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召喚士が召喚した召喚士 ~基礎から始める召喚マネジメント講座~  作者: KEI
第11話 ハツカネズミ二百体の地図

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(三)戻って地図になる

◆ 三 戻って地図になる


「二百体を四班に分けます」


 メルセナは洞窟入口から見える左右の通路を指した。


「第一班、五十体。右通路の右壁。第二班、五十体。右通路の左壁。第三班、五十体。左通路の右壁。第四班、五十体。左通路の左壁」


 ミレイユが記録する。


「中央は使わないのですね」


 カイルが確認した。


「使いません。中央は大型ガーディアンの通路になりやすい。足音や振動が伝わりやすく、隠れる場所も少ない」


 メルセナは、足元のハツカネズミたちを見る。


「壁沿いに進ませます。壁沿いなら、隙間に逃げ込める。分岐を見つけやすい。壁の熱や振動も感じやすい」


「この子たち、地図は描けませんよ?」


 リオルが言うと、メルセナは頷いた。


「描けなくて構いません。どこで分かれたか、何がいたか、大きいか小さいか、戻れそうか危ないか。それだけ分かれば十分です」


「十分なんですか?」


「前提があります。ここは洞窟で、赤竜がいて、ガーディアンがいる。前提が正しければ、断片でも地図になります」


「断片でも」


「はい。地図を描くのはハツカネズミではありません。断片を地図にするのが、私たちの仕事です」


 メルセナはさらに条件を伝えていく。


「分かれ道があれば、同じルールで分隊を作ります。右壁担当は右壁を、左壁担当は左壁を見ます。報告は必ず元の班へ戻すこと」


 リオルは、ハツカネズミたちに言葉を柔らかくして伝える。


「右の壁を見る子。左の壁を見る子。分かれ道があったら、また右と左に分かれる。でも、少なくなりすぎたら戻ってきて」


 メルセナが補足する。


「分隊が三匹以下になったら引き返します」


「三匹以下」


「はい。単独行動は禁止。二匹行動も危険。三匹以下は、探索継続ではなく報告帰還の条件です」


「どうして三匹なんですか?」


「周囲を見る目と耳が減るからです。一匹が前を見る。一匹が後ろを見る。一匹が壁際を見る。最低でもそれが必要です」


 リオルは足元のハツカネズミを見た。


「危ないところまで行かせるんですか」


「行かせません。危険を見つけたら戻るのが任務です」


「見つけたら戻る」


「はい。死ぬまで進む索敵ではありません。戻って地図になる索敵です」


「戻ることが大事」


「戻らなければ、情報になりません」


 リオルは、胸の奥が少し温かくなるのを感じた。


 使い捨てではない。


 この子たちは、戻るために行く。


 地図になるために戻る。


 メルセナは撤退条件を読み上げた。


「強い熱。焦げた匂い。大きな足音。床の震え。壁の動き。光る目。滑らかな白いもの。赤黒いもの。動く壁のようなもの。仲間が戻らない場合は追わずに報告。赤竜の気配を感じたら全班撤退」


 リオルは一つずつ、ハツカネズミたちへ伝えた。


 小さな耳が動く。


 小さな鼻が揺れる。


 やがて、二百体のハツカネズミが、四つの流れに分かれて洞窟の壁沿いへ散っていった。


 リオルは不安で、思わず言った。


「この子たち、奥から僕に話しかけられるわけじゃないですよ」


「分かっています。遠距離念話は前提にしません」


「じゃあ、どうやって報告を?」


「戻ってもらいます。分隊から班へ。班からこちらへ。報告を段階的に戻します」


「伝言みたいに?」


「はい。ただし、誰が見た情報かを消してはいけません」


 カイルが頷く。


「報告が遅れる前提で動くわけですね」


「はい。即時性より、確実性を優先します」


 メルセナは洞窟図の上に四つの大きな線を引いた。


「小さな偵察員たちが、戻ってきて報告することで成立する地図作りです」



※第11話「ハツカネズミ二百体の地図」は全六回です。

続きます。

作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


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