18.私の夢
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「紗枝、ちょっとお話がある」
お父さんに話しかけられ、リビングのイスに腰掛ける。
「実はな、紗枝の撮った写真をSNSにこっそり載せていたんだが、それでちょっと有名なカメラマンの人に話しかけられたんだ。才能あるから、コンテストに出してみないかって」
「え、お父さん私の撮った写真勝手に載せてたの?」
「悪い。あまりにも、綺麗にとれていたから、我慢しきれず」
「で、コンテストに出してみたんだ。紗枝の名前で」
そして、お父さんはPCの画面をいじる。
「優秀賞もらった」
表示されたサイトをみると、私の写真が、優秀賞をもらったらしい。
え、ええ?
賞をもらうのは久しぶりだった。小学生の頃、母にだいぶ直されながら提出した植物の詩と、中学校の県大会で、表彰状を受けたくらい。前者などほとんど母の功績である。
どの写真を応募したのだろうと思ったら、まさか一番最初に撮影したタロウの写真だった。一枚でタロウの奔放さと躍動感が伝わってくる良い写真だとは我ながら思う。
「紗枝、もしかしたらカメラの才能あるんじゃないか?」
進路を考えるのは霧の中、歩く道を手探りで進む様な感じだった。
お料理も好きだ。そういった進路も考えた。
嬉しい。これだ――、これが、私のやりたいことだ。その考えが自分にすとんと落ちて、確信した。
屋上で青木くんとお弁当を食べる。
今日は、ごろごろジャガイモと栗かぼちゃが半々に入った俵型コロッケと、ハムとレタスとトマトのサンドイッチにしてみた。
「ご馳走様。はぁ、幸せ」
青木くんは冷たいコンクリートの上にごろんと寝転がる。
「喜んでもらえて嬉しい」
そう言い、私も、青木くんの隣で、同じ姿勢で空を見る。
四方に広がる青に、ふんわりと雲の白が溶け込んでいる。
「――青木くん、私、進路決まったよ」
「ん? どこ行くの? もしや、俺と同じ……とことか?」
私は横に首を振る。
「私、カメラマンになりたいんだ!」そう青木くんに大きな声で伝える。
見たこと、感じたことを、自分の撮った写真で伝えたい。
その場にいなくても、色々な感覚を、知らない人にも共有できる。
上手くいくかは、分からないけど挑戦してみたい。
嬉しい。青木くんみたいに、私にも夢が出来たよ!
「そっか」
青木くんは少し寂しそうに下を向いた。でも、それに気づかないくらい、私の気持ちは高揚していた。
「青木くんみたいに、私も頑張るね!!」
そう告げると、「無理しない程度にな」と青木くんに諭される。
やっとその時、青木くんと対等になれた気がした。
恋愛方面では難しそうだけど、夢見る同士での関係性を深めるなら、高校を卒業しても、同士として頑張れると思う。青木くんの美容室で写真が入用だったら、お仕事もらえたりね。
今の青木くんを想うこの胸の苦しさも、思春期特有のもので、もしかしたら――。
もしかしたら、年齢を経るごとにこの感情も昇華していけるような気がした。
「ねぇ、青木くん!」
「ん?」
「私たち、ずっと――友達でいようね!!」
青木くんは呆気にとられたような表情でいる。
「私ね!カメラマンになったら、青木くんの手によって、綺麗に髪を整えられた美人なお姉さん達やイケメンなお兄さん達を撮影しにいきたいなぁ。あー、もう楽しみだなぁ」
夢見ることで、こんなに青木くんの近くで息がしやすくなるなんて吃驚だ。
胸を熱くするこの夢が、近くにいるけど遠い存在であった青木くんを、一気に近くに引き寄せてくれた気がする。
青木くんに近づけた。
父が続けて掲載した秋の花火大会に撮った私の写真は、花火大会主催者の人にサイト用で使わせてもらえないかと問い合わせがあった。
私の撮った写真に需要があることが嬉しい。
必要にされているって、夢中になれることがあるって、こんなに楽しいことなんだなって私は思った。




