組合わさっていくパズル
そんなこんなで、私達は応接間へとやって来て、部屋の中央にあった2台のソファの内の一つに私と美月さんが座り、テーブルを挟んで向かい側のソファに光織さんが座った。
他の部屋よりも狭めだが、ソファがふかふかで気持ち良いし、何やら、小型の冷蔵庫や製氷機まである。
ここで飲み物でも飲みながら談話するという感じなのだろう。
他にも高そうな壺や絵画が飾ってあった。
「それでさっきの話の続きなんだけど...」
光織さんが切り出した。
「お嬢様の碓氷さんへの気持ち...にはなんとなく気づいてるよね?」
私は頷いたが、美月さんは「そうだったの?」という表情になる。
「だよね。結構露骨だし...
だから私も、泊まるとしたら碓氷さん位かなって思ってたんだ...そしたら...」
「優奈さんや華菜さんもお泊まりする事になった...」
私が光織さんの言葉を続けると、光織さんが頷いた。
「...まあ、でもそれだけだったら、カモフラージュで誘ったんじゃないかって思うよね。
ご主人様───忠徳さんは娘に甘いけど、そういう恋愛関係については厳しいところあるから。
...でもね、噂によると、どうもあの二人───優奈ちゃんと華菜ちゃんは忠徳さんの指示で呼ばれた...みたいなんだよね」
光織さんの声のトーンが下がる。
「忠徳さんが、お二人の事をご存知だったのって、麗華さんから話を聞いていたから...とかですか?」
私は質問した。
「...ううん、お嬢様はそういう事、あんまり話したがらないから。
私、実は日神美家に仕える様になってから日が浅いから、詳しくは知らないんだけど、確か、優奈ちゃんのお父さんは忠徳さんと仕事上で交流があって、やっぱり何処かの社長。
華菜ちゃんの方は...良く知らないんだけど、聞いた話だと日神美系列の中小企業でお父さんが働いてた...みたいだね。数年前に倒産しちゃったらしいけど」
少しずつ、見えてきた気がする。
「麗華さんにご兄弟はいらっしゃるんですか?」
「ううん、一人っ子だよ。
...あっ、そういえば...
昔、忠徳さんに浮いた噂があったりした事もあったって、もう使用人を辞めちゃった先輩から聞いた事はあるけど......」
...ああ、なるほどね。
完璧にではないが、ここに来てから感じていた、様々な違和感が氷解していくのが分かる。
「光織さん、忠徳さんの私室の近くに、誰も使ってない部屋ってあります?」
「ん~、誰も寝泊まりしてないっていう意味では、あるにはあるんだけど、セキュリティ上大切な所だから関係者以外立ち入り禁止...て感じかな。
...どうして?」
「私の思い過ごしだったら良いんですけど、もしそうじゃなかったら、今夜辺り事件が起こるんじゃないかなって。
だから出来れば今日明日位は、張り込んでた方が良いかなって思ったんです。」
正直な所、現段階では何も起こらないという可能性も十分にあるのだが、私は率直に言った。
光織さんと美月さんが驚いた表情をする。
「...えっ、華凛ちゃん、それって...どういう事…?」
光織さんの質問に答える為、私はここまでの情報から導かれた推論を二人に話した。
「...なるほど...言われてみれば確かにそうかも!凄いね華凛ちゃん!
でも、華凛ちゃんって本当に普通の高校生なの?」
「あー、実は...」
私の代わりに美月さんが、警察手帳を見せつつ説明してくれた。
「えぇ~!刑事さんと探偵さんだったの~!?
あっ...でもそう言われたら納得だわ...
うん、分かった!
神守さんも事情を知ったら許してくれるだろうし、良いよ中に入っても!
...あっ、これ鍵ね!」
そう言って、光織さんがポケットから鍵を取り出し私に手渡してくれた。
「あっ...鍵と言えばこっちも...」
そう言って、光織さんが私達にカードキーを手渡す。
「お姉ちゃんの分は、後で私が渡しておきます」
「ありがとー!
それにしても、刑事の上に大スターなんて、美月さんカッコいい!
私、ずっと推し続けます!!」
…えっ?なんでそうなるの??
「ははは、これは困ったな...
また可愛いファンが一人増えてしまった...
しかしこれも星の導き......
私を推しにした事、絶対に後悔させないよ...」
うわ~、なんか成りきっちゃってるし!
「キャー、ミツキサーン!!」
えっ?えっ?こんなんで良いの?
ツッコミ不在の状態に、物凄くモヤモヤする...
やっぱり前にもあったな、こんな事...
「今日はお話を聞かせて下さって、ありがとうございました!」
気を取り直して、私は光織さんにお礼を言った。
「ふふ、どういたしまして!
もし本当に事件が起こって解決出来たら、私が事件解決の功労者って事にしてね!」
ちゃっかりしてるなぁ。
なんか光織さんらしくて良いけど。
「あはは!はい、分かりました!」
私の言葉に光織さんが喜んだ...が、何処かソワソワしている。
...もっ、もしかして...
「...あっ...サイン...だったね...何処に書けば良いんだい?」
美月さんが、これ以上ない位のキメ顔でそう言う。
「キャー、覚えて下さってて光栄です!
実はこういう事もあろうかと、色紙を持って来てるんです!」
と、光織さんが背中から色紙を突然取り出す。
えぇ!ずっと背中に入れてたの!?
...あ~、それもメイドさんの嗜み...って、んな訳あるか!!
私が一人ボケツッコミをしてる内に、美月さんがなんとも言えない、独特なサインを色紙に書く。
流石にあれは......
「すっ、すごい...!サインのセンスも抜群なんですね、美月さん!」
目を輝かせた光織さんにそう言われ、美月さんが嬉しさを堪えつつも、髪をかき上げ澄まし顔になる。
......。
その後は私が二人の記念写真を撮影し、満足顔の光織さんと別れ、再び遊戯室へと戻った。




