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密室殺人に対する考察  作者: 守屋亭 混沌
第二部:解決編
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嘘つきは

「なるほど~。じゃあ、陽介ちゃんが三番目に殺害されたのはそれが原因...?」


美月さんが再び質問してきた。


「普通だったら、そう思いますよね。

でも、陽介さん殺害の犯人は華菜さんじゃないですし、それとこれとは全く関係無かったんじゃないかな」


「えっ...どういう事、華凛ちゃん?」


「つまりですね...3番目以降の殺人は動機なんて無かったんじゃないかって事です。

あえて言うなら、多分...その方が"楽しかった"から」


華菜さんが、私の発言に身震いする。


「この犯人は、最初と二番目の事件が密室だった事を巧みに利用し、あたかも密室に並々ならぬ執着がある犯人という虚像を作り上げた」


「だ、誰なんですか...それは...?」


華菜さんが恐る恐る尋ねる。


「その話に移る前に、先ずは二番目の事件について考察していきましょう。


この事件で夢の中の華菜さんは、麗華さんに園芸用の農薬を飲ませて殺害。

その後、釣りのテグスを使って、先ずは麗華さんの寝室の扉の廊下側のドアノブに、軽くテグスを結んでおき、机の上の電気スタンドで折り返して再び廊下に戻ってくる。

そして、扉を閉め鍵を掛け、往復させたテグスの内の片方に鍵を通し、扉の上にあるという隙間から、鍵を室内へ滑り込ませる。

この際、恐らく書斎にある脚立を使ったんじゃないでしょうか。


麗華さんの部屋は、先程の華菜さんの話から想像しただけで、まだ実際に拝見していませんが、扉から窓までの距離が、客室と同じ位と想定すれば約4m。


扉の高さを2m70cm位として、鍵を滑らせた時のテグスのたわみ等を考慮すれば、入り口から大体3m位の所で鍵が止まる為、そのタイミングでどちらか一方のテグスを引いて、鍵を落としつつテグスを回収。


こんな感じの流れだったから、机の上じゃなくて、机手前の絨毯の上にマスターキーが落ちていた...

どうですか、華菜さん?」


華菜さんは、驚きのあまり暫く声を失っていたが


「はっ、はい...その通りです...」


と述べた。


「となると、第二の事件でわざわざ密室を作ったって事は、麗華ちゃんの自殺って事で、罪をかぶせたかったから...とか?」


美月さんが私の代わりに、大事な部分を説明してくれた。


「ええ、その通りです。

ですが...その為には...」


「毒薬を飲んだ容器と、遺書が欠けていた...

んで、どうも夢の中で華菜ちゃんが、あの世に行った時に見た幽体離脱的な視点では、破かれた遺書が机に。コップがベッド脇の地面の上に転がってた...んだっけ?」


美月さんの言葉に、華菜さんが微かに頷く。


恐らく遺書に書かれている内容は、麗華さんが父親殺害を自供する内容になっている筈で、不都合な部分は破り捨てられたという事だろう。


屋敷に来てから書いたと考えられない事もないが、麗華さんの筆跡が分かるものが都合良く手に入らない可能性もある訳だし、麗華さんの筆跡に似せて華菜さんが予め遺書を用意しておき、機会があれば使うつもりで持って来て、実際に使う事になった...という感じだったんじゃないかと思われる。


しかし、幾ら似せていても、華菜さん自身の筆跡がどうしても残るだろうから、多少違和感はあっても、状況から考え、あくまで華菜さんが残した遺書という事で処理される可能性が高いのではないだろうか。


華菜さんは、そういった事にあまり詳しく無かったのではないかと思われる。


「...つまり...」


私は先を続ける。


「その破かれた遺書というのが、本来であれば、麗華さんの部屋の机の上に置かれてた筈の物で、コップは同じかどうかは分かりませんけど、それも本来であれば、麗華さんの部屋に転がっている筈の物だった...

でもそれが無かったという事は...」


「華菜ちゃんや陽介君を殺害した犯人が、麗華ちゃんが亡くなった後、部屋に入って工作した...ってこと?」


「はい。そう考えるのが自然です」


私は美月さんの推理に頷きつつ答えた。


「でもさ、どうやって犯人は麗華ちゃんの部屋に入れたのかな?

自室の鍵は麗華ちゃんが持ってて、ベッド脇の台の上。

マスターキーは、さっきのトリックで部屋の中に落ちてた訳でしょ?」


美月さんがもっともな質問をする。


「ええ...でもそれは、麗華さんが本当にご自身の鍵を持って、自室に入られた場合です。

...思い出してみて下さい。

自室に鍵を掛け、寝ていた華菜さんが毒殺されましたよね。

あれとやり方は同じです」


「うーん、でもどうやって...?」


美月さんが腕を組み考え込む。


「実は、そんなに難しい事じゃないんです。

...華菜さん、事件の前に、麗華さんと貴方に密着した方がいらっしゃいませんでしたか?」


華菜さんが少し考え、そして、ショックを受けた表情になる。


「...えっ...ウソ...そんな......でも、どうして...?」


「お話を伺う限りでは、その人物は、食事の時いつも華菜さんの隣に座っていた。

また、陽介さん以外の全ての人が睡眠薬を貰っていた...」


「......ゆ...優奈ちゃん...なの......?」


華菜さんが、今にも泣き出しそうな表情になる。


「はい。優奈さんは日神美家の家庭の事情なんてご存知無かったと思いますから、単純に状況に恵まれて、殺人も起こって、誰がどうやって殺害したかも分かったから、それを利用しようと思ったのでしょうね」


その場にいた、お姉ちゃん以外の人達の表情が強ばる。


要するに麗華さんが殺害された後、優奈さんは、麗華さんから盗んだ部屋の鍵で寝室に入り、麗華さんの遺体を発見。

その際、密室のトリックにも気付いた為、同じ方法を用いて、再び密室を作ったという事だ。


鍵を盗んだ時は、次の標的が麗華さんである可能性が高いと思ったから盗んだのか、それとも麗華さんが寝静まっている時にでも忍び込んで、なにかをくすねようと思ったから盗んだのかは定かではない。


けど、華菜さんがマスターキーの話題を反らした辺りで、彼女が犯人であり、次の標的は麗華さんになると、ある程度察していたのではないだろうか。


つまり優奈さんは、華菜さんが事件の犯人だと、忠徳さんが殺害された時点で気付いていた可能性が高い。


流石に、華菜さんと忠徳さんが親子だとは思っていなかったろうけど、華菜さんの時折見せる張りつめた表情を見ていて、不審に思っていたのかもしれない。


「3番目の...事件は...どうやって...?」


華菜さんが掠れた声で聞いてきた。


「扉の近くが濡れていたという事でしたから、厨房か談話室から氷を取って来て、扉の間に挟んでおいたのでしょうね。

陽介さんの事ですから、たとえ犯人を警戒して鍵を掛けていても、優奈さんがノックをし声をかければ、普通に開けてくれたでしょう。

そこで、背後を向いた陽介さんを、忠徳さんと同じ様に、電気スタンドで殴って昏倒させ、ケーブルで絞殺した...同じ犯人だと思わせる為に」


「...そ、そんな...優奈ちゃん...!」


華菜さんが泣き崩れる。


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