月華と日華
「...着きました。あちらが日神美家の別荘でございます」
...うっわ、でっか!
駐車場も結構広いし、これが別荘って、やっぱ凄いお金持ちなんだな~。
美月さんの目が輝いている。
ああ、あれは、色々期待してる目だわ......
神守さんが大きな両開きの玄関扉を開ける。
目の前には立派な絵が飾っており、少し離れて左右に大きな両開きの扉があり、左の方は開放されていた。
神守さんの後に続いて、私達は左の方へと向かう。
大きくて立派な部屋に、これまた大きくて立派なテーブルが置いてある。
正面には大きな窓があり、室内の明かりに照らされてほんのり見える中庭らしきものが、とても綺麗だった。
中には、立って待機していたメイドさんを含め7人いて、当然の事ながら私達は注目を集める。
...ちょっ、ちょっと恥ずかしい......
ニュースで見た事のある顔が、奥の方に座っていた。あれが忠徳さんか。
忠徳さんは、私達を見て不思議そうな顔をする。
神守さんは忠徳さんに耳打ちした後、私達の事を紹介した。
「...それは災難でしたね...
どうぞ、自分の家の様に寛いで下さい。
食事も今用意させましょう」
そう言って、忠徳さんはメイドさんに目配せし、メイドさんは左隣の部屋へと消えていった。
恐らくあそこが厨房なのだろう。
なんにしても助かった~!
しかも料理まで御馳走になれるなんて!
さっきから美味しそうな匂いが漂ってて、テンション上がりっぱなしなんだよね♪
そんな私の様子を見て、お姉ちゃんがニコニコする。
「皆さん、どうやらこの屋敷と国道を繋ぐ唯一の道が、土砂崩れで塞がれてしまったとの事です。
...ですが、ご安心下さい。
今、当家の執事に、外部と連絡をとらせ、復旧を急がせる手筈なので、開通するまで、長くても三日といった所でしょう」
忠徳さんが状況を説明した。
...えっ、あれを三日位で復旧できちゃうの?
「それまでの間の食糧等は問題なく確保出来ておりますので、その点につきましてはご心配なさらず、ゆっくりお過ごしいただきたい」
私達みたいな予想外の客が来ても良いように、予め準備してたって事か、或いはパーティーが早めにお開きになって、少し余剰分があるって感じかな。
それに雨になるって予報で言ってたから、こうなる事を元々想定していたのかもしれない。
「ありがとうございます!お世話になります!
私は竜華美月と申します!
こっちは月代華凛ちゃんと華澄ちゃん」
「華澄です。
突然の訪問にも関わらず、快く受け入れて下さり、誠にありがとうございます」
「華凛です!
復旧までの間、お世話になります!」
私達は一礼する。
「これはご丁寧に。
私は日神美忠徳、あれは娘の麗華です」
忠徳さんが紹介すると、カシミア混の白ニットに、ウール混のベージュプリーツスカートという出で立ちの、綺麗めな女性が軽く会釈する。
年齢は20歳そこそこ...かな。
表情から察するに、私達の事をあまり快くは思っていないのだろう。
まあ、いきなりの珍客な訳だし、それも仕方ないと思う。
「どうぞ、貴方達も席にお着き下さい」
忠徳さんに丁重に促され、私達は、固まって座っている男女三人組の斜め向かい側に座った。
「こんばんはー!
さっき叔父さんと話してるのが聞こえてたけど、災難だったね~。
...あ、僕は日神美陽介だよ。よろしくね!」
ナチュラルブラウンの無造作な髪型で、ポリエステル混の白いパーカーに、コットン製でベージュ色のカーゴパンツといったラフな格好の男性が、気さくに話しかけて来た。
年齢は20代半ばから後半といった所か。
話を聞く感じでは、忠徳さんの甥みたいだ。
「あはは...ええ、ほんとに...
車がエンストした上に、土砂崩れですからね。
いよいよ私の命運もこれまでか...なんて、真剣に思っちゃいましたよ~」
自分の命が風前の灯火だなんて雰囲気とは、全く無縁だった美月さんが笑いながら話す。
というか、車がエンストしたのは、主に自称走り屋の美月さんのせいだった気が......
「あー、分かるよ、そういう気持ち!
いや~、美月ちゃんとは気が合うなあ!」
さっきの自己紹介を聞いていたのだろう。
...それにしても、美月ちゃんって...
もしかして年下か、同い年位に思ってるんじゃ......
ちゃん付けされた美月さんは、めちゃめちゃ嬉しそうだ。
...ああ、なんか前もあったな、こういうの......




