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召喚士が召喚した召喚士 ~基礎から始める召喚マネジメント講座~  作者: KEI
第12話 赤竜、交渉か?

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(四)古すぎる契約

◆ 四 古すぎる契約


 赤竜の爪が、床をわずかに押した。


 岩に細い亀裂が入る。


 それでも財宝には触れない。


 怒っていても、赤竜は守るべきものを傷つけなかった。


「あなたは契約を果たせなかったことに怒っている」


 メルセナが言った。


「そうだ」


「ですが、その契約は現在も正しく管理されていますか」


 赤竜の視線が鋭くなる。


「何?」


「契約相手は生きていますか。契約更新はされていますか。解除条件は現行制度上で確認されていますか」


 赤竜は答えない。


 広間の熱だけが揺れる。


 リオルは、初めて赤竜が黙った理由を考えた。


 答えられないのだ。


 契約はある。


 けれど、その相手はもういない。


 更新する者もいない。


 解除条件を確認する者もいない。


 それでも、赤竜は守り続けている。


 ずっと。


 あまりにも長く。


「さらに確認します」


 メルセナは続けた。


「守る対象は、何を、いつまで、どの状態で守る契約ですか」


「財宝を守る契約だ」


「腐食や風化は含みますか」


 赤竜は、わずかに沈黙した。


「……そこは、気にはなっていた」


 リオルは驚いた。


「気になっていたんですか」


 赤竜の視線がリオルへ向く。


「当然だ。長く守れば、ものは変わる。盗まれずとも、失われるものはある」


 赤竜は財宝の一部へ視線を動かした。


 古い布。


 錆びた金具。


 ひびの入った壺。


 黒ずんだ銀杯。


 守っていても、時は止まらない。


 財宝は財宝のまま、少しずつ変わる。


「元の契約では、腐食や風化は暗黙的に除外されていた可能性があります」


 メルセナが言った。


「ですが、明確ではありません」


「契約は契約だ」


「はい。だからこそ、現在の形で扱う必要があります」


「現在の形」


「契約相手がいない。契約更新がない。解除条件も曖昧。守護対象の状態変化も、期限も、除外条件も明確ではない。その状態で、あなたは古い契約に縛られ続けている」


 赤竜の熱が、一瞬だけ強くなった。


「我が勝手に縛られていると言うか」


「いいえ」


 メルセナは即座に否定した。


「あなたは守ろうとしていました。過剰なほど正確に」


 赤竜は黙った。


「だからこそ、問題はあなたの怠慢ではありません。契約そのものが、現在の扱いに耐えられないほど古く、曖昧になっている可能性があります」


 赤竜は答えなかった。


 怒りが消えたわけではない。


 だが、怒りの向け先が、ほんのわずかに揺れたように見えた。


「契約は、我が守るものだ」


 赤竜は低く言った。


「はい」


 メルセナは頷く。


「だからこそ、契約そのものを確認する必要があります」


「確認……」


「あなたを責めるためではありません。何を守り、どこまで守れば契約履行だったのかを確かめるためです」



※第12話「赤竜、交渉か?」は全六回です。

続きます。

作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/summoning-management-course-basic-top/

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