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召喚士が召喚した召喚士 ~基礎から始める召喚マネジメント講座~  作者: KEI
第5話 敬礼熊は中間管理職

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(五)直接指示だけでは回らない

◆ 五 直接指示だけでは回らない


 最初は、うまくいっているように見えた。


 通常熊二体は強かった。


 黒い通常熊が群れの端へ入り、地面を叩く。


 小型魔物が驚いて横へ逃げる。


 赤茶の通常熊がその横腹を押し、村へ向かう流れを南東へ逸らす。


 敬礼熊は柵付近に立ち、抜けてきた魔物を止める。


 魔物の流れが、少しずつ横へ傾いた。


「進路、変わっています」


 カイルが地図を見ながら言った。


「第二防衛線側へ流れ始めています」


 リオルは少しだけ拳を握った。


 だが、すぐに次が来る。


 火に追われた魔物は、まっすぐには動かない。


 横へ跳ぶもの。


 柵へ突っ込むもの。


 熊に驚いて逆走するもの。


 地面すれすれを抜けようとするもの。


「敬礼熊、柵前!」


 敬礼熊が動く。


「黒い熊、深追いしないで!」


 黒い通常熊が不満そうに鼻を鳴らす。


「赤茶の熊、そこは南東の道だから塞がない!」


 赤茶の通常熊が少し遅れて下がる。


 リオルは必死に見ていた。


 柵。


 魔物。


 逃げ道。


 通常熊二体。


 敬礼熊。


 全部を直接見るのは難しい。


 全部に直接指示を出すのは、もっと難しい。


 それでも、どうにか流れは保っていた。


 その時、土走りが一体、通常熊二体の足元を抜けようとした。


 小さい。


 速い。


 リオルが声を出すより早く、敬礼熊が動いた。


 前に出て、土走りの進路を塞ぐ。


 通常熊二体はまだ別の魔物を見ていた。


 リオルの声だけでは間に合っていない。


 敬礼熊が穴を埋めていた。


「先生」


「何でしょう」


「僕、全部に直接指示を出そうとしてます」


「はい」


「無理ですね」


「はい」


「即答」


「現場が答えています」


 メルセナの声は冷静だった。


「では、どうしますか」


 リオルは牧草地を見る。


 魔物。


 柵。


 通常熊二体。


 敬礼熊。


 逃げ道。


 村。


 全部を直接見るのは無理だ。


 全部に直接指示するのも無理だ。


 なら、分けるしかない。


「通常熊には、細かい指示を減らします」


「続けて」


「黒い熊は、柵に近づく魔物を押し返す係。赤茶の熊は、南東の逃げ道を塞がないように、群れの端を削る係」


「敬礼熊は」


「二体の動きの穴を埋める。柵前が空いたら入る。通常熊が深追いしそうなら止める」


「よいです」


 リオルは声を張った。


「黒い熊! 柵に近づく魔物だけを押し返してください! 追わない!」


 黒い通常熊が鼻を鳴らした。


「赤茶の熊! 群れの端だけ! 南東の道は塞がない!」


 赤茶の通常熊が唸った。


「敬礼熊! 二体の間を見て、足りないところをお願いします!」


 敬礼熊は敬礼した。


 そこから、少しだけ動きが変わった。


 リオルが全部を叫ばなくても、黒い通常熊は柵前を優先する。


 赤茶の通常熊は、群れの横腹を叩くように動く。


 敬礼熊は二体の間を見て、足りないところへ入る。


 魔物の流れが、少しずつ南東へ傾いた。


 カイルが地図を見ながら言う。


「進路、さらに変わっています」


 ミレイユが通信水晶を確認する。


「王国軍第二防衛線からも確認。魔物群の一部が街道側へ流れています」


 リオルは拳を握った。


 できている。


 まだ終わっていないけれど、確かに流れが変わっている。


◆ 六 村を守る


 魔物の先頭は、熊たちに押されて南東へ流れた。


 遠くで角笛が鳴る。


 カイルが通信水晶を確認する。


「第二防衛線、接敵開始。受け止めています」


「残りは」


「十数体が村側へ寄っています」


 リオルは柵前を見る。


 黒い通常熊が押し返す。


 敬礼熊が穴を埋める。


 赤茶の通常熊が群れの端を叩く。


 それでも、一体の土走りが、熊たちの足元を抜けた。


 柵へ向かっている。


「敬礼熊!」


 敬礼熊が動く。


 だが、距離がある。


 土走りが柵の下をくぐろうとする。


 リオルは周囲を見た。


 柵の近くに、荷車の板が倒れている。


 村人が避難時に置いていったものだ。


「黒い熊! 板を倒して、柵の下を塞いで!」


 黒い通常熊が前脚で板を叩いた。


 板が倒れ、柵の隙間を塞ぐ。


 土走りが板にぶつかり、跳ね返る。


 敬礼熊がそれを南東へ弾いた。


「よし!」


 リオルは思わず声を上げた。


 メルセナが静かに言う。


「現場の物を使いましたね」


「使えるなら、使った方がいいと思って」


「よいです。召喚対象だけで解決しようとしないこと」


「はい」


 残りの魔物が、少しずつ南東へ流れていく。


 柵の一部は歪んだ。


 板も割れた。


 だが、魔物は柵を越えていない。


 村内へ入ったものもいない。


 王国軍の第二防衛線から、再び通信が入った。


 ミレイユが顔を上げる。


「第二防衛線、維持。魔物群の大半を受け止めたとのことです」


 カイルが続ける。


「残りの小型魔物も散っています。村へ向かう圧は低下」


 リオルは柵前を見る。


 まだ熊たちは構えている。


 だが、森から出てくる魔物の数は明らかに減っていた。


 煙は相変わらず上がっている。


 火災は終わっていない。


 それでも、村を直接襲う流れは止まった。


「村は」


「守れました」



※第5話「敬礼熊は中間管理職」は全六回です。

続きます。


作者個人サイトでは、人物相関図・各話アイキャッチ・用語メモなどの補足資料を公開しています。

※ネタバレ範囲にご注意ください。


https://www.simulationroom999.com/blog/summoning-management-course-basic-top/

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