機械嫌い
部屋に入ると、頑丈で高級感のある木製のドアが勝手に閉まる。
オートロック式の扉に良くあるバネ式とかなのだろう。
今の時間は鍵が掛からないが。
うわ~、やっぱホテルみたい!
テレビが無い位で、どうもバストイレ別っぽいし、クローゼットも洗面所もある。
私はクローゼットに荷物を入れ、そのままベッドにダイブする。
うっわ~!ベッドふかふか!!
......って、思わず童心に帰って、ベッドの上ではしゃいでしまった......
少し恥ずかしくなり、入り口正面にある窓の方へ向かう。
窓の前には、机と椅子が置いてあり、机の上には、大理石製の重そうな電気スタンドが置いてあった。
窓から景色を眺める。
一面に森と山が広がっている。
さっきの陽介さんの話だと、こっちは東側か。
山に遮られて、日の出は見れそうにないけど、まあ私、朝は弱いしな。
...そろそろ10分か......
ベッドに後ろ髪を引かれつつ、私は部屋を出た。
「おお!どうだった?凄かったでしょ?」
陽介さんが自慢気に聞いて来る。
いつから屋敷の主になったのだろうか。
「あっ...は、はい、なんかホテルみたいで凄いですよね。
テレビとか無いのは、ちょっと気になりましたけど」
陽介さんのテンションに戸惑いながらも、私は率直な感想を述べる。
「それ分かる~!
僕も見たい番組あるからね。
まあ、予約録画してるけど!
叔父さんが、結構アナログな人でさ。
テレビとかそういうの、全然置きたがらないんだよね~」
「えっ、そうだったんですか?
それにしてはカードキーとかありますけど......」
「うん、そこは叔父さんにとって、苦渋の決断?みたいな感じだったんだろなあ。
やっぱゲストの事とか考えると、鍵の管理とか、セキュリティ面が不安だったんじゃないかな」
「でも、ここでわざわざ、その...泥棒したりとかって人が居るとは、ちょっと考えにくくないですか?」
一時期、大学で盗難が続いて大変だったりした事はあったけど......
「まあね。でも叔父さん、割と心配性な所あるんだよ。
変なところ拘るっていうか。
...ああ、因みに西棟の部屋の鍵は、普通の鍵なんだよ」
「へぇ~」
自分の身近な所に、あんまり機械を置きたくない...とかかな。
「カードキーとかって、何処で発行してるんですか?」
気になったので、何気に聞いてみる。
「うーん、それが僕にも良く分からないんだよねえ。
...ただ、西棟にある麗華ちゃんの部屋の隣に、予備室って呼ばれてる部屋があってね。
広そうだし、どうせだったらそこに泊まらせてよって頼んだんだけど、断られた事があったんだ。
他に怪しい部屋は無かったし、あるとしたらあそこかなあ」
...予備室......か。
セキュリティの関係で名称を誤魔化してるとも考えられるけど、もしかしたら麗華のお父さんの拘りというか、意地みたいなものなのかも。
「すみませ~ん!
ちょっとウトウトして、遅れちゃいました~!」
私が予備室の事に思いを巡らせている最中に、部屋から優奈ちゃんが慌てて飛び出して来た。
「ううん、全然待ってないよ~!
...ところで大丈夫?疲れてるんなら、部屋で休んでた方が......」
陽介さんがそう提案すると
「あっ、いえ、疲れとかは全然です!
寧ろ、寝てるのがもったいない位で...!」
優奈ちゃんが、珍しく慌てて両手を振る。
「そう...?
......んじゃ、お屋敷探検にレッツゴー!!」
「れっつごー♪」
陽介さんの掛け声に、優奈ちゃんも合わせて手を振り上げる。
なんなんだ、このテンションは......
......げっ!!
なんで私だけやらないの?みたいな視線で、こっち見てるし!!
こっ...これは...かなり、恥ずかしいぞ......!
「...ご...ごぉー」
私は恥ずかしさのあまり、震えながら手を上げる。
顔はきっと真っ赤だったに違いない。
それを見届けて、二人は満足そうに微笑む。
...新手の拷問か何かだろうか。
「よーっし、じゃあ、せっかく2階にいる事だし、先ずは2階をご案内しまーす!」
陽介さんの後に続き、私達は西棟へと向かった。




