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召喚士が召喚した召喚士 ~基礎から始める召喚マネジメント講座~  作者: KEI
第10話 西の山脈の守護者

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(四)赤い光と薄い雪

◆ 四 赤い光と薄い雪


 聞き込み班の報告は、カイルがまとめた。


「聞き込み班からは、西の山脈で赤い光を見たという証言が複数あります」


「赤竜ですか?」


 リオルが尋ねると、メルセナはすぐに首を横に振った。


「断定しません」


「はい」


「赤い光を見た。そこまでを記録してください」


 カイルは頷く。


「山道利用者は、特定の谷で馬が進まなくなるとも言っています」


 ミレイユが別の記録を差し出す。


「同じ谷について、猟師からも証言があります。雪が積もりにくいそうです」


「熱いから?」


「可能性として記録してください」


 メルセナは言った。


「事実は、雪が薄いことです」


 リオルは、机の上の記録を見た。


 赤い光。


 馬が進まない谷。


 雪が薄い山肌。


 山鳴りのような低い音。


 古い洞窟に近づくと犬が怯えるという話。


 どれも、赤竜に繋がっているように見える。


 だが、メルセナは一つずつ分けていた。


 赤竜らしいから赤竜、と書かない。


 火に見えるから火、と決めない。


 犬が怯えたから竜、と断定しない。


「先生」


「はい」


「こういうの、全部一緒に見えるんですけど」


「一緒に見える時ほど分けます」


「どうしてですか」


「間違えやすいからです」


 メルセナは地図の上に、赤い印と青い印を別々に置いた。


「赤い光の証言。馬の忌避反応。雪が薄い場所。これらは同じ原因かもしれません。ですが、別々の原因かもしれません」


「先にまとめると、間違う」


「はい。最後に重ねます」


 その時、窓の外で鳥が鳴いた。


 鳥班の報告が戻ってきた。


◆ 五 鳥と追跡獣


 鳥たちは、西の山脈へ向かっていた。


 ただし、洞窟の中までは行かせていない。


 そもそも、洞窟があるかどうかも、まだ調査中である。


 メルセナは鳥班へ、近づきすぎないことを徹底していた。


 見るのは、山脈全体の地形。


 雪の薄い場所。


 風の流れ。


 熱の立ち上り。


 動物が少ない谷。


 岩の間に見える黒い穴。


 危険を感じたら戻ること。


 それだけだった。


 リオルは戻ってきた鳥に水を与えながら、報告を聞く。


「山、白い」


「ここ、白くない」


「風、上」


「嫌」


「大きい影、見ない」


「穴、黒い」


「近く、少ない」


 リオルは一つずつ確認する。


「山の一部だけ雪が薄い。谷から風が上がってる。近づきたくない場所がある。大きな影は見てない。岩の間に黒い穴がある。周りに動物が少ない」


 ミレイユが記録していく。


「聞き込みと重なりますね」


「一致ではなく、重なりです」


 メルセナが言った。


「まだ同じ原因とは限りません」


「重なり」


 リオルはその言葉を繰り返した。


 すると、カイルが追跡獣班の報告を持ってきた。


「追跡獣班からも報告です。犬が進まない谷があります」


 追跡獣を扱う召喚士が、少し困った顔をしていた。


「恐怖というより、近づきたくないという反応です」


「無理に進ませないでください」


 メルセナは即答した。


 リオルは尋ねる。


「行かせないんですか?」


「はい」


「でも、先を見れば分かるかもしれません」


「動物は危険だと思ったことはしません。その判断は尊重します」


「でも」


「無理に進ませて情報を取ることはできます。ですが、その後、その対象が召喚士を信じなくなります」


 リオルは黙った。


 それは、鳥でも同じだ。


 行きたくない場所へ無理に行かせれば、次に呼んでも来てくれないかもしれない。


「追跡獣が止まった地点を記録してください」


 メルセナは続ける。


「進まなかったこと自体が情報です」


 カイルが地図に印を置いた。


「鳥が近づきたがらなかった谷と、犬が進まなかった地点が近い」


「記録してください」


「はい」


 リオルは地図を見た。


 文献の印。


 赤い光の証言。


 雪が薄い山肌。


 鳥が嫌がった谷。


 犬が進まなかった地点。


 少しずつ、同じ方向へ集まっている。


 だが、メルセナはまだ結論を言わない。


 言わないまま、印を増やしていく。



※第10話「西の山脈の守護者」は全五回です。

続きます。

作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/summoning-management-course-basic-top/

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