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召喚士が召喚した召喚士 ~基礎から始める召喚マネジメント講座~  作者: KEI
第12話 赤竜、交渉か?

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(五)村を見ていた理由

◆ 五 村を見ていた理由


 リオルは、迷った。


 聞いていいのか分からない。


 だが、聞かなければいけない気がした。


「あの」


 声が少し掠れた。


 赤竜の目がリオルへ向く。


 体が固まりそうになる。


 けれど、リオルは続けた。


「村で、人を一人一人見ていたって聞きました」


 赤竜は、しばらくリオルを見た。


「人を見ていたのではない」


「え?」


「気配を探していた」


「気配?」


「盗まれたものの魔力と精霊力だ。あれは我が守るもの。形も、色も、場所も、気配も、すべて覚えている」


 メルセナが言う。


「そこにあれば分かる」


「当然だ」


 赤竜は答えた。


「失われたものの気配を、我は知っている。人の群れの中に紛れていようと、荷の中に隠されていようと、近ければ分かる」


 リオルは、避難民の証言を思い出した。


 赤竜は人を見ていた。


 一人一人を確認していた。


 村人たちはそう言っていた。


 けれど、赤竜は人間の顔を見分けていたのではない。


 魔道具の気配を探していた。


 財宝の一つ一つを覚えていたから。


 欠けた気配を覚えていたから。


「それで、盗まれたことが分かったんだ……」


 リオルの声は小さかった。


 メルセナは、赤竜へ向き直る。


「村が燃えたのは、攻撃ですか」


 赤竜は、すぐには答えなかった。


 広間の熱が、少し揺れる。


「……我は、探していた」


「意図的に焼いたのではない」


「そうだ」


「怒りで熱が漏れた」


「人間の言い方なら、そうなるのだろう」


 リオルは、胸の奥が冷えるのを感じた。


「熱が漏れた、だけで……」


 言葉が止まる。


 村が燃えた。


 人が逃げた。


 畑も、家も、生活も焼けた。


 赤竜にとっては、攻撃ではなかった。


 探していただけ。


 怒りで熱が漏れただけ。


 鼻息が荒かった、くらいのことなのかもしれない。


 けれど、人間にとっては災害だった。


「それが赤竜です」


 メルセナが言った。


 赤竜の熱が、わずかに増す。


「我に説教か」


「いいえ」


 メルセナは即答した。


「事実確認です」


「事実」


「あなたが守護契約を果たせなかったと感じ、威厳を失ったように感じていること。そして、無関係の人間が被害を受けたこと。この二つは、同時に存在します」


 赤竜は、じっとメルセナを見た。


 その瞳には怒りがある。


 だが、それだけではない。


「事実を並べるのだな」


「はい。責めるためではなく、次に何をすべきか決めるためです」


 リオルは、メルセナの横顔を見る。


 赤竜に怯えていない。


 赤竜を責め立ててもいない。


 怒りを鎮めるために曖昧に慰めることもしていない。


 ただ、並べている。


 財宝。


 契約。


 威厳。


 村の被害。


 赤竜の意図。


 人間側の被害。


 混ぜずに、消さずに、並べている。


 それは、火事の原因調査でリオルが見たメルセナの調査と同じだった。


 分からないものを、分からないものとして置く。


 繋げる前に、分ける。


 怒りにも、それをしている。



※第12話「赤竜、交渉か?」は全六回です。

続きます。


作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/summoning-management-course-basic-top/

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