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召喚士が召喚した召喚士 ~基礎から始める召喚マネジメント講座~  作者: KEI
第7話 気配を消す盗賊

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(二)気配を消す盗賊

◆ 三 気配を消す盗賊


 カイルは、街道警備の報告を読み上げた。


「被害は小さいものが多い。食料、古い道具、旅商人の荷、薬草袋、替えの刃物。盗まれた物そのものに、明確な偏りはありません」


「高価なものを狙っているわけではない?」


 リオルが尋ねる。


「少なくとも、そうは見えません」


 カイルは別の報告書を机に置いた。


「妙なのは、警備が厚い場所を狙う割に、盗む量も価値も大きくないことです」


「危ないところへ入るのに、大したものは盗らない?」


「そうです」


 リオルは首を傾げた。


「それ、盗賊として得なんですか?」


「得ではありません」


 カイルは即答した。


「だから妙なのです」


 ミレイユがギルド側の記録を確認する。


「護衛依頼の相談にも、似た傾向があります。見張りが二人以上いた荷置き場。番犬がいた商家。柵と施錠が整っていた倉庫。いずれも、普通の盗賊なら避ける場所です」


「なのに、盗まれた物は?」


「干し肉、古びた携帯鍋、荷札の付いた小袋、空の小箱」


「空の小箱?」


「はい」


 リオルはますます分からなくなった。


 見張りがいる。


 番犬がいる。


 柵も鍵もある。


 そんな場所に入り込んで、空の小箱を盗む。


「鍵を壊したり、扉を破ったりした形跡は?」


「少ないです」


 カイルが答えた。


「壊して入ったというより、見張りの目を抜け、鍵を開け、あるいは開いている一瞬を突いた可能性が高い」


「すり抜けたわけじゃないんですね」


「報告を見る限り、そうした能力は確認されていません」


 メルセナが続けた。


「物を素通りできるなら、もっと違う被害が出ます。金庫、密閉箱、封印庫。狙える場所が変わる」


「じゃあ、これは」


「侵入がうまい盗賊です。少なくとも、現時点では」


 カイルは報告書に視線を落とした。


「成果ではなく、侵入そのものを目的にしているようにも見えます」


 メルセナは報告書を見つめる。


「危険な場所を選んでいる」


「そう考えますか」


「断定はしません」


 メルセナは言った。


「ただ、盗品への執着より、厳重な警備を抜けることへの執着が見えます」


「警備を抜けることへの執着……」


 リオルは小さく繰り返した。


 盗むために危険を冒すのではない。


 危険を冒すために盗んでいる。


 そんなふうにも聞こえた。


「死地に近い場所を選んでいる可能性があります」


 メルセナは淡々と言った。


「死地……」


「失敗すれば捕まる。場合によっては殺される。その危険がある場所を選んでいる」


「そんな人、いるんですか」


「います」


 カイルが答えた。


「兵にも、賊にも、貴族にも、商人にも。危険の近くでしか自分の価値を感じられない者はいます」


 リオルは黙った。


 理解できない。


 けれど、いないとは言い切れないのだろう。


 ミレイユが記録板を確認する。


「ギルド記録では、認識阻害系の魔道具反応は確認されていません。少なくとも、残留魔力はかなり薄いようです。ただし、記録自体が不完全です」


「認識阻害系の魔道具?」


 リオルが聞き返す。


「人に気づかれにくくする魔道具です」


 メルセナが答えた。


「ですが、そうした魔道具を使えば、多くの場合は魔力感知にかかります」


「今回は、それが薄い」


「はい。ならば、魔道具ではなく、精霊具を補助的に使っている可能性がありますね」


「精霊具?」


 リオルは初めて聞く言葉に首を傾げた。


「魔道具とは違うんですか?」



※第7話「気配を消す盗賊」は全四回です。

続きます。

作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/summoning-management-course-basic-top/

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