罪の証
目が覚めると、もう夕方だった。
まだ夕食まで時間があるが、疲れやだるさが残っていたので、暫くスマホで小説でも読みながら、ぼーっとする事にした。
...だが、全然文章が頭に入って来ない。
頭に色々な思いが交錯し、そちらにばかり気が取られてしまうのだ。
...参ったな......
しょうがないから、動画をぼーっと眺める事にした。
...ほんとに、この三日間色んな事があった。
上手く行けば明日の夜中から、明後日の早朝までには、土砂の撤去作業が終わり、警察が到着すると、さっき朝食で神守さんから聞いた。
それまでの辛抱、か......
色んな事を考えている内に、あっという間に時間は過ぎ、いつの間にか18時50分になっていた。
...そろそろ行くか...
多分もう、陽介さんが食堂で首を長くして待っている事だろう。
想像してたら、ちょっと面白くて笑ってしまった。
空気を読んでいない様で、実際はしっかり読んでて...ほんと良い人だよな。
帰る時に、改めてお礼しよう。
そんな事を考えつつ、私は部屋を出て食堂へ向かった。
...あれ?
食堂に着いたが、陽介さんの姿が見えない。
...疲れて、眠ってるのかな...?
「あれー?
今日は居ないんですね、陽介さん」
優奈ちゃんが来て、そのすぐ後に碓氷さんも来た。
それぞれいつも通りの位置に座った為、席が沢山空いてるのに、今日も優奈ちゃんは私の隣だ。
「うん...多分、色々あって疲れて、まだ寝てるんじゃないかな」
「あ~、確かに......
陽介さんの身内が立て続けですもんね...」
優奈ちゃんが、しょんぼりする。
「...まあ、でも、お腹は空くだろうし、陽介さんの事だから、その内来るんじゃないかな!」
私は明るく言った。
「そうですね!
...ふふ、また相変わらずのテンションなんでしょうねー」
優奈ちゃんが楽しく笑う。
「...あはは!たぶんね!」
私と優奈ちゃんは楽しい気分で夕食を食べ始める。
碓氷さんは色々考えているみたいだったけど、食事のペースは普通だった。
───私達が夕食を食べ終わる頃になっても、陽介さんは来なかった。
...流石に心配だな......
「...ね、ねえ、先輩。
さ、流石におかしくないですか...?」
優奈ちゃんが不安そうな顔をする。
碓氷さんも事の異常さを察する。
「ちょ...ちょっと、呼んで来てみる!」
私は居ても立っても居られなくなり、食堂を飛び出す。
「わっ、私も行きますっ!」
優奈ちゃんが後ろからついて来た。
───陽介さんの部屋の前に着いた。
「陽介さん!もう夕食の時間、とっくに過ぎちゃいましたよ!」
私はドンドンと扉を叩くが、全く反応が無い。
扉を開けようとしたが、鍵が掛かっている。
...ど、どうしよう...!
周りを見渡すと、いつの間にか碓氷さんが、神守さんと星井さんを連れて来ていた。
「神守さん...カードキーの再発行、お願い出来ますか?」
状況を察した碓氷さんが、神守さんに頼んだ。
「...はっ、はい!只今!」
神守さんが星井さんを連れ、急いで予備室へ向かった。
と同時に、碓氷さんも何処かへ走っていった。
...数分後、神守さん達が戻って来る。
この間も、陽介さんに呼び掛けたが、全く反応は無かった。
神守さんが再発行したカードキーを挿し込み、扉が開く。
神守さんが電気をつけた。
...えっ?
陽介さんがベッドの方へ頭を向けて、俯せに倒れている。
後頭部には...血がベットリついていた。
(一マスは50cm)
...どう...して......?
私が立ち尽くしていると、いつものゴム手袋を着けた碓氷さんが、陽介さんに触れる。
陽介さんの顔は赤黒く変色していた。
まるで、最初の事件の忠徳さんの様に。
...どうして......陽介...さん、が...?
「死因は、忠徳氏と同じ頸部圧迫による窒息死。
硬直もまだ始まってませんし、死斑も殆んど出てない。それに直腸温から考えても、死後1~2時間といった所ではないでしょうか」
碓氷さんが冷静に検死する。
...もしかして、日神美の血が流れてるから...なの...?
「もう嫌っ!!私、死にたくない!!」
星井さんがパニックになり、部屋を飛び出す。
「待ちなさい!星井君!」
神守さんが星井さんを追いかける。
人数が少なくなればなるほど、嫌でも思ってしまうのだ。
...こいつが、殺したんじゃないか、と。
私は無言でその場を立ち去ろうとする。
「...えっ?せ、先輩まで何処に行くんですかっ!?」
優奈ちゃんが泣きそうな顔で私にしがみつく。
「...離してよ!分からないの!?
私達の内の誰かが犯人なんだよ!?
もう誰とも、仲良くなんて出来る訳ないじゃない!!」
私はしがみつく優奈ちゃんを突き飛ばす。
「...きゃっ!」
優奈ちゃんが尻餅をつき、そのまま泣きじゃくる。
...多少、罪悪感を覚えたが、私はそのまま陽介さんの部屋を出る。
...ん?ドアノブ側の扉の下の絨毯が、ちょっと濡れてる...?
...いや、そんな事はどうでも良いか。
今回もわざわざ"密室"にしていたのだ。
やはり、この状況を楽しんでいる異常者が私達の中にいるのはまちがいないだろう。
私はさっさと自分の部屋に引き返す。
...しまった、鍵を掛け忘れていた。
まさかとは思うけど、星井さんか神守さんが潜んでいないとも限らない。
私は部屋に入り、慎重に安全を確認する。
...特に変わった所は無かった。
私はホッと一息吐きつつ、部屋の鍵をしっかり閉める。
...よし、これで良い。
ハッキリ言って、ここまでしても星井さんと神守さんが共犯なら、どうしようも無いのだが、実際に彼らが共犯で、しかも密室に拘りのある異常者なら、人数が少なくなって警戒される前に、料理に睡眠薬を混ぜるなどして、一気にケリをつけに来た筈だ。
しかし、そうはならなかった訳だから、少なくとも共犯ではないのではないか。
...いや、それも私の希望的観測に過ぎないのかもしれないけど......
異常な事が続き過ぎて、思考が麻痺して来ている。
...とにかく今は横になろう。
暗闇が怖くて、電気が消せなかった...けど...
...あれ、なんか凄く眠い......
神経が高ぶって寝れそうにないって思ってたのに...
どう...して......?
私は深い眠りに落ちていった......




