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19.文化祭委員への道連れ

「さてと、これから、文化祭委員を決めます。立候補する人!」

 クラスの皆は、佐藤先生の言葉にシーンとしている。


「うーん。誰もやらないのか?困ったなぁ」

 皆目も合わせないので、佐藤先生は盛大に困っている。

 結局、くじ引きで当てることになった。


「……先生、私、運動会委員もやったんですけど」

 そうテンション低めに呟く。

「そうだな。でも、まぁな。運が悪かったということで」と可哀そうな目をされ、慰められた。


「あとは、もう一人誰だ」と先生が言う。

 高木が「俺……」とおずおずと手をあげた。そしたら、青木くんが突然起きて、立ち上がって、高木くんの手の平の紙を凄まじい勢いで奪い、椅子へ戻り「俺です」と言った。


 クラス中がシーンとなるが、佐藤先生が「青木、そんなに文化祭委員やりたかったんだな」と、涙を流して青木くんに抱き着いている。ちょっと、先生、男とはいえ青木くんに抱き着くなんて許さない! と思ったけど、私そういえば彼女でもなんでもなかったんでした。あはは。先生のは教師愛だもんね。ほっ。


「青木くん、よっぽど運動会楽しかったんだね」

 笑いながら、楓ちゃんに話しかけると「へぇー。青木って、こんな風にけん制するヤツだったんだ」と驚いているみたいだ。???

 しかし、青木くん思い出のためとはいえ、こんなに目立っちゃって大丈夫かな。無気力系目つき悪い系男子だったのに、実は、やる気マンマン男子だったなんて。


「青木くん、また一緒に委員できて嬉しいな」

 そう笑って、話しかけると、青木くんは「俺は、鈴木さんだから一緒にやりたいと思ったんだよ」と真剣な目で返された。

 胸がドキドキして、耳が熱くなるのを感じた。

 真剣な瞳っていうのも迫力があってカッコいいなぁと紗枝はしみじみ思う。ずっと、鑑賞していたい。


 今日のお弁当は、豚の角煮丼にしてみたけど、冷めてしまったからか、脂が固まって美味しくなかった。出来立ての方が美味しいね! 豚のバラ肉は。

 青木くんは、味付けが美味しい!と嬉しそうにモグモグ食べてくれたけど、お弁当も口腔内も脂でヌルヌルしているような気がする。


「ねぇ、鈴木さんって俺のこと好き……だよね?」

「もちろん。青木くんのことは、ずーっと好きだよ」


 青木くんが切なそうな瞳で私を見る。

 顔が近づいてくる。


「あ、青木くん?」

 そう声をかけると、青木くんが後ずさる。そして、「ご、ごめん」と慌てて走って行ってしまった。

 今のは何だったんだろう。

 顔に何かついていたかなぁと恥ずかしくなる。口とかネギとショウガ臭くなかっただろうか、心配になる。


 ちょっと良い雰囲気だった?

 勘違いしてしまいそうだった自分の頬を、紗枝はぱちんと叩いた。



◇◆◇



「――鈴木さん、鈴木さん!」

 肩をゆすられ起きる。

 涎が垂れそうになり、慌てて手の甲で拭う。

 眠ってしまった。


「委員会終わっちゃったよ。疲れてそうだけど……大丈夫?」

 青木くんは心配そうにこちらを見ている。これじゃあ、いつもと逆だ。


「うん。進路について迷っちゃって。何だか調べたら、プロのカメラマンも普通の大学を卒業している人が多いみたいで、結局どこにしようか悩んでしまって眠れなくて」

 そっか。と青木くんは肩を叩いてくれる。


「どうにか――自分で、答えを出したいと思っているんだけどね」

 もう来年の春には高校三年生になる。この間、入学したばかりだと思ったのに、あっという間に時は過ぎる。


「なぁ、もしよかったら、俺に鈴木さんの写真見せて」

 そう青木くんに頼まれる。時計をみると、結構遅い時間で夕方だったので、「別の日に」と話して、一緒に途中まで帰った。


 青木くんに私の写真を見てもらう。

 それは、とても緊張することだった。写真は撮影者の私の内面を映し出しているような気がするのだ。繕えない内面の部分である。


 目の前に飾ってある、海で取った夕日を持ち上げたような笑顔の青木くんの写真を紗枝は指で撫でた。

「これを見たら、どれだけ私が青木くんのことが好きだか、流石に分かっちゃうかな……」


 当日はこの写真は隠そうと思った。

 自分の素直な気持ちをぶつけることが、必ずしも良いことではないと思う。

 それは高木を見てもそう思ったし、好きという気持ちが暴走すると、ろくでもないことは、青木くんから沢山聞いた。


 好きって何だろう。

 相手を大事にしたいという気持ち?

 それとも、相手を思うがままにしたい気持ち?


 後者だったら、恋っていうのはあまり良いものではないかもしれないと思った。



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