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召喚士が召喚した召喚士 ~基礎から始める召喚マネジメント講座~  作者: KEI
第13話 竜の印鑑証明

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(五)旧財宝守護契約の読み替え

◆ 五 旧財宝守護契約の読み替え


「次に、旧財宝守護契約の読み替え方針です」


 メルセナが言った。


 赤竜は、登録名にまだ慣れない様子のまま、低く答える。


「旧契約を戻すのではないのか」


「勧めません」


 メルセナは明確に言った。


 赤竜の瞳が細くなる。


「なぜだ」


「あなた一体に責任が集中しすぎています」


「我は赤竜だ」


「はい。強い一体です」


 メルセナは頷く。


「だからこそ、何でも背負わせてはいけません」


 リオルは思わず聞いた。


「強いから、任せるんじゃなくて?」


「強いから任せる、を続けると、誰も確認しなくなります」


 メルセナは静かに言った。


「契約も、役割も、負担も、すべて曖昧になる。今回の問題は、そこから起きています」


 赤竜は黙った。


 広間の熱が、静かに揺れる。


「旧契約には問題が多すぎます」


 ミレイユが記録板を見ながら読み上げる。


「契約相手不在。契約期限不明。解除条件不明。守護対象範囲不明。盗難時の扱い不明。回収・返還時の扱い不明。腐食・風化時の扱い不明。財宝の移動可否不明。守護者の安全と意思に関する条項なし。責任集中」


 リオルは、聞いているだけで疲れてきた。


「問題だらけですね」


「千年以上前の契約ですので」


 ミレイユは淡々としている。


「形式が残っているだけでも、むしろ貴重です」


 赤竜が低く言った。


「だが、我は守ってきた」


「はい」


 メルセナは即座に認めた。


「あなたは守ってきました。だからこそ、その守護を今後も同じ形で続けるべきではありません」


「なぜだ」


「また、あなた一体が苦しむからです」


 赤竜は沈黙した。


 リオルは、メルセナを見た。


 その言い方は、責めるものではなかった。


 むしろ、赤竜の真面目さをそのまま受け取ったうえで、同じ構造に戻さないと言っている。


「新契約案では、財宝守護をあなた一体の責任にしません」


 メルセナは続けた。


「財宝の保管、移動、管理は、人間側の制度も含めて扱います。必要なら王国、召喚士ギルド、地方防衛会議で共同管理します」


「我は守護者でなくなるのか」


「現時点では、そこまでは決めません」


 メルセナは答えた。


「今決めるのは、旧契約をそのまま戻さないという方針です。新しい役割をどう定義するかは、最終意思確認の後に詰めます」


 赤竜は低く唸った。


「つまり、今は契約を結ぶのではなく、結び直すための形を作っているのか」


「はい。再契約の前段階です」


 赤竜は低く唸った。


「では、我は何をする」


「候補を出します」


 ミレイユが別紙を出した。


 リオルは少しだけ怖くなった。


 また書類が増えた。


「第一に、人間を襲わないこと」


 メルセナが言う。


「ただし、これは一方的な制限ではありません。人間側も、あなたの領域を不用意に侵さないことを義務とします」


「当然だ」


 赤竜が言った。


「第二に、財宝守護の限定解除、または再定義。財宝すべてをあなた一体が守る形にはしません」


「……」


「第三に、月に一度、北の山脈周辺を散歩する程度の存在確認」


 リオルは瞬いた。


「散歩」


 赤竜も低く繰り返した。


「散歩」


「はい」


 メルセナは真面目だった。


「あなたが生存し、暴走しておらず、契約状態にあることを確認するためです」


 カイルが補足する。


「結果的には、北方への存在アピールにもなります。帝国や周辺勢力への抑止力として機能する可能性があります」


 メルセナはすぐに言った。


「ただし、それを契約目的にはしません」


 赤竜の瞳が動く。


「国防を我に背負わせぬということか」


「はい」


 メルセナは言った。


「結果的に抑止力になることはあります。ですが、契約上の役割として国防を背負わせません」


「なぜだ」


「強い一体に全部背負わせないためです」


 その言葉に、リオルは少しだけ胸の奥が温かくなった。


 メルセナは何度も同じことを言っている。


 強いから任せるのではない。


 強いからこそ、全部を背負わせない。


 それは、赤竜に対してだけではないのかもしれない。


「休眠期はどうしますか」


 ミレイユが確認する。


「散歩義務から除外します」


 メルセナが答えた。


「休眠期まで起こせば、それは存在確認ではなく嫌がらせです」


 リオルは思わず言った。


「竜への嫌がらせ、規模が大きいですね」


「実際に危険です」


 カイルが真面目に返した。


「休眠中の赤竜を起こす任務は、私は受けたくありません」


「私も勧めません」


 メルセナが言った。


 赤竜は、少しだけ満足そうに見えた。


「休眠は必要だ」


「契約上、明記します」


 ミレイユが書く。


「月一存在確認。ただし休眠期除外。無理な起床要求禁止」


「そんな条項があるんですか」


 リオルが聞く。


「今作っています」


 ミレイユは真顔だった。


 赤竜が書類を見た。


「それはよい条項だ」


「ありがとうございます」


 ミレイユが淡々と答える。


「書け」


 赤竜は即答した。


「はい」


 ミレイユが書いた。



※第13話「竜の印鑑証明」は全六回です。

続きます。

作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/summoning-management-course-basic-top/

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