家(うち)に帰ったら
食事が終わる頃、土砂の撤去作業をしている業者から連絡が入ったと、忠徳さんから知らせが入った。
どうやら作業は順調に進み、明日の深夜から、遅くても明後日の早朝までには撤去が終わるとの事だった。
本当に三日位で終わりそうで、あまりの早さにビックリしたけど、これで漸く家に帰って積みゲーが消化出来ると思うと、喜びのあまり跳び跳ねたくなる。
そんな私の様子に気づいたのか、お姉ちゃんが私を見てニコニコしていた。
食堂を出るタイミングで
「ちょっと待ちなさい」
と、珍しく麗華さんが私達に声をかけてきた。
「何があったのか色々聞きたい事はあるけど、貴方達が来たから私の命が助かった...と思うの。馬鹿馬鹿しい話だし、聞き流して構わないけど...その、感謝してるわ!」
お礼を言う態度ではないが、麗華さんがお礼を言うのは、かなり珍しい事なのだろう。
食堂にいた全員が絶句していたし、忠徳さんに至っては、少し涙ぐんでいた。
同じお嬢様なのに咲耶さんとはえらい違いである。
「それで...誰に聞いてもはぐらかされそうだったから、貴方達に聞くけど、私と華菜は、その...姉妹...なのかしら......?」
私は忠徳さんの方を見る。
覚悟していたのだろう。
忠徳さんは、ただ静かに頷いた。
「はい、そうです。
...でも、詳しい経緯は忠徳さんから聞いて下さい。
はぐらかすつもりはなさそうですし」
麗華さんが忠徳さんの方を振り向き、私が述べた事が真実であると悟った様だった。
「...そう...華菜」
今までの無関心さとは違う、距離を測りかねた様でいて、少し後悔が混じった様な、そんな声で麗華さんが華菜さんの名前を呼ぶ。
「...なに......?」
麗華さんに対する溝を感じる様な、それでいて、何処か安堵している様な、そんな声で華菜さんが答える。
「私...貴方が嫌いだったわ。
多分きっと、これからも。
...でも」
麗華さんが華菜さんを見つめる。
「私のパーティーに来てくれてありがとう。
ふふ...私を殺す時に泣くなんて、どういう心境だったのよ、貴方」
麗華さんが微笑んだ。
華菜さんは何も言えずに、ただ泣いていた。
殺したいほど...いや、殺すほど憎いと思っていた相手だったけど、血を分けた者同士、お互いに嫌いにはなりきれなかった部分があった...という事なのかもしれない。
麗華さんが自室へと去って行った。
「いや~、まさかあの麗華ちゃんが、お礼を言うなんて...!
...だけど、良かった......
...本当だったら、僕がしっかりしなくちゃいけなかったんだけどね。
夢の中でも現実でも、結局何にも出来なかったな...」
そう言って、陽介さんが少し落ち込む。
「しかも夢の中では、多分僕のせいで事件がややこしくなって、それなのに、疑われるのが怖くなって言い出せなくて......
ほんと、僕って昔からどうしようもないんだ...
殺された時、苦しかったけど、それもしょうがないかな、なんて思ってた位でさ。
君達が来てくれなかったら、本当にああなってた...って、ハッキリ分かるよ」
自分の不甲斐なさに苛立ちながらも、陽介さんは顔を上げて、私達を真っ直ぐ見つめる。
「ありがとう。こんな言葉じゃ足りないけど、君達に会えて、本当に良かったよ」
陽介さんがそう言ってお辞儀する。
「おいおい!止めてよ陽介ちゃん!
私と君の仲だろ?
大体、君は自分の事を悪く言い過ぎじゃないかな。
君が居たから、皆の雰囲気だって明るくなったんだ。
君は十分やってたよ、私が保証する!」
いつから、そんな仲になっていたのか分からないが、美月さんが陽介さんを全力で励ます。
「あっ、ありがとう美月ちゃん...いや、美月姉ちゃん...!」
...はっ?
......ああ、年上だと分かってたけど、なんかノリで"ちゃん"付けしちゃってた...みたいな?
しかも美月姉ちゃんって!
これには美月さんも流石に...
「うんうん、良いんだよ弟よ!泣きたい時はしっかり泣きな!」
「うん...!」
あー、うん、なんか丸く収まったみたいだし、良かったわ。
そんな二人を見て、片付け中の光織さんが羨ましそうな顔で、美月さんに熱視線を送っていた。
...なんか、美月さんのファン増えたな......
「ねえ、華凛ちゃん!たまには、私にもっと甘えて良いんだよ?」
何に張り合っているのか、お姉ちゃんがテレパシーで私に催促してきた。
「ああ、うん。でも、ほら、家事とか色々やって貰ってるし...」
「それは私が楽しくやってる事だし良いの!
...ほら、抱きついて来るとか...?」
「あっ、うん、じゃあ、家に帰ったら...」
「ほんと!?約束だからね!」
...誰に聞かれた訳でもないけど、かなり恥ずかしい......




