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召喚士が召喚した召喚士 ~基礎から始める召喚マネジメント講座~  作者: KEI
第14話 先生が書き足した名前

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(二)守るものではなく、残すもの

◆ 二 守るものではなく、残すもの


「財宝の扱いを確認します」


 メルセナは、すぐに実務へ戻った。


 リオルは少しだけ驚いたが、それがメルセナなのだとも思った。


 大事な感情を受け取った後でも、彼女は手続きを止めない。


 むしろ、止めないことが大事なのだ。


「旧財宝守護契約における財宝一式は、新契約ではあなた一体の守護対象から外します」


 赤竜は静かに聞いていた。


「では、財宝はどうする」


「北の山へ移します。管理責任は人間側にも置きます」


「我に守らせるのではないのか」


「はい。守るためではありません」


 リオルは、魔道具を見ながら言った。


「思い出として、近くに置くんですね」


 赤竜がこちらを見る。


「思い出として」


「はい。守らなきゃいけないものじゃなくて、大事にしていいものとして」


 赤竜は黙った。


 メルセナが続ける。


「財宝の大半は、王国、召喚士ギルド、地方防衛会議の管理下で移送・保管します。あなたの近くに置くとしても、契約上の守護責任はあなた一体に負わせません」


「盗まれれば」


「あなた一体の不履行にはしません」


 赤竜の喉が、低く鳴った。


「これがあると、また盗まれれば我は狂うかもしれぬ」


 誰もすぐには答えなかった。


 それは脅しではなかった。


 赤竜自身の、正確な自己申告だった。


 リオルは、布の上の魔道具を見た。


「だったら、この一個だけを大事にしたらいいと思います」


 赤竜の視線が、リオルへ戻る。


「一個だけ」


「はい。財宝全部じゃなくて。今回盗まれた、この魔道具だけ」


 リオルは、慎重に続けた。


「これなら、財宝全部を背負うよりは、思い出として持てるんじゃないですか」


 赤竜は、魔道具を見る。


 翼の意匠。


 火に変質した、風の道具。


「たった、これだけか」


「はい」


「千年以上守ってきて、残すものが、たったこれだけか」


 リオルは、答えに詰まった。


 けれど、嘘は言えなかった。


「でも、全部を背負うよりは」


 赤竜は、魔道具を見つめ続けた。


 長い沈黙の後、低く言う。


「しかし、十分な気がする」


 リオルは、胸の奥が少しだけ緩むのを感じた。


 メルセナが確認する。


「それは守護対象ではありません」


「分かっている」


「契約上の責任からは外します」


「分かっている。これは、契約ではない」


 赤竜は、魔道具を見たまま言った。


「思い出だ」


 その言葉を聞いた時、リオルはようやく分かった気がした。


 役割を終えることは、思い出を捨てることではない。


 守らなくても、大事にしていい。


 赤竜は、その違いを、今ようやく受け取ろうとしている。



※第14話「先生が書き足した名前」は全六回です。

続きます。

作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/summoning-management-course-basic-top/

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