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召喚士が召喚した召喚士 ~基礎から始める召喚マネジメント講座~  作者: KEI
第13話 竜の印鑑証明

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(三)竜籍と竜爪印

◆ 三 竜籍と竜爪印


「次に、竜籍登録が必要です」


 ミレイユが言った。


「竜籍」


 赤竜が低く繰り返す。


 リオルは首を傾げた。


「竜にも戸籍みたいなものがあるんですか」


「あります」


 メルセナが答える。


「主に小型竜の運用や契約管理のためです。言葉を話せない個体も多いですが、人間の言葉をある程度理解し、物流や騎乗、竜騎士運用に関わる場合があります」


「竜騎士」


「国によって制度は違いますが、竜を契約主体、または準主体として扱う登録制度が整備されています」


 赤竜が不満そうに言った。


「我は小型ではない」


「存じております」


 ミレイユは即答した。


「ですので、備考欄が足りません」


 リオルは思わず言った。


「そこなんだ」


「はい」


 ミレイユは真剣だった。


「体格、属性、知性、契約履歴、守護対象、危険度、休眠期、活動領域、爪印規格。すべて通常の小型竜登録欄では不足します」


「備考欄では済まないのでは」


 カイルが言う。


「追加様式にします」


 ミレイユはもう別の板を出していた。


 赤竜が、少しだけ引いたように見えた。


「人間は、我を欄に入れるのか」


「欄に入らないので、欄を増やします」


 メルセナが言った。


「そういう問題なのか」


「制度上はそうです」


 赤竜は、重々しく沈黙した。


 リオルは小声で言った。


「赤竜が制度に巻き込まれてる……」


「巻き込むのではありません」


 メルセナは訂正する。


「登録します」


「より書類っぽくなりました」


 ミレイユは、淡々と次の問題を出した。


「代筆が必要です」


「我が書けばよいのか」


 赤竜が爪を少し持ち上げた。


 リオルは、その爪を見た。


 大きい。


 鋭い。


 熱を帯びている。


「紙が一瞬で燃え尽きそうです」


「実際に燃えます」


 メルセナが言った。


「紙だけで済めばよいのですが」


 ミレイユも続ける。


「筆記台ごと損傷する可能性があります」


 赤竜は、不服そうに言った。


「我の言葉を、人間が書くのか」


「読み上げ確認を行います」


 ミレイユが答える。


「異議があれば訂正できます。代筆者は私、説明者はメルセナ様、確認者はカイル様で記録します」


「なぜ分ける」


「利害関係と記録責任を分けるためです」


 赤竜はしばらく黙った。


「面倒だな」


「契約ですので」


 メルセナが言った。


 赤竜は、また少しだけ沈黙してから答えた。


「契約ならば仕方ない」


 リオルは、赤竜の攻略法が少し見えた気がした。


 契約と言えば、だいたい聞いてくれる。


 ただし、聞いてくれるだけで、納得するとは限らない。


 ミレイユはさらに言った。


「次に、竜爪印登録が必要です」


「爪を押せばよいのか」


「通常の紙には押さないでください」


 メルセナが即座に言った。


 リオルも頷く。


「紙が一瞬で燃え尽きるからですね」


「紙だけで済めばよいのですが」


 ミレイユがもう一度言った。


 カイルが、後方から重そうな板を運んできた。


 黒い金属と石を合わせたような、分厚い登録板だった。


「耐熱、耐圧、魔力保持加工済みです」


 カイルが言う。


「これでも割れた場合、王都の法務部に報告します」


「割れる前提なのですか」


 リオルが聞く。


「赤竜ですから」


 カイルは真顔だった。


 赤竜が登録板を見下ろす。


「我の爪は印になるのか」


「なります」


 メルセナは答えた。


「今後、契約上の本人確認に使います」


「爪まで登録するのか」


 赤竜は低く言った。


 リオルはぽつりと呟いた。


「竜の印鑑証明……」


「正確には、竜爪印登録証明です」


 メルセナが訂正した。


「さらに書類っぽくなった」


 ミレイユは登録板を赤竜の前に置いた。


「押印時は、熱を抑えてください」


「抑えている」


 赤竜が爪を近づける。


 登録板が、じわりと赤くなった。


 カイルが顔をしかめる。


「抑えている状態でこれか」


 リオルは小声で言う。


「鼻息で村が燃える竜ですし」


「リオル」


 メルセナがすぐに言った。


「事実ですが、今は言い方に注意してください」


 赤竜がリオルを見る。


「我も注意している」


 ミレイユが淡々と返した。


「では、さらに注意してください」


「人間の注意は細かい」


「書類も細かいです」


「そうか」


 赤竜はなぜか納得した。


 爪が登録板へ降りる。


 ぎしり、と音がした。


 登録板が赤く光り、爪の形が刻まれる。


 割れない。


 燃えない。


 ただし、部屋の温度は明らかに上がった。


 リオルは汗を拭う。


 ミレイユは登録板を確認し、頷いた。


「竜爪印、採取できました」


 赤竜は、重々しく言った。


「これで我は、書類上も我か」


「仮登録上は」


 ミレイユが答える。


「仮」


 赤竜が少しだけ嫌そうに言った。


「本登録には、もう一つ必要な項目があります」


 その場の空気が、少し変わった。



※第13話「竜の印鑑証明」は全六回です。

続きます。

作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/summoning-management-course-basic-top/

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