表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でもプログラマは不足していた  作者: ベル
第二章 魔導コンロ
23/31

Step21. 解析結果

 ――魔導コンロの解析を始めて、一週間が経過した。

 色々と分かった事がある。


 まず、点火時の魔力消費が1番大きい。

 これだけで、燃料の20%を持っていかれた。

 5回点火したら終わりだ。


 次に、火力を調整した時の消費が大きい。

 最初の調整に少しイジるだけでも、10%程度かかる。


 最後は、燃焼時の消費が大きい。

 つまり、全部キツイ。


 この手のやつは、経験上、小手先だけでやるのは、不可能だ。

 抜本的な改革、つまり仕様変更が必要になる。


 仕様変更という言葉に、ネガティブな感情を抱くことがあるが、それはあくまで、顧客(こきゃく)から突然の仕様変更を言い渡された時だけですからねっ! 目的を達成するための、ポジティブな仕様変更も沢山あるよっ。


 ――ただ。

 ソースコードめっちゃ綺麗に作ってあるんだよなぁ。


 ザ・職人って感じで、妥協のない作りになってる。

 ……ぶっちゃけ、めちゃくちゃ言い難い。


 とりあえず、現状報告と今の仕様になった理由を聞いてみるか。


 ヒーモスさんの所にGo!



 * * * * *



「<省略>……ということが分かりました」


「調査ありがとう。燃費が悪い部分は分かった。アイツらは無駄なんか無いって言っとったから、客観的な評価は助かる」


(スペックが目標にあってないだけで、無駄はないんですけどね)


「現在の仕様を維持したまま、状況を改善するのは、極めて難しいと考えます。差し支えなければ、現在の仕様になった経緯を知りたいです。要求仕様書があれば、見せていただきたいのですが、いかがでしょう」


 言ってはみたものの、要求仕様書は無いんだろうなぁ。


「残念ながら、要求仕様書はない」


 やっぱり、想定通り! 驚かないぞ。


「だがそれがいい!!」

「良かないわ!」

「……心配するな、ワシの頭に残っておる!」


 いやいや、こめかみを指差しながら、ドヤ顔で言うシーンじゃないですから、ここ!


「家庭用の魔導コンロを、携帯用に小型にして作ってくれと、優秀な現場の人間に伝えたら、最高の仕様で作り上げてくれよったわ!」


「……つまり、現場で生まれた仕様ということですか?」


「その通りじゃ! 仕様は好きにしていいと言ったら、張り切って作ってくれたわい」


 あたりまえだぁぁぁぁぁあ! 犯人はお前か!

 そんなん言われたら、喜んで作るでしょ。

 ……採算度外視(さいさんどがいし)で。

 …………自分もやりたい。


「目標達成のため、仕様変更を具申(ぐしん)します!」


「えー……そんなんしたら、ワシの面目丸つぶれじゃん」


「笑わせないでくれよヒーモス。汚れなど成果で洗い流せる。そんな余分なプライドはな、()()()()()()()()()()()()()()()()

 ※狗=いぬです。


 こいつも、呼び捨てでいいわ。


「くっ、仕方あるまい。その話、詳しく聞かせて貰おうか」


「はい、第一に点火のコストが高いので、代替(だいたい)手段を検討すべきです。具体的な手段については、見識(けんしき)がないため、現場の意見を聞いてみたいです」


 ふと思った。カセットコンロはどうしてるんだろうなぁ……。

 帰ったらググってみよう。


 普通は調べないと、分かりませんからね!

 肥料の栄養素とか、抗生物質の作り方とかも!


「第二に、火力の調整が無段階になっているため、かなり効率が悪くなっています。多段階方式にしてしまって、効率化・最適化を図るのがよいかと」


 無段階の方が機能は優れてるんですけどね……


「最後に、炎の出力が常に均一になっているのは良いのですが、常に魔力を消費(たれながし)しています。短い時間でONとOFFを繰り返すことで、魔力を節約した上で、近似(きんじ)効果が得られるのではないかと考えます」


 炎の制御は、誤魔化(ごまか)しのテクニックだけど、効果あるはず。


「問題を的確に捉えておる。提案内容はもっともな話じゃ。マネージャーに判断を仰がなくてはならぬが、先に現場の意見を聞いてみようではないか」


「分かりました、行きましょう」


「それで相談なんじゃが、……このアイデア、ワシが出したことにしていい? ほら、いきなり部外者が出てきて提案したら、摩擦(まさつ)を生むじゃろ?」


「……好きにしてください」


 どうしようもない奴だ。

 だが、ここまでハッキリ言うやつは、嫌いじゃぁない。逆に清々しい。


 自分は実利(じつり)を取る!

 それに、ヒーモスが言ってることも、あながち間違ってはいない。


「よし! 行くぞ!」



 * * * * *



「おーい、みんな集まってくれー」


 うぉ、ここのチーム全員ドワーフかよ。

 (こだわ)りのある面子(メンツ)が集まった感じだな、これは。


「……ヒーモスの旦那、これ以上コードの無駄をなくすのは厳しいぜ。何とかコストを上げて貰えるよう言ってくれまいか?」


 先に集まったメンバーが、ヒーモスと雑談を交わしている。


「よし、全員集まったの。まずは、コイツの紹介じゃ。魔導コンロの改善のために調査協力してもらっとるサワタリじゃ」


「よろしくお願いします」


「調査報告を受けて、さらなる改善の可能性を見出した! まずは調査結果の説明を頼む」


 言い回しが上手いな。

 いい所は、素直に取り入れたい。


「はい、ご説明させていただきます。<省略>……でした。では、続きをヒーモスさんお願いします」


「うむ。点火部分の魔力消費が大きいことに着目して、何か別の方法がないか、聞いてみたい。意見はないか?」


 みんな黙り込んでいるが、表情は暗くないぞ。

 むしろ、楽しそう。


 ――しばらくして。


「……はい! 点火だけ、外部モジュールを取り入れる案が考えられるぞ!」


「火属性に拘ってたが、別の属性で検討してみるのもありじゃ!」


「いやいや、点火の時だけ、自分の魔力を使うアイデアもあるぞ!」


 めっちゃ盛り上がってる。

 きっかけさえ有れば、前に進むいいチームやん。


「みんな、ありがとう! それぞれ素晴らしいアイデアじゃ。今日一日使っていいから、検証してみてくれ」


「「「わかった!!」」」


 ――ガタン!


「ちょちょっと待て、まだ行くな。話が終わっとらん」


「火力調整時の魔力もそこそこ掛かっとる。今は無段階じゃが、多段化にしたら、効率をあげれないじゃろうか?」


「……た、……しかに。その手があったか!」

「無段階が、当たり前で気づかなかったわい」

「段階が決まっておるなら、複雑な計算を事前にしておけるぞ!」


「「「試してくる!!」」」


 ――ガタンッ!


「だから、ちょっと待て、話はもう少しで終わるから慌てるんじゃない」


 ……ヒーモスも大変だな。

 少しだけ同情するわ。


「今は放熱しっぱなしじゃが、短い時間で火の強さを切り替えることで、効果はあまり変えずに燃料を節約できないじゃろうか?」


「おお、それはすぐに試せて良さそうな案じゃの!」

「今は全力で動かしとるから、インターバルはあってもいいかも知れん!」

「注意は必要だが、試してみる価値はありそうじゃ!」


「「「もう行ってもいいか?」」」


「はあー、いいぞ、話は終わりだ」


 みんなが去ろうとした時に、全員がこちらを向いた。


「「「サワタリ、ありがとう! 煮詰まっていたんで、助かったぞ!」」」


 軽く頭を下げてくれた。


「あ、はい、どういたしまして、でもどうして私に?」


「「「ヒーモスに、こんなアイデア出せる訳ないじゃろう」」」


 あ、やっぱり? 見透かされてますねこれは……


「お前ら! 覚えておれよっ!」


 みんな逃げ出していった。

 でも、ヒーモスも怒ってはなさそうだ。


「おいっ、サワタリ、次はマネージャーのところに説明と相談に行くぞ。付いてこい」


「はい!」


「嬉しそうだな?」


「いやぁ、素敵なチームだなって思ったら、つい笑みがこぼれました」


「……そうか、そうだよな。……ありがとう」

 ヒーモスも、満更(まんざら)ではなさそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ