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召喚士が召喚した召喚士 ~基礎から始める召喚マネジメント講座~  作者: KEI
第9話 鳥百羽の報告書

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(一)十羽を超える契約

◆ 一 足取りではなく、流れ


 リグル村の仮設本部には、朝から紙と地図が積まれていた。


 燃えた二つの村。


 避難民の証言。


 赤竜が人を見ていたという記録。


 気配を消す盗賊。


 それらは昨日まで、別々の点だった。


 だが今は、一本の線になりかけている。


 赤竜が人間を探していた。


 ならば、人間側が何かをした可能性がある。


 その中で最も太い線は、赤竜から何かを盗んだ者がいること。


 そして、北東街道沿いには、気配を消す盗賊の噂がある。


 カイル・レイヴァンは、街道警備から届いた記録を机に並べた。


「気配を消す盗賊の足取りを追うには、人手が足りません」


 ミレイユ・グレインも記録板を抱えたまま頷く。


「ギルド側の護衛相談、盗難報告、魔力感知記録を照合していますが、点が散りすぎています。正式依頼になっていない相談も多く、追跡線としては弱いです」


 リオル・ロステルは、地図の上に散った小さな印を見た。


 盗難があった場所。


 盗賊らしき噂があった場所。


 荷馬車が立ち寄った休憩地。


 避難民が通った道。


 街道警備が巡回した地点。


 確かに、ばらばらだった。


「鳥を使いますか?」


 リオルが尋ねると、メルセナ・オルブライトはすぐに答えた。


「使います。ただし、探すのは盗賊本人だけではありません」


「本人だけじゃない?」


「はい。盗品があるなら、売られた可能性があります」


 メルセナは地図の街道沿いに指を滑らせた。


「気配を消す盗賊は、盗品そのものに強い執着を見せていません。危険な場所へ入ること自体に執着しているなら、盗んだ物を持ち続けるとは限りません」


 カイルが続ける。


「商人、古物商、荷馬車、休憩地、水場。盗品が流れる先を見ます」


「ギルド側では、怪しい古物の鑑定相談も照会します」


 ミレイユが記録板へ書き込んだ。


 リオルは少し考える。


「盗賊を探すんじゃなくて、盗んだ後の流れを探す」


「正確です」


 メルセナが頷く。


「鳥で広く見ます」


 その言葉に、リオルは自然と胸の前で手を合わせかけた。


 だが、メルセナがそれを止めた。


「その前に、契約を結びます」


「契約?」


「はい。十羽を超えて運用するための契約です」


「十羽を超えて」


「あなた単独では、鳥十羽前後が限界です。ですが、魔力維持の大部分を私が負担すれば、それ以上の運用が成立する可能性があります」


「何羽まで呼べるんですか?」


「分かりません」


 メルセナは即答した。


「分からないんですか」


「はい。あなたの魔力量、鳥たちがどれだけ応じてくれるか、委任後の維持負担がどこまで安定するか。それらを見なければ判断できません」


「じゃあ、やってみるしかない」


「正確です。ただし、無理はさせません」


 リオルは手を下ろした。


 今までの自分なら、呼べるだけ呼ぼうとしていたかもしれない。


 けれど今は、少し違う。


 来てくれることと、維持できることは別。


 見に行けることと、戻ってこられることも別。


 それを、考えなければならない。


「今回の形は、熊の時と逆です」


 メルセナが言った。


「熊の時は、私が召喚した熊を、あなたが一部指揮しました」


「はい。準委任でした」


「今回は、あなたが召喚した鳥を、私が調査指揮します」


「逆になるんですね」


「はい。召喚関係はあなた側に残します。鳥たちが応じる理由も、あなたとの関係性です。ただし、調査指揮は私へ委任します」


「魔力は?」


「委任契約や準委任契約では、使用する魔力量を双方で一割から九割まで分配できます」


 メルセナは地図の横に、簡易の契約陣を描いた。


「前回も今回も、基本は私が九割を負担します」


「先生が九割」


「はい。あなたは一割を負担します」


「ゼロにはならないんですね」


「なりません。召喚関係があなたに残る以上、完全に切り離すべきではありません。あなたの一割は、鳥たちとの繋がりを保つための魔力でもあります」


「僕は、鳥たちとの繋がりを持ったまま、先生に指揮を任せる」


「正確です」


「じゃあ、僕の役割は」


「召喚。呼びかけ。安心付け。負担確認。そして、必要なら中止を受け入れること」


「中止」


「はい。あなたの負担が上がりすぎれば、そこで止めます。鳥たちが嫌がっても止めます」


 リオルは小さく息を吸った。


「分かりました」


「では、十羽ずつ呼んでください。十羽ごとに、調査指揮を私へ委任します。魔力負担は、私が九割、あなたが一割です」


「どこまで増やすんですか?」


「あなたと鳥たちの負担を見ながら決めます」


「最初から数を決めないんですね」


「決めません。数だけを先に決めると、召喚対象にも召喚士にも無理をさせます」


 リオルは頷いた。


「来てくれる子だけ。続けられるところまで」


「はい。それが今回の運用です」



※第9話「鳥百羽の報告書」は全六回です。

続きます。

作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/summoning-management-course-basic-top/

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