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召喚士が召喚した召喚士 ~基礎から始める召喚マネジメント講座~  作者: KEI
第8話 竜は人を見ていた

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(二)竜は人を見ていた

「分かりました」


 メルセナは静かに言った。


「今はそこまでで構いません」


 次の証言者は、カンナ村の女だった。


 手を握りしめ、ずっと床を見ていた。


「逃げた者を、すぐには焼かなかったんです」


「赤竜が、ですか」


 カイルが確認する。


 女は頷いた。


「顔を、見ていた。いや、顔かどうかは分かりません。でも、一人一人を……」


「一人一人」


 リオルは思わず繰り返した。


 女は、リオルの方を見た。


 その目は赤く腫れていた。


「あれは、ただ暴れていたんじゃない。誰かを探していたんです」


 避難所の奥で、誰かがすすり泣いた。


 ミレイユが別の記録板をめくる。


「同様の証言、別の村からもあります。ロウゼ村では、赤竜が広場を見回していた。カンナ村では、逃げる村人を追う時に、即座に焼かず、確認するように頭を下げた、と」


「証言を分けてください」


 メルセナが言った。


「焼いた証言と、探していた証言を混ぜないように」


「承知しました」


「恐怖による誤認も候補に入れてください。ただし、二つの村で似た証言が出ている以上、捨ててはいけません」


「はい」


 リオルは、避難民たちを見た。


 村を焼かれた人たち。


 家を失った人たち。


 逃げてきた人たち。


 その人たちが、同じようなことを言っている。


 赤竜は、何かを探していた。


 人を、一人一人見ていた。


 その言葉が、火よりも怖かった。


◆ 三 竜が人を見る


 竜が村を焼いた。


 それだけなら、恐ろしいが、まだ分かる気がした。


 怒り狂った巨大な存在が、目の前のものを壊す。


 火を吐き、家を焼き、森を焦がし、人を逃げ惑わせる。


 そんな光景なら、想像できてしまう。


 想像できてしまうこと自体が嫌だった。


 けれど、人を一人一人見ていた、という証言は違った。


 竜が人を見ていた。


 人間を、人間として見分けようとしていた。


 その方が、ただ焼かれたという話よりも、ずっと怖かった。


 避難所を出たあと、リオルはメルセナに尋ねた。


「先生、赤竜って、人間を見分けるんですか」


「通常は、見分けません」


「見分けない」


「赤竜にとって、人間は小さすぎます。敵として認識することはあっても、一人一人を確認する対象ではありません」


「じゃあ、どうして」


「そこが問題です」


 メルセナは、避難所の外に置かれた粗い木机の前に立った。


 ミレイユが証言記録を広げる。


 カイルが地図を置く。


 二つの村の位置。


 燃えた範囲。


 避難民の移動経路。


 赤竜の目撃位置。


「赤竜が村を焼くこと自体は、あり得ます」


「あり得るんですか」


「怒れば、です」


 メルセナは淡々と言った。


「ですが、怒りで焼くなら、探す必要はありません」


 カイルが頷く。


「破壊そのものが目的なら、村人の顔を確認する意味がない」


「はい」


 ミレイユが記録を確認する。


「二つの村で、何かを探しているようだった、という証言が出ています」


「証言をそのまま信じすぎてはいけません」


 メルセナは言った。


「ですが、二つの村で似た証言があるなら、捨てることもできません」


「赤竜が人間を探していた、としたら」


 リオルは言った。


「通常ではあり得ません」


 メルセナが即答した。


 リオルの喉が鳴る。


「あり得ないのに、そう見えた」


「はい」


「じゃあ、あり得ない理由がある」


 メルセナが、少しだけリオルを見た。


「よい整理です」


 リオルは嬉しくはならなかった。


 今の答えは、褒められても怖いだけだった。



※第8話「竜は人を見ていた」は全四回です。

続きます。

作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


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