和気藹々
その後、中庭を少し堪能しつつ、東棟の廊下突き当たりの位置にある扉に辿り着き、再び屋敷の中へと入る。
「今、僕達の左手にある3室が、一階の客室だよ。
今日は誰も利用者が居ないみたいだったな」
という事は今の所、まだ会っていないゲストさんと執事さん、そして私達三人と、麗華とお父さん、そしてメイドの星井さんの計8人が、今日この洋館に泊まるって事か。
「まだ、もう一人のゲストさんにお会いしてないですけど、どんな人か知ってたりしますか?」
優奈ちゃんも気になったのか、陽介さんに質問する。
「えーっと、確かその人のお父さんが叔父さんの主治医とかで、その関係で麗華ちゃんと仲が良いって感じだったかな。
名前は...ああ、名字が碓氷...だった気がする。
それで、お父さんの方はちょっと来れなくなっちゃったみたいでさ。
その代わり...かどうかは分からないけど、息子さんが泊まりで来てくれたみたいだね。
年は君達とそんなに変わらなかったと思う」
陽介さんが腕組みしながら、必死で思い出している。
「陽介さんは、その...碓氷さんにお会いした事は無いんですか?」
普通に麗華を介した知人でもおかしくない気がするけど。
「ああ、うん。直接話した事はないんだけど、見た事はあるね。
でも、ほら、僕って可愛い女の子にしか、基本興味が無いからさ!」
陽介さんが胸を張って言う。
うんうん、そんな感じだけど、自信満々に言う事でもないんじゃないかな。
「ところで、こっちの部屋は...?」
話を洋館の案内に戻してもらおうと、私は陽介さんに質問した。
「おお、そうだった!
僕達から見て奥の方は談話室になってるんだけど、手前の方はね...な、なんと、遊戯室になってるんだ!!ウェーイ!!」
陽介さんが拳を突き上げる。
「うぇーい!!」
優奈ちゃんも陽介さんの様に拳を突き上げる。
...なっ、なんだ?これが所謂パリピってやつ??
あまりのテンションの違いに、若干置いてきぼりになりながらも
「...でも、ちょっと意外でした。
このお屋敷って、なんとなくそういうのとは無縁っていう感じがしてたので...」
と、素直な感想を述べてみた。
「うんうん、分かるよ!
僕だったら、こんな部屋ばっかりにするだろうけど、なんてったって あの叔父さんだもんね!
...まあ、でも叔父さんなりに、屋敷に泊まりに来たゲストさんをもてなしたいっていう気持ちはあったんじゃないかな」
そう言いつつ、陽介さんが遊戯室の扉を開ける。
真ん中にビリヤード台がある他、周辺の机にはチェス盤などが置かれている他、見た事も無い様なボードゲームも展示してあった。
「...とはいえ、結構渋め...っていうか、一部若干マニアックなラインナップではあるんだけどね。
まあ、こういうのも叔父さんらしいかな」
陽介さんは楽しそうに笑う。
「わたし、チェスとか将棋得意なんですけど、陽介さん、今夜一局どうですかー?」
...えっ?優奈ちゃん、チェスとか得意なの!?
「あー、凄く魅力的なお誘いなんだけど、僕、ああいうゲームはからっきし駄目なんだ!
麻雀とか、サイコロやルーレットを使ったボードゲームなんかは得意なんだけどね。
だから、優奈ちゃんのお相手になれそうもないかな...」
なんか陽介さんらしいなと思った。
「そっかー残念...」
優奈ちゃんが落ち込む。
正直、私も全然得意ではない。
「ごめんねー」
陽介さんが心底申し訳なさそうに頭を下げていた。
その後、ちらっと談話室を覗いた。
この屋敷にある部屋の中では一番狭い方だが、ゆったりとしたソファーが2台、机を挟んで置かれていた他、隅に置かれた台の上には高そうな壺が飾ってある。
壁にもこれまた高そうな絵が飾ってあった。
ああいうのって、見てるだけで何か緊張してくるな......
他には、飲み物でも飲みながら話す為だろうか?小型の冷蔵庫や製氷機も置いてあった。
これで、屋敷の中は全部回ったか。
私は脳内に見取り図を思い浮かべる。
扉は実際よりも大きめになってるけど、一マスは大体2m位だ。
「...うん、時間的に丁度良い位だし、そろそろ会場の方に行こっか」
陽介さんがスマホで時間を確認した後言った。
「あっ、はい!
運転でお疲れでしたのに、案内して下さってありがとうございました!」
私は頭を下げてお礼を言った。
「ありがとうございました~!」
優奈ちゃんも私に続き、頭をペコリと下げてお礼を言った。
「いいって、いいって!僕がやりたくてやった事なんだし!それに君達と過ごせて楽しかったよ。
僕の方こそ、ありがとう!」
今度は陽介さんまで頭を下げた。
その光景が、なんか面白くて、それでいて、どこかホッとして、私は笑ってしまった。
それを見た二人も笑い出した。
ああ、こんな楽しい時間がずっと続けば良いのに。
私は少しげんなりしながら、二人と一緒に会場へと向かった。




