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召喚士が召喚した召喚士 ~基礎から始める召喚マネジメント講座~  作者: KEI
第14話 先生が書き足した名前

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(六)三か月契約は終わらない

◆ 六 学校へ戻る


 ギルドに戻った時には、すでに日が傾いていた。


 報告書は、増えた。


 想像していたよりも、ずっと増えた。


 赤竜の再契約書。


 竜籍登録記録。


 竜爪印登録証明。


 焼損事故報告書兼熱害再発防止確認書。


 財宝移送予定表。


 相談先一覧。


 リオルは、机の上に積まれていく書類を見て、途中から数えるのをやめた。


「事件って、終わったあとも大変なんですね」


「終わったから大変なのです」


 ミレイユは当然のように言った。


「終わっていない事件は、まだ書類にできません」


「それは、そうですけど」


 カイルは王国側の確認印を押し、ミレイユはギルド側の記録をまとめ、メルセナは必要な箇所だけを静かに確認していった。


 ヴァルグは、赤竜ではなくヴァルグとして記録された。


 財宝守護者ではなく、現代制度上の一個体として。


 そのことが、書類の上で少しずつ形になっていく。


 すべてが片づいた頃、リオルたちは学校へ戻った。


 校舎はいつも通りだった。


 中庭には生徒たちの声があり、廊下には授業終わりの足音があり、掲示板には次の実技講習の予定が貼られている。


 赤竜も、古代契約も、竜爪印も、ここには似合わなかった。


 だからこそ、帰ってきたのだと思えた。


 リオルは、長く息を吐いた。


「これで、本当に終わったんですね」


「赤竜事件については、ひとまず」


 メルセナが答えた。


「ひとまず、ですか」


「はい。財宝移送、契約更新管理、村の復旧支援、ヴァルグの初回存在確認などは残っています」


「全然終わってない気がしてきました」


「ですが、あなたの関与が必要な部分は、当面ありません」


 リオルは、その言葉に少しだけ安心した。


 鳥百羽。


 ハツカネズミ二百体。


 赤竜との交渉。


 竜の印鑑証明。


 自分には大きすぎる場所ばかりだった。


 けれど、相談先一覧には、自分の名前が書かれている。


 メルセナが書き足し、ヴァルグが同意した名前。


 それを思い出すと、少しだけ背筋が伸びた。


「じゃあ、僕は普通の学校生活に戻れるんですね」


「いいえ」


 メルセナは即答した。


 リオルは足を止めた。


「いいえ?」


「忘れています」


「何をですか」


「私を召喚した三か月コンサルタント契約が残っています」


 リオルは、ゆっくりと瞬きをした。


「……そうでした」


「はい。赤竜事件は、契約期間中に発生した追加案件です」


「追加案件」


「本来の目的は、あなたの召喚能力の調査、訓練、運用方針の策定です」


 メルセナは、いつも通りの無表情で言った。


「明日から再開します」


「明日から」


「はい」


 リオルは、校舎の窓に映る自分を見る。


 少し疲れている。


 少しだけ、前より背筋が伸びている。


 そして、少しだけ嫌な予感がしている。


「先生」


「はい」


「普通の訓練ですよね」


「普通です」


 リオルは安心しかけた。


 メルセナは続ける。


「私の基準では」


「それ、普通じゃないやつです」


「慣れてください」


 リオルは、もう一度深く息を吐いた。


 赤竜事件は終わった。


 ヴァルグは新しい契約へ移った。


 村の復旧も、財宝の移送も、王国とギルドが進めていく。


 リオルの名前は、相談先一覧に残った。


 そして、三か月コンサルタント契約も、まだ残っていた。


 どうやら、普通の学校生活に戻るには、まだ少し早いらしい。


 メルセナは廊下を歩き出す。


 リオルは、その少し後ろを追った。


 今度はもう、自分が完全な場違いだとは思わなかった。


 ただし、明日の訓練から逃げられるとも思わなかった。



作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/summoning-management-course-basic-top/

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