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密室殺人に対する考察  作者: 守屋亭 混沌
第一部:二日目
12/35

完全なる沈黙

「きゃああああ!!お父様ぁぁぁ!!」


麗華が絶叫する。


入り口から入って左前方、机の横に、左側本棚へ頭部を向け、仰向けに倒れている忠徳さんの姿が見えた。


挿絵(By みてみん)

(一マス50cm)


目はかっと見開かれ、顔は赤黒く変色している。


死んでいる...誰の目から見ても明らかに。


麗華が忠徳さんに駆け寄ろうとした時


「触らないで。辛いでしょうけど、道が復旧して警察が来るまでは、このままの方が良い」


と、碓氷さんが静かに告げた。


この状況でも、極めて冷静に対応する碓氷さんは凄いなと思う。


「ど...どういうこと...!?

もしかして殺人っていうこと!?」


麗華が半狂乱になって金切り声をあげる。


「...検死しないと分かりませんが...恐らくは......

ただ、いずれにしても変死である事には間違いありませんから、警察に任せるしかないんです...」


「誰よ!!誰が...誰がお父様を!!

殺してやる...殺してやる...絶対に殺してやる!!」


呪いの様に殺意を吐き続けながら、麗華が暴れ出した。


「おっ...お止め下さい、お嬢様...!」

「止めるんだ麗華ちゃん!!」


神守さんと、陽介さんが麗華を抑えにかかる。


「離せ!!離しなさいよ!!絶対に許さない!!」


暴れる麗華を、二人がかりでなんとか抑えつけた。


自分の父親が殺されたのだ。

麗華じゃなくても、ああなるだろう。


...思考は信じられないほどクリアなのに、脚が恐怖で震えていた。


「ねえ、碓氷さん。簡単にで良いから、その検死って今出来ないんですかー?

だって、殺人だとしたら、道があんな状態なんですし、この中の誰かが犯人なのは間違いないって事でしょ?

取りあえず今警察に連絡するにしても、来るのは早くて明後日の夜位ですよねぇ。

その間に全滅...何て事になりかねないんじゃ......」


まるで殺人鬼がこの中にいるかの様に、優奈ちゃんは話す。


「そ、それは...」


ここで碓氷さんが少し動揺する。


「雨は少しずつ止んで来てはいるけど、仮に外部犯だったら、濡れた痕跡があちこちに残ってる筈だし、殺人だとしたら...それはやっぱり僕達の中にいるって事になる...よね。

その犯人が、なんでこんな事したのかとか...

...その...まだ犯行は続くのかとか、僕達でやれる範囲で調べていかないと、最悪の事態になりかねないんじゃないかな。

...だから...碓氷くん、僕からも頼むよ」


自身の見解を述べつつ、陽介さんが碓氷さんに頼んだ。


「...分かり...ました...

ですが法医学については、基本的な事しか存じ上げないので、過度な期待はなさらないで下さいね」


碓氷さんがそう言うと、陽介さんはゆっくり頷いた。


碓氷さんの要請で、ゴム手袋と調理用の温度計を持って来た星井さんから、それらを受け取り、碓氷さんが検死を始めた。


因みに体温計では、遺体の体温が低くなり過ぎていたりすると、測定出来ない可能性があるらしい。


「硬直が肩にまで及んでいて、死斑も押すと消える...直腸温は32度...そうですね...死後5~6時間...幅を持たせて4~8時間といった所でしょうか」


碓氷さんが冷静に分析する。


麗華はもう暴れるのを止め、今はひたすら泣きじゃくっていた。


「死後4~8時間というと、今は朝の8時位だから、夜中の午前0時から4時までの間って事か。

う~ん、その時間帯は誰にもアリバイがないか...」


「あ~、その時間だったら、私、遊戯室で碓氷さんとチェスやってましたよ~。

私が連勝して、碓氷さんが何度も挑んで来たから、朝方までずっとやってたんです。

終わったのは...確か、午前4時過ぎ...でしたよね、碓氷さん?」


優奈ちゃんがそういうと、先程まで冷静だった碓氷さんがビクッとなり


「...は、はい、そ、そうでしたね確か...」


と暗い表情で、しどろもどろになりながら答えた。


...よっぽどトラウマなんだろうな......


「...ああ、それは...」


災難だったね、という一言を、恐らく陽介さんは呑み込んだ。


「...うーん、でもそっか...

二人は今日初めて会ってる訳だし、そんな二人が協力して...なんて考えにくいよね。

犯行の時間、二人には確かなアリバイがあったっていう事で良いんじゃないかな?」


陽介さんの言葉に、誰も反対しなかった。


「誰か、事件について、何か気付いた事とかあるかな?」


「...そういえば......」


泣きじゃくり、少し冷静になったのか、麗華が話し始める。


「昨夜、書斎の方で誰かが思いっ切り扉を閉めた音が聞こえたわ。

普段は聞こえないから、余程強く閉めたんじゃないかって思ったの」


「...それは何時位だったか、覚えてるかい?」


陽介さんの問いに、麗華は暫く考えたが


「...分からない。時間を確認せず、そのまますぐに寝てしまったから...」


と残念そうに答えた。


「それってもしかして、犯人だったんですかねぇ?

じゃあ、午前0時から4までの間ってこと?

先輩、外はまだ真っ暗でした?」


優奈ちゃんが麗華に質問する。


山奥だし一概には言えないだろうけど、今の時期だったら、朝の5時辺りから、少しずつ明るくなるんじゃないだろうか。


「...それが...私の部屋のカーテンは完全遮光で、横からも光が漏れない様に、工夫されてるから、明るかったかどうか覚えてないの。

感覚的には早朝の様な気もしたけれど......」


「そうですか~、ザンネン......」


麗華の答えに、優奈ちゃんが落ち込む。


「残念...ですって......?」


やっと落ち着いて来つつあった麗華が、再び暴れだしそうな空気になっていった。


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