反撃の狼煙
「よっし、じゃあ早速逮捕...って、まだ何も起こってないし無理か...」
美月さんが少しガッカリした。
「今日正夢になりかけたので、まさかとは思っていたが...最初に私が殺されるまでの話は、私が見た夢と全く一緒だった......
それに...その後の話も妙に生々しくて、現実としか思えない...
こんな事は初めてだ......」
忠徳さんが戸惑いを見せる。
やはり忠徳さんも夢を見ていたのか。
私の覚えた違和感というのは、人間関係的なものが主であり、そこにほんの少しだけ、言葉に出来ない変な気持ち悪さみたいなのが加わったものであって、私は夢世界に登場した訳でもないのだから、忠徳さん達が感じているデジャヴみたいなのは勿論感じてない。
が、夢物語と片付けるには、人間関係や心理的にも、また、先ほど確かめた書斎の掛け金の状態的にも、現実に即し過ぎている為、私もこれがただの夢だとは思えない。
私達が使えるテレパシーや、お姉ちゃんの能力の事もあるので、何か不可思議な現象に巻きこまれてしまった...のかもしれない。
案外、私が感じた"言葉に出来ない気持ち悪さ"もそこから生まれたんじゃないだろうか。
○あちゃ~、もしや私の熱視線に気付いちゃったんですかね~?
...はっ!
あっ...あの、これはその...ひぃぃ!
「ふざけてんのは、てめえの存在だけにしとけ!余計なちょっかいかけてんじゃねえ!」
...という、皆さんの声が聞こえてくる様です......
す、すみません、ほんの出来心なんです!
ゆ、許してくだせえ、旦那ぁ......!
えっ?そんな事はどうでも良いし、こうなった以上はしょうがないから、さっさと続きを見せろ......?
...げへへ、旦那もお好きですねぇ...
...あっ、すみません、調子に乗りました。
それでは続きをどうぞ♪○
「今回、事件が未然に防がれたので、優奈さんがこの機に乗じる可能性は低い筈だったんですが...
もしかすると、明日辺りにでも動きがあるかもしれません。
実は優奈さんに、動機に近いものが生まれる可能性が出て来たので」
「ん?動機?」
私の言葉に美月さんが首を傾げる。
「ええ。先ほど"事件が起こるかもしれない"と言ったのは、そういう意味です。
恐らく決着がつくとしたら早期に、皆さんには危険の無い範囲で起こると思います」
忠徳さんが同じ夢を見ていた事で、ほぼ確信出来た。
「...ですから、ここであった事は出来るだけ内密にして下さい。
ただ、神守さんや光織さんの協力を仰ぐ事もあるかもしれませんし、その際スムーズに事が運ぶよう、忠徳さんからお二人に伝えていただけないでしょうか?」
「それは勿論構いません。
貴方がたは私と...そして二人の娘を救って下さったのです。
日神美として協力は惜しみませんよ」
忠徳さんが柔らかく微笑む。
こういう表情も出来る人だったんだな......
「ありがとうございます!」
私はお辞儀をしつつ、お礼を言った。
もう夜明けも近くなっていたが、その後はそれぞれの部屋へ戻り、朝食まで睡眠を取る流れになった。
...と
「あっ、あれ…?
なんで皆ここに...?」
陽介さんが書斎を訪れて来た。
「詳しい事は、後日話すよ。
心配をかけてすまなかったな陽介。
私は大丈夫だ」
忠徳さんの言葉に驚きつつも安堵したのか、陽介さんがホッと胸を撫で下ろす。
「よっ...良かった~!
なんか...色々不安だったんだよね...
良く分かんないけど、叔父さんがそう言うんなら、分かったよ!
...ふわぁ~、まだ眠いから、僕はまたちょっと寝て来ようかな...
おやすみ、みんな」
そう言って、陽介さんは再び自分の部屋へと戻って行った。
やっぱり、この辺りも夢の通りか......
忠徳さんが健在だったから、慌てて密室になる事は無かったけど。
華菜さんが書斎を出る時
「これまで本当にすまなかった、華菜...」
と、忠徳さんがポツリと呟いた。
「......育ててくれた父の事を思うと、私は...やっぱり貴方を許せない......でも」
華菜さんが入り口付近で、忠徳さんの方を振り返る。
「大学に行かせてくれた事...そしてさっき娘だと言ってくれた事...については感謝してます」
華菜さんが会釈をし、そのまま自分の部屋へと戻って行った。
「......ありがとう」
俯きながら、忠徳さんは静かにそう呟いた。




