の手は、自然とスマホを探っていた。


リヒトはニヤリと笑う。

そして何かのコマンドを入力すると、エンターキーを叩いた。


リスナーたちのコメントは、PCで魔力に変換され、

空中で渦を巻くと、目の前に大きなモニターを形作った。


そこに映ったものを見て、私の心臓が止まりそうになった。


「……え」


薄暗い部屋。

スマホに繋いだ安いマイク。

誰もいないコメント欄。


そこに映し出されていたのは——


配信を始めたばかりの頃の、私だった。


「な、なんだこりゃ?」


「石板にまきぽんちゃんが、映ってるわ……!」


バルガンとノエルも、突然現れた巨大なモニターに驚いている。


「懐かしいだろ?」


リヒトの声が、耳の奥に刺さる。


「コメントゼロ。同接ゼロ。

 配信を切ったあと、一人で画面を見つめてたときのお前だよ」


「それ、今見せる必要ないでしょ……!」


思わず声が震える。


「それがあるんだよ」


リヒトがキーを叩くたびに、空中には、次々と配信画面が増えていった。

その一つ一つに、誰にも見せたくなかった私の姿が映し出されている。


誰も来なくて、一人で虚しく配信し続けた夜。


悔しくなって泣いた夜。


たった一つの悪意あるコメントで、配信するのが怖くなった夜。


——忘れたかった過去が、次々と暴かれていく。


「やめてって言ってるでしょ!!」


強がって見せても、涙が滲む。


「おねーたん?」


みきぽんが、不安そうに袖をつかむ。


「平気だよ……」


自分に言い聞かせるように答えるけど、うまく息ができない。


(こんなこと……思い出したくないのに)


「ここまでは、まだ序の口だ。

 お前の心のログには、もっと面白いもんが残ってたなあ?」


リヒトは、楽しそうに笑った。


「なあ、まきぽん」


悪意に満ちたリヒトの眼差しが、私に注がれる。


「お前、本当はずっと思ってたんだろ?

 ——『どうせ私は、捨てられた子供だ』ってさ」


リヒトが指をパチンと弾くと、モニターの一つに、幼い女の子の姿が映し出された。


「っ!」


——呼吸が止まる。


それは紛れもなく、小さかった頃の私の姿だ。


両親の罵り合う声に耳を塞ぎ、お人形を抱きしめながら、小さくなって震えている。

胸の奥の一番触れてほしくなかった場所を、白日の下に晒された気がした。


「……な」


うまく声が出ない。

嫌な汗が、背筋をつうっと流れる。


「な、んで……」


やっと絞り出した声は、掠れていた。


「なんで、それを……」


「……まきぽんちゃん、しっかり!」


ノエルが心配して、私の肩に手をかけてくれた。


「こっちはな、バロール様のお力で、お前の『心のログ』も覗ける立場なんだよ」


リヒトはノートPCを誇らしげに掲げた。


「さあ、始めようぜ。

 お前の望み通り、俺が『数字』を稼がせてやる」


《お、なんか面白そーなもん、はじまんの?》

《なんだなんだ、俺らにも見せてみろよ》


リヒトのリスナーたちの嘲蹴るようなコメントが、勢いよく流れ始める。


「境界の聖域を——

 お前の心の闇を、全部さらけ出す『劇場ステージ』に変えてやるぜッ!」


「やめて……っ!」


悔しさのあまり、涙が滲んでくる。

怖い。

逃げたい。


でも——。


私は、震える手でスマホを握りしめると、呼吸を整えた。


(——戦わなくちゃ)


そして配信アプリを立ち上げた。


「……みんな」


画面が明るく光る。


「今から、私の心の闇——見せるから、一緒に戦って!」


私は、震える手で配信開始のボタンを押した。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。


久しぶりに現れたリヒトくんでしたが……

実は彼、結構人気あるんですよねw


ちなみにリヒトはドイツ語で「光」

そして漢字では「理人」と書く設定です。

名前に相応しい存在でもなければ、理知的な行動をするヤツでもない、

……そんな皮肉をこめたネーミングになっております。


彼の再登場、待ち望んでいた皆さまに喜んでいただけたら、嬉しいです。


さて、今回はどんな嫌な攻撃を仕掛けてくるのでしょうか……次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ