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召喚士が召喚した召喚士 ~基礎から始める召喚マネジメント講座~  作者: KEI
第11話 ハツカネズミ二百体の地図

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(五)一対一の理由

◆ 五 一対一の理由


「騎士さんを、もっと呼ばないんですか?」


 リオルは地図を見ながら尋ねた。


 大ガーディアン。


 中ガーディアン。


 小ガーディアン。


 どれも避けきれないのなら、人数は多い方が安全に思えた。


 だが、メルセナは首を横に振る。


「呼びません」


「どうしてですか?」


「ガーディアンの攻撃方法が分からないからです」


「攻撃方法」


「はい。文献から分かるのは、形状と配置の傾向だけです。遠距離攻撃を持つかもしれない。範囲攻撃を持つかもしれない。通路全体を焼く、砕く、押し潰す、あるいは音や振動で攻撃する可能性もあります」


 リオルは洞窟の奥を見る。


 暗い通路が、急に狭く感じられた。


「人数が多いと、巻き込まれる?」


「はい。下手に人数を増やせば、一度の攻撃で被害が甚大になります。洞窟内では逃げ場も限られます」


 カイルが地図を指す。


「通路の幅も問題だ。人が多ければ、回避する場所を互いに潰す」


「それもあります」


 メルセナは頷いた。


「一対一なら、被害を限定できます。さらに、今回呼ぶ騎士たちは、個人での回避能力、生存能力、判断速度が高い。集団で受けるより、一人で避け続けた方が生存確率が高い場合があります」


「一人の方が安全なこともあるんですね」


「あります。特に、相手の攻撃範囲が分からない時は」


 リオルは地図の三つの印を見る。


「一対一は、勇敢だからじゃなくて」


「安全設計です」


「人数を減らすことも、防衛なんですね」


「正確です」


 メルセナはミレイユへ頷いた。


「拠点へ接続を」


「接続済みです」


 ミレイユが通信水晶へ手をかざす。


 メルセナは短く告げた。


「三名を呼びます」


 洞窟内の少し広い場所に、三つの召喚陣が開いた。


 光が立ち上がる。


 その中から、三人の騎士が現れた。


 一人目は、細身で軽い鎧をまとった青年だった。フィン・ラザフォード。大きな剣は持たず、短い刃と細い槍を組み合わせたような武器を背負っている。立ち姿が軽い。今にも横へ消えそうだった。


 二人目は、幅のある体格の騎士だった。ガレス・ヴァルド。重い鎧を着ているが、鈍くは見えない。大きな戦槌を肩に担ぎ、洞窟の暗がりを見ても表情を変えなかった。


 三人目は、巨大な盾を持つ女性騎士だった。


 ブリギット・エインズワース。


 長身で、銀髪の細身の女性だった。背は高いが、鎧越しにも線の細さが分かる。


 その腕にある盾は、彼女の体格には少し不釣り合いに見えた。巨大な盾を持っているのに、とても守りに強い騎士には見えない。


 だが、足運びだけは奇妙なほど静かだった。


 守るために前へ出る者というより、相手が来る場所を先に知っている者に見えた。


 三人とも、移動の疲労はない。


 装備も整っている。


 呼び出された瞬間から、戦える状態だった。


 メルセナは地図を示した。


「契約内容を確認します。赤竜討伐ではありません。ガーディアン討伐でもありません。あなた方の任務は、交渉地点へ到達するための護衛、通路確保、ガーディアン対応、撤退路保持です」


 フィンが軽く肩を回す。


「倒さなくていい、と」


「はい。進路を変えさせる。足を止める。私たちが通過する時間を作る。それで十分です」


 ガレスが低く笑う。


「わかりやすい」


 ブリギットは地図を見て、静かに頷いた。


「通るための契約ですね」


「はい」


 メルセナは三つの印を指す。


「大ガーディアンは中央通路。フィン、あなたが引きつけてください」


 フィンは軽く笑った。


「嫌われるのは得意です」


「撃破ではありません。中央から外し、こちらが横切る時間を作ること」


「承知」


 次に、メルセナは分岐付近を指した。


「中ガーディアンはこの分岐です。ガレス、短時間だけ押し込んでください」


 ガレスが戦槌を持ち直す。


「砕けそうでも?」


「砕くことが目的ではありません。動線を固定し、通過時間を作ること」


「承知した。止める」


 最後に、メルセナは低い横道の入口を指す。


「小ガーディアンは足元から来ます。ブリギット、リオルと報告線を守ってください」


 ブリギットは巨大な盾を静かに構えた。


「追いかけません。待つ方が、わたくしには向いています」


「はい。小型高速型を追えば崩されます。動かし続け、選べる道を減らしてください」


「承知しました。行きたい場所へは行かせません」


 リオルはそこで理解する。


 これは、勝つための配置ではない。


 通るための配置だ。



※第11話「ハツカネズミ二百体の地図」は全六回です。

続きます。

作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/summoning-management-course-basic-top/

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