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召喚士が召喚した召喚士 ~基礎から始める召喚マネジメント講座~  作者: KEI
第8話 竜は人を見ていた

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(三)赤竜から盗むということ

◆ 四 赤竜を怒らせた人間


「赤竜が人間を探していたとして、何を探すのでしょう」


 カイルが尋ねた。


 メルセナは地図を見たまま答える。


「人間そのものではないでしょう」


「人間を見ていたのに?」


 リオルが言う。


「人間に興味があるのではなく、特定の人間が持つ何か、あるいは特定の人間がしたことに反応している可能性があります」


 ミレイユが記録板に線を引く。


「赤竜を怒らせることをした人物がいる」


「または、赤竜から何かを盗んだ人物がいる」


 カイルが続けた。


 リオルは思わず聞き返した。


「赤竜から、盗む?」


「仮説です」


 メルセナはすぐに言った。


「そんなこと、できるんですか」


「通常は不可能です」


「不可能」


「はい」


 メルセナは、証言記録を指で押さえた。


「ただし、赤竜が何かを探している。人間を確認している。村を焼いてまで探している。その証言を仮に正しいと置くなら、赤竜にとって重要なものを人間が持ち去った可能性は、候補に入ります」


「でも、赤竜から盗むなんて」


「あり得ないに近いです」


「じゃあ」


「近いだけです。不可能と断定するには、まだ情報が足りません」


 リオルは黙った。


 あり得ない。


 でも、消せない。


 最近、何度も似たことを聞いている気がした。


 分からないものを、分からないまま置く。


 あり得ないものも、証言と状況がそれを指すなら、完全には捨てない。


「可能性は四つ」


 メルセナは言った。


「一つ。赤竜を怒らせることをした人間がいる。二つ。赤竜から何かを盗んだ人間がいる。三つ。赤竜と特別な契約、または因縁を持つ人間がいる。四つ。村人の証言が誤認である」


 ミレイユがそのまま記録する。


「現時点で、最も太い線は」


 カイルが問う。


「赤竜から何かを盗んだ者がいる、です」


 メルセナは言った。


 リオルは地図を見る。


 燃えた二つの村。


 避難民の証言。


 赤竜。


 そして、人間を見ていたという話。


 赤竜が人間を探す。


 それだけで、何かが大きくずれている気がした。


◆ 五 赤竜から盗むということ


「赤竜から盗むのは、並の盗賊では不可能です」


 メルセナは、最初にそう釘を刺した。


「どうしてですか」


 リオルが尋ねる。


「魔力で分かります。気配で分かります。熱の流れ、空気の乱れ、地面の振動。赤竜に近づくというだけで、生き物として目立ちます」


「隠れても?」


「隠れたつもりになるだけです」


 カイルが続ける。


「魔道具で隠れれば」


「魔力で分かります」


 メルセナは即答した。


 ミレイユが少し考える。


「精霊具なら」


「人間や番犬相手なら補助になるかもしれません。ですが、赤竜相手に通用するとは考えにくい」


「精霊具でも駄目なんですか」


 リオルが聞く。


「駄目とは言いません。ですが、精霊具は基本的に効果が小さい。足音を散らす、匂いを流す、衣擦れを紛らせる。その程度の補助で、赤竜の感知を抜けられるとは考えにくい」


「でも、もし感知を抜けられたら」


「それでも終わりではありません」


 メルセナは地図の外側に、小さな円を描いた。


「赤竜は、洞窟や山腹の深い場所を棲み処にすることが多い。仮に財宝や所有物があるなら、簡単に近づける場所には置きません」


「そこへ行くまでに」


「魔獣や地形、熱、空気の薄さ、赤竜の眷属、あるいは罠。障害はいくつも考えられます」


 カイルが腕を組む。


「戦闘が起これば、赤竜も気づきます」


「はい」


 リオルは眉を寄せた。


「じゃあ、やっぱり無理じゃ」


「無理に近いです」


 メルセナは言った。


「しかし、だからといって不可能とは断じません」


「どうしてですか」


「何かしらの手段で、赤竜の感知を避け、洞窟内を移動し、魔獣との遭遇を避け、目的物を持ち去った可能性は、ゼロとは断言できないからです」


「ゼロじゃない」


「はい」


 カイルが低く言う。


「あり得ないが、消せない」


「正確です」


 ミレイユが記録板の端に、候補として線を引いた。


「赤竜からの盗難可能性。極めて低いが、現時点では棄却不可」


 リオルは、その文字を見た。


 極めて低い。


 でも、消せない。


 それが一番怖い気がした。



※第8話「竜は人を見ていた」は全四回です。

続きます。

作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/summoning-management-course-basic-top/

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