苦虫を噛み潰す
はぁ~、なんか緊張するなぁ......
友達...と言っても、相手がそう思ってるのか、凄く疑問ではあるんだけど...
その友達の日神美 麗華に誘われ...というか半ば強引に、彼女の誕生日パーティーに行く事になったのだ。
一応、同じ大学に通ってはいるんだけど、なんというか、お嬢様である麗華とは住む世界が違い過ぎる。
片や日神美財閥のご令嬢。
私はと言えば、ただの一般人...よりもちょっと貧乏と来てる。
今は他界した私の父が、麗華のお父さんの昔の知り合いだったらしく、その絡みで目をつけられ...じゃなかった、仲良くしてもらっているのだ。
......それにしても、随分山奥にあるんだなあ......
っていうか秘境だよね、ここまでくると。
見渡す限りの緑、そして所々見える渓流。
パーティー会場内というより、ダムに行く風情だろう、これは。
「ちょーっと、退屈な景色が続くけど、後もう少しだからね~」
車の左前方に位置する運転席で、男性が喋る。
彼の名前は日神美 陽介。麗華の従兄弟らしい。
パーティー会場である麗華の別荘まで、車で送り迎えしてくれている。
大方、麗華に押しつけら...彼女が気を利かせてくれたのだろう。
麗華はといえば、使用人の車で、さっさと現地に行ったらしい。
私達も一緒に連れて行けよという話なんだけど、まあ麗華らしいといえばらしいか。
因みに、私の右隣には、私と麗華の後輩であり、友達でもある姫咲 優奈ちゃんが座っている。
おっとりした感じの可愛らしい子だ。
「ああ、全然大丈夫ですから、お気になさらないで下さい!
最近山とかあんまり来てなかったんで、なんか新鮮っていうか...
ですから、もう少しゆっくり行きましょう!」
半分本心で私は言った。
「そうかい?
...いや~、可愛い上に性格まで良い子ふたりと、ドライブ出来るだなんて、僕は幸せだなあ!」
陽介さんが心の底から楽しそうに笑う。
はぁ~、やっぱ伝わってないわ、この人!
悪い人じゃないっていうのは分かるんだけど、さっきから車のスピードが凄くて、私としては内心ヒヤヒヤしっぱなしなのである。
せっかちというか、そそっかしいというか......
こんな状況だというのに、優奈ちゃんは楽しそうにニコニコしている。
やっぱ大物だわ、この子も......
それにしても、あとちょっとって、どの位なんだろう?
建物が見えてくる気配が一向に無いんだけど。
このままじゃ、ガードレールに突っ込んでお陀仏か、警察の厄介になるかのどちらかに違いない。
ああ...誰か...早くなんとかして......お願い......
と、悲劇のヒロインぶっていたら、前方に分かれ道が見えて来た。
「あの分かれ道を左に進むと、叔父さんの別荘だよ!やったね!」
何が"やったね!"なのか、私には皆目見当がつかなかったが、確かに私の心中では快哉を叫んでいた。
「別荘に繋がる道って、ココだけなんですかー?」
優奈ちゃんが、珍しく質問する。
まあ、でも気持ちは分かるかも。
だって、崖だらけだし、今日みたいに大雨の予報が出ている時なんかは、土砂崩れで暫く帰れなくなる...なんて事も起こりかねない。
「うん、ココだけだね~。
まっ、叔父さん、お金持ちだし、大丈夫っしょ!」
優奈ちゃんが「あはは、そうですね~」と言って、楽しそうに相槌をうつ。
お金持ちだから、土砂崩れが起こらない訳でもないし、こんな山奥じゃヘリも降りられないのでは?とも思うが、まあ、道の復旧は早い...のか?
能天気に笑う二人を尻目に、私はますます不安になって来ていた。
◯ん?......んんんんん??
あれっ、私の可愛い華凛ちゃん達はいずこへ......?
まっ、まあ、今回の主人公も美少女...もとい、美女みたいですし、これはこれで...ぐへへ......
...ハッ!し、失礼しました!
そう!私は女神です!
いやあ、何かの手違いで主人公が変わっちゃったと思いましたが、なんとかなりそうですね!
因みに、先程から心の声がだだ漏れの彼女は、月宮 華菜さん21歳、大学生です!
どうも今回は最初、華菜さんの視点で話が進むみたいですね~。
...あっ、そうだ!先ずは簡単におさらいをしておきましょう!
"◯"で囲まれている箇所は、私、女神が話していて、これは皆さんにしか聞こえてません。
また、私は女神なので、嘘はつきません。
あと、皆さんの世界で未知の事柄Xが出る時は、必ず説明しますので、ご安心下さいね!
さ~って!華菜さんが乗った車が、そろそろパーティー会場に着きそうですね~!
山奥の洋館...はぁ~、ミステリーさいっこう♪
...という訳で、次のシーン、行ってみましょ~!!◯




