祝いの席
会場に着いた。
先ず目に入るのは、正面の大きな窓から見える素晴らしい中庭だ。
ここから見るのが、今までで一番綺麗だと感じた。
...が、いつの間にか雨が降って来ていた。
時刻はまだ15時位だというのに、かなり暗くなっている。
ああ、やっぱ予報通り降って来たか......
ほんと、大丈夫かな......
今更ながら心配になって来た。
天を仰ぐ様に、開放感のある天井を見上げると、一部ガラスの天窓になっていて、晴れた時なんかは日差しが気持ち良さそうだなと思う。
部屋の東側──多目的ホール側には、登壇台の様な物まである。
あそこでスピーチをするっていう事で、麗華はあんな必死に練習していたのだろう。
...はぁ......唯一の楽しみは料理位だろうか......
...あっ、結構...いや、かなり美味しそう!
少しずつテンションが回復して来た私は、その後始まった麗華のスピーチをスルーし、料理を堪能した。
途中、友人がとか、そんな話になって、こっちの方に視線が集まる事があったので、ちょっとドキッとしたが、特に問題は無かった。
ふぅー、食った食った!
...はぁ、それにしても、あんな感じでダシに使う為に私達を呼んだのかな。
...まっ、良いけどね。料理も美味しかったし。
「お疲れ~!料理、美味しかったよね!」
陽介さんだ。
「ほんと~!わたし、いつもよりたくさん食べちゃいましたー!」
優奈ちゃんのテンションが高い。
...改めて見ると、今日のパーティー用の優奈ちゃんの格好は、優奈ちゃんらしい柔らかな雰囲気だなと思う。
髪型は、いつもの明るいブラウン色の内巻きレイヤーボブ。
服装は、袖口の広い淡いブルーのブラウスに、アイボリーのブリーツスカート、ベージュのローヒールパンプスという感じだ。
因みに身長は、私と同じ位かちょっと高い位だと思う。
「ええ、お陰で楽しいパーティーでした」
逆に料理が無かったら最悪な気分だったけど。
「ははは!
...あっ、叔父さん...!」
えっ...?
陽介さんの視線の先を追うと、そこには、白髪混じりの短めのオールバックで、服装はチャコールグレーのスリーピーススーツにボルドー色のネクタイをつけた、目付きの鋭い男性が立っていた。
背は...175cm位...かな。
陽介さんよりも少し高い。
「ああ、陽介、ご苦労様。
......君達が麗華の友人の......?」
「は...はい、私、月宮華菜と申します」
「わたしは、姫宮優奈でーす」
私と優奈ちゃんは挨拶する。
「......そうか......
...私は日神美 忠徳。
麗華の誕生日パーティーにお越し下さり、心より感謝申し上げます。
今日はゆっくりしていって下さい。
それでは」
軽く一礼した後、麗華のお父さん──忠徳さんは足早に去って行った。
「はぁ~、なんか緊張しちゃいました、わたし...!」
優奈ちゃんが、大きく溜め息をつく。
私も同感だった。
「あはは、うん!
叔父さんの前だと皆大体そうなるよ~!
......あっ、あそこに叔父さんみたいな白髪混じりのオールバックの、如何にも執事さんって感じの人が居るでしょ?
あの人が神守さんだよ」
見ると、空いた食器の後片付けをしている、年齢は忠徳さんと同じ──多分50歳前後の男性がいた。
ベスト付きの黒スーツを身に纏い、白のコットンシャツに黒の蝶ネクタイをつけた、確かに"如何にも執事"という格好をしている。
距離があるので正確には分からないが、身長は多分陽介さんと同じ位じゃないだろうか。
「皆さん、ご機嫌よう」
突然聞き慣れない挨拶をされ、何事かと思っていたら、目の前に麗華が立っていた。
ハイヒールを履いているからか、元々私よりも高い麗華の身長が、一層高く見える。
髪型はいつも通り、ロングのくびれレイヤー。
服装はマーメイドラインのワインレッド色のドレスに、赤いハイヒールを履き、首にはダイヤモンドドロップのネックレスをかけていて、それが違和感なく自然に馴染んでいた。
人前だからか、いつもより感じ良く振る舞っている。
こういう場所に慣れているのだろう。
麗華の横には見知らぬ若い男性も立っていた。
かなりのイケメンで身長は180cm近くありそう。
短めの髪で、サイドは少し刈り上げている。
服装は、コットンの白いシャツに、グレーのスラックスを履いており、靴は黒いローファーの革靴という感じだった。
雰囲気だけだと、だいぶ年が離れている様に感じるけど、年齢は多分私達と同じ位だろうか。
「ごきげんようセンパイ!
えへへ、なんか女子校の頃の事、思い出しちゃいました~」
優奈ちゃんが少し照れ臭そうに話す。
...ああ、そういえば、同じ女子校に通ってて、その時からの仲...だったんだっけ。
「ふふっ...ええ、そうね優奈。
...ああ、紹介するわ。
この人は碓氷 蒼夜さん。
私達とは違う大学に通っている医大生で、今はインターンをやってるの」
...やっぱり、この人が話に聞いていた碓氷さんか。
「碓氷蒼夜です。よろしくお願いします」
碓氷さんが丁寧にお辞儀をする。
私達も慌てて自己紹介しつつ、お辞儀をした。
「...それじゃあ、私達はこれで...
行きましょう、蒼夜さん」
「ええ」
そう言って私達に軽く会釈した後、二人は去っていった。
碓氷さんを見つめる麗華の雰囲気から察するに、もしかしたら二人は、友人以上の関係なのではないかと感じたが、麗華の片想いという事もあるかもしれない。
「うわ~、イッケメンでしたね~、碓氷さん!」
優奈ちゃんがはしゃぐ。
アイドルの追っかけみたいな感じだろうか。
「...ぼ、僕も、こう見えて、やるときゃやるよ!」
何をやるんだかサッパリ見えてこないけど、陽介さんなりに対抗心を燃やしているのだろう。
「ふふふ、そうなんですか~?」
優奈ちゃんが屈託なく笑う。
そんな会話で盛り上がっていると、突然───
ドォーン!!
と、いきなり大きな音がして、参加者の多くが窓の方を見つめる。




