Step13. ペアプログラミング
ようやく、国立図書館の図書管理システム開発スタート!
早口言葉じゃないからねっ。
「ジン先輩、ジン先輩、ペアプログラミングしませんか?」
「なんじゃ、それは?」
「隣に座って、一緒にプログラミングするんです」
「……? そんな事して、何になるんじゃ?2人の時間を使うんじゃろ?非効率なんじゃないか?」
来たっ。ペアプロ未経験者の多くは、この手の反応を示す。想定済みだ。
「私は、このシステム開発は初めてですし、ジン先輩の知識や情報を教えていただくのに、適したやり方なんです。間違いをその場で指摘して貰えるので、手戻り工数がなくなります。さらに相談しながら進めるんで、品質も高くなります」
「……でもなぁ。納期もないことじゃしのう」
「時間がないからこそ、やるんです! 絶対に損はさせません!」
「……わかったぜ。先日の件もある。お主がそこまで言うなら、やってみようではないか」
かくして、ジン先輩と初めての共同作業が始まった。
「んじゃ、まず私がコーディングするので、ジン先輩は横から見ていてください。気になることがあったら、口を挟んでくださいね」
「わかったぞ」
「まずは、本の情報を扱うクラスを作っていきますね」
「おう!」
カタカタ...ターン
カタカタ...カタタ...ターン
public class Book
{
private uint BookNo = 0; // 本を識別する番号
private string Title = null; // 本のタイトル
private string Auter = null; // 本の作者
}
「……先輩どうでしょうか?」
「指摘が3つあるぞ。Bookというクラス名は、もう使われておるので、変えた方がいいじゃろう」
「どんな名前が、いいですかね?」
名前を付けるのは、難しいのだ。
「BookInfoとかで、どうじゃろうか」
「分かりました! それでいきますね」
微妙だと思っても代案がない場合は、従っておく。
「次にだが、メンバ変数には名前の付け方が決まっておる。トロールケースといって、頭の文字を小文字にするんじゃ。トロールの頭は小さく図体がでかいから、この名前が付いたんじゃ。ガッハッハ」
「分かりました! あとは何でしょう?」
「Auterは作者の意味で付けたんじゃと思うが、スペルが間違っておる。Authorじゃぞ」
「……お恥ずかしい。修正します」
カタカタ...ターン
カタカタカタ...ターン
public class BookInfo
{
private uint bookNo = 0; // 本を識別する番号
private string title = null; // 本のタイトル
private string author= null; // 本の作者
}
「……これでどうでしょう?」
「完璧の璧じゃ!!」
「ありがとうござます。この調子でお願いします」
「うむ!」
カタカタ...ターン
カタカタカタ...ターン
カタタ...ターン
カタカタ...カタカタ...モ〇キーターン
「ふーっ、1時間経ったので休憩しましょう」
「まだまだ俺はいけるぞ」
「だーめーでーす。ちゃんと休憩を取らないと、効率が落ちるんですよ。それに故郷から持ってきた飲み物があります。一緒に飲みませんか?」
「飲むぞ!!」
「コーヒーと紅茶がありますが、どちらがいいですか?」
「紅茶は知っとるが、コーヒーってなんじゃ?」
こっちにコーヒーは無かったか。
「……えーと、苦みと酸味があって、芳ばしい香りの飲み物です。苦手な方もいらっしゃるので、紅茶にしますか?」
「いや、折角なので、コーヒーを飲んでみたいぞ」
だよねー。自分だって珍しいものは、飲んでみたい。
「待っててください。淹れてきますね」
インスタントコーヒーだけど……
自分はブラックしか飲まないから、砂糖とミルクは持ってこなかったなぁ……
甘党のジン先輩には、入れてあげたかったが仕方あるまい。
「どうぞ」
木製のカップをジン先輩に渡す。
「すまんの。良い香りがするな。さっそく、いただくとするわい」
「……苦美味い!」
「甘いものと合いますよ」
「!? ……なぜそれをもっと早くに言わんのじゃ」
ジン先輩は、いそいそと生八つ橋を取り出して、交互に食べ始めた。
「すばらしいぞう! ……苦みが、甘さを引き立てておる。口の中の甘さもリセットされて、一口めの美味さが何度でも味わえるぞぉぉぉおお!」
新たな発見を喜んで貰えて嬉しいが、いけない事を教えてしまった様な気もする。
「休憩もそこそこにして、再開しますよ。次はジン先輩がコーディングしてください。今度は私が見る番です」
「……分かった。続きをやろうぞ!」
カタカタ...ターン
「あー、そこスペル間違ってますよ」
カタカタ...ターン
「そこの設計は、無駄があっても、分かりやすい方が良いと思います」
カタカタ...ターン
「そのメソッド名は、意味が伝わり難いので、他の名前を考えてみませんか?」
カタカタ...ターン
「ループの終了条件が、これだと1回足りないですね」
カタカタカタ...ハ○ピーターン
ジン先輩と、3回入れ替わってペアプロをした。
時間はあっという間に過ぎた。
「ふー、今日はこんな所ですかね。終わりにしましょう」
「サワタリ……」
ん?ジン先輩の表情が、なんだか暗いな。ペアプロは合わなかったか……
「めちゃめちゃ作業が捗ったぞ。そして、何よりも楽しかった……いつもは相談相手もなく、孤独にプログラミングするだけじゃった。作ったものが動かず怒られることもあるが、このやり方なら2人でチェックしているので、大丈夫そうじゃ。ありがとう、本当にありがとう……」
ジン先輩を見ると肩を震わせていて、少し涙ぐんだ様子だ。どうやらペアプロの良さが、伝わったようだ。
「……先輩、ペアプロは、誰とでも成功するものじゃないんです。互いを尊重し、意見に耳を傾けられる人じゃないとダメなんです。先輩だったから、上手く行ったんです。やった事もないペアプロを、一緒にやってくださったのは、先輩なんです。ありがとうございました」
チームで仕事をする以上、大切なのは人と人だ。互いの強みを最大限に発揮して、一人では実現できない成果を出すのが会社だと思う。
――翌日
ジン先輩とフリートさんで、ペアプロを実践して貰った。
ジン先輩は若干ドヤ顔だった。2人は笑顔に溢れていて、楽しそうだった。フリートさんも生産性と品質の向上を実感してくれたようだ。
自分も仲間に入れてー、今日は寂しかったよー!
次はモブプログラミングが出来そうで、楽しみだ。




