表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でもプログラマは不足していた  作者: ベル
第二章 魔導コンロ
28/31

Step26. 魔導コンロの改良

 ――朝6時、会社には自分1人。


 照明(電気)は一部しか点けておらず、フロアは薄暗(うすぐら)い。

 早くアイデアを試したい。自覚できるほど興奮(こうふん)している。

 失敗したら恥ずかしいので、完成するまで誰にもナイショ。


 カタカタ……タンタン

 カタ……タン

 カタカタカタカタ……タン


 ここを、あーして、うーん。

 焦ってる訳じゃないけど、上手く動かない時は動かないな。


 おっ?

 あー、落ちた(動かなくなった)

 でも、前に進んでる。


 カタタン、カタタン、カータンタン

 カタタターターン、タッタッタターン




 * * * * * 




 出来た!!

 異常系の対応は、まだまだ不十分だけど、プロトタイプとしては十分だろう。

 気がつけば、フロアは明るくなっており、人も賑わっていた。



 ……うっ、ヤバい。



 ここに来て、不治の病が再発か。

 身体が勝手に動き出す。

 もはや、理性では止まらない。


 ついカッとなってやった、今は反省している。

 何を隠そう、ジェシカとムウさんを呼びつけた。


「サワタリ〜、今度は何よ?」

「ふっ、見てくれ!」


 タラララッタラー♪

「まどうこんろ〜ぉ」


 右手で、コンロを頭の上まで持ち上げる。


「……で? 何? この前見たわ」

 ジェシカは去ろうとした。


「ちょ、ちょ、ちょ、待って、待って、触ってってくださいよぉ」


「仕方ないわね。ちょっとだけよ。ムウ、一緒に見よっ♪」

「――うん。見る」


 カチッ、ボッ。

 カチャカチャ。


 ジェシカがコンロを触っている。

 さぁどうだ。


「どう言うこと? ……()()()()()()()()じゃない」

「えっ、もう一度言って貰える?」


「だ〜か〜ら〜、()()()()()()()()じゃない!」

「……ありがとう! 最高の()め言葉だ」

「な、何を言っているのか分からないわ。あなたが変わっているわね。いや、いまさらか」


 プログラムをかなり改造したのだ。

 何も変わってない、という事は性能が変わっていない、というか変化を認知できないと言うことだ。

 これほど嬉しい言葉はない。


「――火力、増えた」


 流石はムウ様、そこにお気づきとはお目が高い。

 段階は、カチッと音を立てて切り替わる方式ではないので、よく見ていないと分からないはずだ。


「流石ムウさん! 火力の段階が、7から11に増えました」


「何よう……素人には分かんないわよ。ムウ、あんたもエンジニアに侵されて来たんじゃな〜い?」


「――ありがとう、嬉しい」

()めてないわよっ!」


「これ、前のやつよりコストを大幅に削減出来たんですよ。知恵と工夫とひらめきの結果です」


「へー、すごいすごい。もういい?」

 ジェシカは、露骨に興味無さそうだ。


「――サワタリ、すごい……」

 ムウさんからは、尊敬の眼差し。

 求めていたのはこれだ! 感無量(かんむりょう)


「2人とも、ありがとうございました。満足っす」


「はいはーい。今度はもっと面白いもの見せてよね♪」

「……ぜ、善処(ぜんしょ)します」


 かろうじて、返事が出来た。

 あれ? 十分面白いはずなんけどな?


「――今度、改善、仕組み、教えて」

「もちろん、よろこんで!」


 これだぁぁぁぁあああ!

 理解者が居るって素晴らしい。


 でも、ジェシカにも何とか伝えたい。

 意地でしかないが、そこはこだわろう。




 * * * * * 




 やってまいりました。

 こちらが本番のミーティング。


 心なしか、雰囲気(ふんいき)がどんよりしてる。


 どんよりを使って言葉を作りなさい。

 うどんより、蕎麦(そば)が好きだ。

 懐かしいネタが、頭をよぎった。


 変えよう、この空気を! 目明し編だ!


「皆様、新たなアイデアや、ご意見はございますでしょうか? 私はあります。しかし、私が話を始めてしまうと、長引きますので、先におうかいしたいです」


「「「「……」」」」

 みんな顔を見合わせている。


「特になさそうなので、話を始めさせていただきますね。まずはこちらをご覧ください」


 テーッテレー♪ テレレレッーーー♪ パッポ♪

魔導焜炉(まどうこんろ)

 あれ? ウケないな。仕方あるまい、地球のネタだ。


「まずは、こちら火力の調整を11段階に増やしました」

 ツマミを(ひね)って実演する。


「お客様のニーズにお応えして、火力の仕様を変更しました」

「これは凄いですね、でもお高いんでしょう?」


「いえいえ、ここまで付けて製造原価が2,300ガルスになります」

「ええ!? そんなに安くて大丈夫なんですか?」


「はい、決して損はさせません! こんなチャンス、滅多にありませんよ。さぁ今すぐお電話を」


 ヒーモスと、ルテガさんに仕込んでおいたネタが上手く機能した。

 個人的には、これだけでも十分満足だ。


「サワタリ、それが事実なら凄いことじゃ。説明してもらえるか?」

 ここからは台本にないが、ヒーモスがいい感じに振ってくれた。


合点(がってん)承知(しょうち)の助! まずはですね。大胆に火力のテーブルを弱と強の2つにしました。これで、5KB×2テーブル+固定の5KB=15KBになるので、一番小さな魔導石に収まるという寸法です。ルテガさんが、2KB削ってくださったことが非常に大きいです。それがなければ実現しませんでした」


「11段階の火力はどうやって実現したんじゃ?」


「はい! そこはインターバルを工夫しました。ユーザーインタビューでもインターバルの差は誰も気が付かなかったので、変えても大きな影響がないのではと、判断した結果です。言葉にすると分かりにくいので、紙を用意しました。こちらをご覧ください」


 1段階目の設定 = 弱50ミリ秒、強0ミリ秒

 2段階目の設定 = 弱45ミリ秒、強5ミリ秒

 3段階目の設定 = 弱40ミリ秒、強10ミリ秒

 4段階目の設定 = 弱35ミリ秒、強15ミリ秒

 5段階目の設定 = 弱30ミリ秒、強20ミリ秒

 6段階目の設定 = 弱25ミリ秒、強25ミリ秒

 7段階目の設定 = 弱20ミリ秒、強30ミリ秒

 8段階目の設定 = 弱15ミリ秒、強35ミリ秒

 9段階目の設定 = 弱10ミリ秒、強40ミリ秒

 10段階目の設定 = 弱5ミリ秒、強45ミリ秒

 11段階目の設定 = 弱0ミリ秒、強50ミリ秒


 それぞれの設定の後に弱50ミリ秒を追加して、合計100ミリ秒を繰り返す形です。


「……これなら、確かに、2つのテーブルで11段階を表現できるな。凄いじゃないか! これならユーザーのニーズに応えた上で、機能がさらに強化されとる。会社要求の製造原価2,500ガルスも下回っとる」


「ピンチはチャンスです。それに何かを変える時というのは、無茶ぶりされた時だと私は思っています。出来そうなことをやっても、面白味(おもしろみ)がないじゃないですか」


「カッカッカ、エンジニア(だましい)に溢れとるな。それにしても物凄い発想じゃ。どれコンロを見せてくれんかの」


「どうぞ、どうぞどうぞ!」


 みんなは、コンロを(さわ)りだした。

 自分は、後ろに下がって少し小休止(しょうきゅうし)




 * * * * * 




 しばらしくすると、ほとぼりが冷めて、ミーティングというか雑談を再開した。


「ユーザーと会社の要望を、両立するとは驚愕(きょうがく)したわい」

「本当に凄いな。予想しなかったコンロの出来じゃ」

「サワタリが居なかったらどうなっていたか……感謝じゃ」

「魅せられたぞ。熱い気持ちを取り戻したわい」


 みんなが、自分に称賛(しょうさん)の声を浴びせてくる。


「ストーーーップ、ストップ、ストップ! みなさん。勘違いしないでください。確かにパズルの最後のピースは、私がはめたかも知れません。ですが、ここまで作り上げたのは、みなさんの力です。一人一人の力がなければ、絶対に達成できなかったことなのです。私は最近来たばかりで、元の処理はほとんど作っていませんし、あそこまで洗練されたコードも書けません。各々の強みを発揮したからこそです! みなさんが凄いんですよ!」


 チームで仕事をしている中で、目立つ部分は確かにある。

 だけど、みんな重要な仕事をやっているのだ。

 責任を持ってやっている限り、誰が凄いとかそんなのは絶対にない。


 みんなの理解度が、低いのが悔しかったので、一人一人のいい所を()めたら、それなりに納得してくれた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


ブックマーク登録および高評価してくださった方、ありがとうございます。感謝、感激です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ