Step12. M.S. おうちかえる
明日は休みだー! 地球に一度帰ろう。
折角なので、みんなにお土産をあげたいな。
好みが分からないから、リサーチしよう。
「ジン先輩は、どんなお酒が好きですか?」
ドワーフと言えば、お酒は鉄板ネタだろう。
「いんや、俺は飲めない」
「……!?」
「一体いつから───酒が好きだと錯覚していた?」
「たしかに……ドワーフ族は、お酒が好きだと言う書物を読んだので、そう思い込んでいました」
「ガッハッハ、創作もいい所だな。好きなやつもいれば苦手なやつもいるぞ、人族だってそうだろう?」
「……おっしゃる通りで、ございます」
「では改めまして、好きな食べ物は何ですか?故郷に帰ろうと思ってまして、そこそこ珍しい食べ物もあるので、お土産に何がいかがかなと」
「……甘いものが好きだぞ」
「分かりました。甘いものにしますね」
「おう、楽しみにしてるぜ」
ジン先輩は甘党っと、百聞は一見に如かずだなぁ。ドワーフのイメージ広げたやつ誰だよ。
お土産は、生八つ橋にしよう。これは京都の有名な銘菓だ。
続いて、フリートさんに聞きに行こう。
もう同じ轍は踏まないぞ。と言っても、エルフの好物は知らないけど……
「フリートさん、好きな食べ物は何ですか?故郷に帰ろうと思っていて、お土産を迷っています」
「ありがとうございます。お気を遣わなくていいですよ。お気持ちだけ受け取っておきますので」
しまった、油断した。社交辞令がきた。
「遠慮しなくていいんで、教えてくださいー。そこそこ珍しいものもあるので!」
「そこまで言ってくださるなら、甘えさせていただきますね。そうですねぇ……食べ物ではありませんが、お茶をいただけたら嬉しいです」
「大丈夫です。お茶ですね〜了解しました」
「ふふっ、期待してお待ちしています」
フリートさんはお茶っと、なかなか渋いな。
抹茶は飲み方難しいし、煎茶(緑茶の一種)にしとくか。有名どころのお茶にしよう。
後は、ポールさんだな。
「ポールさんは、好きな食べ物なんですか?故郷に帰るので、お土産に何がいいかと思いまして、そこそこ珍しいものもありますよ。遠慮された場合は、変なもの押し付けますからね」
「分かりました。そこまで言われたら遠慮はしません。辛い調味料があれば、お願いします。最近はまっていて、色んなものを試しているんですよー」
「了解しました。楽しみにしておいてください」
ポールさんは、辛いもの……っと。祇園で売ってる有名な七味唐辛子にしよう。
これで全員だな。よし、帰ろう。
旅の扉は、会社から徒歩15分の所にある。直ぐに帰れるし、便利だ。
と言っても、そこから自宅までは距離があるから面倒なんだけどね。
「地球か……何もかも……みな懐かしい」
いやいや、まだ死なないよ?
旅の扉をくぐるのは、緊張するな。本当に死亡フラグの可能性すらある。
「よいっしょー!」
意を決して、勢いよく飛び込む。
……そっと目を開けると、見知った風景だ。
「京都よ、私は帰ってきた!」
こっちは昼間だ。異世界ボケしてしまいそう。
祇園が近いので、七味唐辛子を買う。その足でデパートの島高屋に行って、缶に入った煎茶と生八つ橋を買う。
ブランドがいくつかあるが、好みは特にない。というか、京都に住んでいると買って食べることが無いので、味の違いもよく分からない。
お土産も買ったし、牛丼でも食べて帰ろう。
かな卵で、牛丼並・卵セット、温玉変更を頼んで食べた。
地下鉄に乗って、帰路に就く。
……ガチャ
家がやっぱり一番落ち着くな。スマホにUSBケーブルを指して、先に充電しておく。
……ねもい……ぐぅ。
八ッ!?
寝てもうたー。もう20時やん。スーパー閉まる前に、あっちに持っていくもの買いに行こう。
エコバックを持って…と。
インスタントコーヒーに紅茶のティーバッグ、真空パックのボトル醤油、インスタント味噌汁、カップ焼きそば、イカソーメン、カロリーメイク、歯ブラシ、歯磨き粉、栄養ドリンク、ツメ切り…は家のやつ持っていこうっと。こんなものかな。
蛍の光が流れ出した。ヤバいヤバい、レジに行こう。
「レジ袋はご入用ですか?」
「いえ、大丈夫です」
…ピッ、ピッ
「2,700円でーす」
「支払いは、PoyPayでお願いします」
「はい、ではこちらの二次元コードを読み込んでください」
(あっ……スマホ充電中だった)
「すいません。スマホ忘れたので、やっぱり現金でお願いします」
「はい、ではそちらの精算機でお支払いください」
支払いを済ませて、エコバッグに商品を詰めて帰る。
こんな時間に起きてもやることないなー。溜まってたアニメでも見るか。
こうして休日は、だらっと過ぎて行った。
次の日、荷物をつめて異世界に帰る。
「たっだいまーっと」
会社に着くなり、お土産を配っていく。
皆喜んでくれるといいな。
最初に反応があったのは、ジン先輩だった。
「うーまーいーぞぉぉぉおおお!」
目の錯覚かも知れないが、口からレーザーが見えた。
「柔らかくて、もっちりしていて、この上品な甘み。いくらでも食べれるわい。これは何で出来てるんじゃ?」
「皮は穀物の粉で、中身は豆を砂糖で煮たものです」
「なるほど、実に面白い……」
「……あの、その。また故郷に帰った時に、買ってきてくれないかのう」
ジン先輩がデレた。気に入ってくれたようで良かった。
「いいですよ、他の味もあるので、そちらを買ってきますね」
くわっ!
ジン先輩が開眼した。瞳が見えない。
白眼というより、黄色に輝いてる。
「……全種類買ってくれ。金は払う」
「いやいや、日持ちもしないんで、少しずつ買ってきますね。楽しみは取っておくのも、いいですよ」
「分かった。行ったら絶対買って来てくれよ」
「はい! 地元の銘菓なので、私も嬉しいです」
ドタドタドタ……
フリートさんが急いで近寄ってきた。
「……サワタリさんっ! 何ですか、このお茶は!?」
あちゃー、口に合わなかったか。フリートさんは、紅茶が似合う感じだしなぁ。
「ひっじょ〜〜うにエレガントではないですか!! フレーバーもなしに香り高くて、こんなに甘いお茶は、初めて飲みました。奇跡のお茶といっても過言ではありません」
……逆だった。お気に召していただけたようだ。
「地元の名産品なので、私も光栄です」
「……あの、その。また故郷に帰った時に、いただけませんか?」
デジャヴかな……さっきもこの流れがあったような。
「いいですよ。ただそのお茶は、少しおたか~いので、へへっ…旦那…わかりますよね」
両手をすり合わせて、小物臭を漂わせる。いや、実際3,000円くらいするので、毎回渡すにはキツイ価格帯。
「分かりました。お金に糸目はつけません。お渡ししますのでお願いします」
「出来れば、お金ではなく、珍しいものを頂けた方がありがたいでゲス」
語尾がおかしくなってしまった。こちらのお金を貰っても、使い道があまりない。
地球での換金も難しいだろう。そうなると物で貰った方がいいのだ。
異世界で何がもらえるのかも楽しみだし。
「……くっ、お金では手に入らないと。分かりました。次の機会までに用意させていただきます」
と言って、フリートさんは去っていった。
少し誤解を招いたような気もするが、楽しみにしておこう。
「……あの。俺も何か用意した方がいい…か?」
ジン先輩が不安な顔でこちらを見ている。
「生八つ橋は、安価なので大丈夫です」
せいぜい500円くらいだ。
「でも、何か頂けるならそれはそれで嬉しいです」
「わかったぜ! 貰ってばかりだと悪いから、考えてみるぜ」
対価を求めるつもりはなかったが、貰えるものは貰っておこう。こちらも楽しみだ。
詳細は割愛するが、翌日ポールさんが自分の所に来て、再購入を強請られたことは言うまでもない。
七味唐辛子は安価だが、数が欲しいとのことで、報酬をいただくことにした。
お土産のことは社内に広まり、次回はみんなにも用意する羽目になった。
数が必要なので、チョコレート菓子のブラックライトニングにしよう。京都では外国人にも大人気!
ジェシカには、個別に激おこされたので、特別なものを用意しよう。
お土産がないと、作ったものをもう見ないと言われたので、これは死活問題だ。




