素敵なお屋敷
パッと視界が開けたと思ったら、それなりに広い駐車場と、大きな洋館が目の前に広がった。
左右何百mか先は崖になっていて、見晴らしが凄く良い。
駐車場には既に何台か車が停まっている。
うわ~、高級車多いなあ!
距離は離れてるけど、ああいう車が停まってると、なんか緊張するな~。
そんな私の緊張など露知らず、陽介さんは嬉しそうに「無事に着いて、ホッとしたよ~」と言っている。
いや、ヒヤヒヤした主な原因はアンタの運転だよ!
...と、喉まで出かかったが、しっかりと飲み込んだ。
...うん、ここまで送ってくれたんだもんな。
「ありがとうございました、陽介さん!」
日神美だと分かりにくいから、下の名前で呼ぶよう陽介さんに言われていた。
「ありがとうございました~」
相変わらずのホワホワ空気で、優奈ちゃんもお礼を言う。
「良いって良いって!
こんなに可愛い子達を僕の車に乗せられただけで、大満足さ!!」
うん、基本良い人なんだけど、なんかテンションが独特なんだよね。
それにしても、陽介さんの車も高級外車で、乗る時にだいぶ緊張したけど、なんか慣れてしまったのは、陽介さんのキャラのせいかもしれないな。
「じゃっ、立ち話もなんだし、早速屋敷の中に入ろうか!」
象牙色の壁に、コバルトブルーの屋根の色合いが綺麗な洋館は、横幅が大体50m近く、高さは10m以上はあるだろうか。
これが別荘というのだから、物凄いお金持ちだなと思う。
陽介さんを先頭に私達も続き、3m以上はあろうかと思われる両開きの巨大な玄関扉の前まで行く。
どうやら鍵は開いているらしく、パーティーの参加者が自由に出入り出来るようになっているみたいだ。
陽介さんが扉を開け、私達は建物の中に入った。
うっっわ!ひっっろ!
外見通りの広くて長い廊下、高い天井に度肝を抜かれる。
正面には高そうな絵も飾ってあった。
玄関扉並みに大きな、開放された両開きの扉が、左右数m先に2ヶ所見える。
多分、あそこがパーティー会場だろう。
パーティーが開かれる時間は、もう少し先だが、既に参加者達が集まって、それぞれ歓談の一時を過ごしていた。
麗華の姿は、まだ見えない。
主役は後から登場みたいな感じなんだろう。
...にしても、凄い顔ぶれだなぁ......
テレビで見た事ある様な有名人が沢山いる。
もう少し元気だったら、サインでも貰いたい気分だったろうけど、陽介さんの運転とかで疲れてるし、何より後で麗華に何言われるか分かんないから、自重しとこう。
麗華のお父さんが参加者に挨拶している。
ニュースとかでちらほら見かけている事もあって、顔を知っているのだ。
本当だったら、娘の麗華も一緒に挨拶に回るのが礼儀なんだろうけど。
案外、自分の娘には甘いのかもしれない。
...なんて事を考えてたら...
「うーん、パーティーまでまだ時間あるし、君達の荷物を部屋に置きに行きつつ、僕が屋敷の中、簡単に案内しよっか?
会場で待ってて、叔父さんの邪魔しちゃ悪いし......」
と、陽介さんが提案してくれた。
実は、私や優奈ちゃん、陽介さんは今日ここで一泊する事になっている。
どういう風の吹き回しかは知らないけど、麗華がそんな誘いをするのは珍しかったから、断れなかったのだ。
そんな訳で、今の内に案内してもらえると凄くありがたい。
「あっ、はい、是非お願いします」
私は頭を下げる。
「お願いしま~す!」
いつもの感じで、優奈ちゃんもペコリと頭を下げる。
「良いよ良いよ、頭なんて下げなくて!
僕、硬っ苦しいのは苦手だからさ、正直、君達の案内をさせてもらっている方が有り難いんだ!」
陽介さんが慌てて言った。
多分、本心なんだろう。
今からパーティーに出席するというのに、陽介さんはナチュラルブラウンで明るめの無造作な髪型に、服装は白Tシャツの上に黒ジャケットを羽織り、下はデニムに白いスニーカーというラフな格好だ。
性格や身なりからすると、伝統と格式を重んじる印象がある日神美家の人間...という感じが、陽介さんからはしない。
どちらかと言うと、自由人という感じだ。
「それじゃあ、行こっか♪」
いつものテンションに戻った陽介さんに案内され、私達は玄関から入って右側の廊下の突き当たりにあった階段を上がった。
「すこーし急だから、気をつけ...うわ!」
言ったそばから、陽介さんが階段でズッコケそうになったが、近くの手すりを掴んで事なきを得た。
やっぱり、そそっかしいっていうか、おっちょこちょいな人なんだろうな。
ほんと、良い人ではあるんだけど...
内心そんな事を思いながら
「大丈夫ですか?」
「大丈夫ですか~!?」
と、優奈ちゃんとは違って、私は少し冷静なトーンで心配してしまった。
これじゃ、逆に陽介さんに悪い...
「あっ、ありがとう二人とも~!!
君達の愛のお陰で、どこも怪我してないよ~!」
あっ、うん、大丈夫だったわ。
優奈ちゃんは、楽しそうにニコニコしてる。
二階に着いた。
こっちには、一階にあったパーティー会場に当たる部分が無く、窓になっていて、廊下が一階よりも明るい雰囲気になっている。
窓から西洋風の見事な庭園が見える。
うっわ~、すっっご!!
さっすがお金持ちって感じ。
どうやら、この洋館は"コ"の字になっているみたいなのだが、背の部分が玄関だとすると、中庭はお腹の空白部分に当たる。
私達は階段を上がって右側に見える廊下、"コ"の上部の廊下を進む。
突き当たりには窓がついていた。
「一応、こっちが東棟って呼ばれてるみたいなんだけど、客室はこっち側にまとまってあるんだ。
一階にも部屋があるけど、景色良い方が良いでしょ?」
優奈ちゃんは喜んで頷く。
私はそうでもないけど、取りあえず頷いとく。
客室の入り口はそれぞれ、やや奥まった場所にあり、入り口正面付近に行かないと、ドアが開いてるかどうかも分からなくなっていた。
二階の客室は全部で6室あり、サイコロの6の目様に並んでいるのだが、北を上とすると、陽介さんが東棟の一番左上、私は一番左下で、優奈ちゃんの部屋は私の正面...つまり一番右下という部屋割りらしい。
また、どうも先客がいるらしく、その人は私と陽介さんの間の部屋に泊まるみたいだ。
「あっ、そうそう!
ここの客室って19時から朝の6時まではオートロックになるから気をつけてね。
カードキーは後から貰えると思うよ」
そう言いつつ、陽介さんがカードキーを見せびらかす。
自慢...してるんだろうな、たぶん。
っていうか、カードキーって!
ホテルかっ!!
それにオートロックが19時から朝の6時までっていうのは...?
...ああ、もしかして掃除の関係とか?
そんな感じで、私が忙しく思考を巡らせていると
「じゃあ、部屋の様子も見たいだろうし、10分位休憩にしよっか!」
と、陽介さんが言った。
まあ、10分位じゃ、そんなに休めないだろうけど、神経張ってたし、この提案は有り難い。
私達は、それぞれ割り当てられた部屋へと入っていった。




