寛大な歓待
「そっちの二人...華凛ちゃんと華澄ちゃん...だっけ?...は高校生?
制服可愛いね!
私、姫咲優奈!優奈って呼んでね」
髪型は色を明るめのブラウンに染め、毛先を内巻きにしたレイヤーボブ。
服装は、コットン製でアイボリー色のカーディガンの下に、ポリエステル製でくすみアプリコット色のドレープブラウスを着て、セージグリーンのウール混ロングスカートという出で立ちの女性が話しかけて来た。
広めの袖口はカフスで留めてある。
因みに私達の制服は、上が白いブラウスで、下が黒のスカート。
そして、学年ごとにリボンタイの色が決まっており、私は赤い、お姉ちゃんは青い細めのリボンタイを結んでいる。
「はい。私は高校二年で、妹は高校一年です」
お姉ちゃんが答える。
「やっぱりー!
...あっ、そうだ!
華澄ちゃんってチェスとか出来る?」
優奈さんがお姉ちゃんにそう聞いた時、陽介さんと、向こうに座っていた若い男性──サイドを刈り上げた短めの髪に、上はコットンの白シャツ、下はコットン混の黒いチノパン──の体がビクッとなる。
それを見ていた、優奈さんの隣の席に座っていた女性が、何かを察した様な表情をした。
...なんか、トラウマでもあるのかな...?
「はい...ルール等は存じ上げてますが...」
お姉ちゃんが遠慮がちに答える。
実際、お姉ちゃんがチェスを含めボードゲームをやっている所は殆んど見た事がない。
私もルール位は知っているが、正直苦手だ。リアルタイムシミュレーション
とかの方が、どうも私の性に合っている気がする。
「じゃあさ、じゃあさ!
夕食の後、遊戯室で私と対戦しない?」
優奈さんがキラキラした瞳で、お姉ちゃんを誘って来た。
「どっ...どうしよう、華凛ちゃん...?」
テレパシーで、お姉ちゃんが私に聞いて来た。
「良いじゃん!私も遊戯室とか興味あるし、一緒に行こうよ!」
遊戯室って、どんな所なんだろ?
流石に、前のミステリーツアーの時みたいな感じではないだろうけど、その代わりレアなボードゲームとかあるかも...!
少しだけ胸がときめいた。
「は、はい...お手柔らかにお願いします...」
お姉ちゃんが、ちょっとだけ不安そうに答える。
...といっても、多分お姉ちゃんだったら大丈夫だろう。
「えっ、ほんとに!?やったー!
...あっ、こっちにいるのは、私の大学の先輩で、華菜先輩だよ!」
優奈さんがはしゃぎつつ、隣の女性を紹介してくれた。
「つ、月宮華菜です...よろしくお願いします...」
突然、話を振られた様な形になりながらも、月宮さんが自己紹介しながら会釈する。
「「よろしくお願いします」」
「よろしくー!」
私達三人は同時に挨拶した。
その後は、陽介さんと美月さんを中心に会話が弾み、隣に座っていた二人も、楽しそうに話を聞いていた...が、一方は時より何か深刻そうな表情になり、もう一方は巧みに隠してはいるが、たまに相手を探る様な目付きになる事がある。
ふーん、なるほど、ね...
これはやっぱり、遊戯室に行くルートで正解だった...かな。
状況が状況だから、何となくゲームの世界に迷いこんだ様な気分になっていた。
陽介さんについては、一見テンションとかが面白くて、空気が読めない感じもあるけど、絶対にラインは越えて来ない辺り、普段からだいぶ気を遣う方なのではないだろうか。
今は恐らく、隣に座る華菜さんを元気づけようとして、道化を演じている部分もある...気がする。
...この三人と比べると、あっちの方に座っている麗華さんや若い男性は、分かりやすい性格をしている気がする。
麗華さんがその男性と会話する時の表情や髪を触る仕草から、男性に気があるのが分かる。
それに対し、私と同じ側に座ってるから、黒いローファーの革靴を履いた男性の足がハッキリ見えるのだが、表情には出さないものの、その爪先は麗華さんに向いておらず、どちらかと言えば、優奈さんの方に向いている。
チェスの話が出てきた辺りから、特に顕著だったので、先程の反応から推察するに、夕食前に優奈さんとチェスの対局をして惨敗した為、優奈さんがチェスの話をする度に気になって仕方ない...みたいな感じだろうか。
なんにしても、一見クールで読みづらい印象を受けるが、その実分かりやすい人なんじゃないかなと思う。




