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異世界でもプログラマは不足していた  作者: ベル
第一章 図書管理システム
15/31

Step13. ペアプログラミング

 ようやく、国立図書館の図書管理システム開発スタート!

 早口言葉じゃないからねっ。


「ジン先輩、ジン先輩、ペアプログラミングしませんか?」


「なんじゃ、それは?」


「隣に座って、一緒にプログラミングするんです」


「……? そんな事して、何になるんじゃ?2人の時間を使うんじゃろ?非効率なんじゃないか?」


 来たっ。ペアプロ(ペアプログラミング)未経験者の多くは、この手の反応を示す。想定済みだ。


「私は、このシステム開発は初めてですし、ジン先輩の知識や情報を教えていただくのに、適したやり方なんです。間違いをその場で指摘して貰えるので、手戻り工数(時間)がなくなります。さらに相談しながら進めるんで、品質も高くなります」


「……でもなぁ。納期(時間)もないことじゃしのう」


「時間がないからこそ、やるんです! 絶対に損はさせません!」


「……わかったぜ。先日(マージツール)の件もある。お主がそこまで言うなら、やってみようではないか」


 かくして、ジン先輩と初めての共同作業(ペアプログラミング)が始まった。


「んじゃ、まず私がコーディング(プログラムを作成)するので、ジン先輩は横から見ていてください。気になることがあったら、口を挟んでくださいね」


「わかったぞ」


「まずは、本の情報を扱うクラス(部品)を作っていきますね」


「おう!」


 カタカタ...ターン

 カタカタ...カタタ...ターン


public class Book

{

 private uint BookNo = 0; // 本を識別する番号

 private string Title = null; // 本のタイトル

 private string Auter = null; // 本の作者

}


「……先輩どうでしょうか?」


「指摘が3つあるぞ。Bookというクラス名は、もう使われておるので、変えた方がいいじゃろう」


「どんな名前が、いいですかね?」

 名前を付けるのは、難しいのだ。


「BookInfoとかで、どうじゃろうか」


「分かりました! それでいきますね」

 微妙だと思っても代案がない場合は、従っておく。


「次にだが、メンバ変数(クラスの中身)には名前の付け方が決まっておる。トロ(Lower)ール(Camel)ケースといって、頭の文字を小文字にするんじゃ。トロールの頭は小さく図体(ずうたい)がでかいから、この名前が付いたんじゃ。ガッハッハ」


「分かりました! あとは何でしょう?」


「Auterは作者の意味で付けたんじゃと思うが、スペルが間違っておる。Authorじゃぞ」


「……お恥ずかしい。修正します」


 カタカタ...ターン

 カタカタカタ...ターン


public class BookInfo

{

 private uint bookNo = 0; // 本を識別する番号

 private string title = null; // 本のタイトル

 private string author= null; // 本の作者

}


「……これでどうでしょう?」


「完璧の璧じゃ!!」


「ありがとうござます。この調子でお願いします」


「うむ!」


 カタカタ...ターン

 カタカタカタ...ターン

 カタタ...ターン


 カタカタ...カタカタ...モ〇キーターン


「ふーっ、1時間経ったので休憩しましょう」


「まだまだ俺はいけるぞ」


「だーめーでーす。ちゃんと休憩を取らないと、効率が落ちるんですよ。それに故郷(地球)から持ってきた飲み物があります。一緒に飲みませんか?」


「飲むぞ!!」


「コーヒーと紅茶がありますが、どちらがいいですか?」


「紅茶は知っとるが、コーヒーってなんじゃ?」

 こっち(異世界)にコーヒーは無かったか。


「……えーと、苦みと酸味があって、(こう)ばしい香りの飲み物です。苦手な方もいらっしゃるので、紅茶にしますか?」


「いや、折角なので、コーヒーを飲んでみたいぞ」

 だよねー。自分だって珍しいものは、飲んでみたい。


「待っててください。()れてきますね」

 インスタントコーヒーだけど……


 自分はブラックしか飲まないから、砂糖とミルクは持ってこなかったなぁ……

 甘党のジン先輩には、入れてあげたかったが仕方あるまい。


「どうぞ」

 木製のカップをジン先輩に渡す。


「すまんの。良い香りがするな。さっそく、いただくとするわい」


「……苦美味い!」


「甘いものと合いますよ」


「!? ……なぜそれをもっと早くに言わんのじゃ」


 ジン先輩は、いそいそと生八つ橋(なまやつはし)を取り出して、交互に食べ始めた。


「すばらしいぞう! ……苦みが、甘さを引き立てておる。口の中の甘さもリセットされて、一口めの美味さが何度でも味わえるぞぉぉぉおお!」


 新たな発見を喜んで貰えて嬉しいが、いけない事を教えてしまった様な気もする。


「休憩もそこそこにして、再開しますよ。次はジン先輩がコーディング(プログラムを作成)してください。今度は私が見る番です」


「……分かった。続きをやろうぞ!」


 カタカタ...ターン

「あー、そこスペル間違ってますよ」


 カタカタ...ターン

「そこの設計は、無駄があっても、分かりやすい方が良いと思います」


 カタカタ...ターン

「そのメソッド(振る舞い)名は、意味が伝わり難いので、他の名前を考えてみませんか?」


 カタカタ...ターン

「ループの終了条件が、これだと1回足りないですね」


 カタカタカタ...ハ○ピーターン


 ジン先輩と、3回入れ替わってペアプロ(ペアプログラミング)をした。

 時間はあっという間に過ぎた。


「ふー、今日はこんな所ですかね。終わりにしましょう」


「サワタリ……」

 ん?ジン先輩の表情が、なんだか暗いな。ペアプロ(ペアプログラミング)は合わなかったか……



「めちゃめちゃ作業が(はかど)ったぞ。そして、何よりも楽しかった……いつもは相談相手もなく、孤独にプログラミングするだけじゃった。作ったものが動かず怒られることもあるが、このやり方なら2人でチェックしているので、大丈夫そうじゃ。ありがとう、本当にありがとう……」


 ジン先輩を見ると肩を震わせていて、少し涙ぐんだ様子だ。どうやらペアプロ(ペアプログラミング)の良さが、伝わったようだ。


「……先輩、ペアプロ(ペアプログラミング)は、誰とでも成功するものじゃないんです。互いを尊重し、意見に耳を傾けられる人じゃないとダメなんです。先輩だったから、上手く行ったんです。やった事もないペアプロ(ペアプログラミング)を、一緒にやってくださったのは、先輩なんです。ありがとうございました」


 チームで仕事をする以上、大切なのは人と人だ。互いの強みを最大限に発揮して、一人では実現できない成果を出すのが会社だと思う。


 ――翌日


 ジン先輩とフリートさんで、ペアプロ(ペアプログラミング)を実践して貰った。


 ジン先輩は若干ドヤ顔だった。2人は笑顔に溢れていて、楽しそうだった。フリートさんも生産性と品質の向上を実感してくれたようだ。


 自分も仲間に入れてー、今日は寂しかったよー!

 次はモブプログラミング(チームプログラミング)が出来そうで、楽しみだ。

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