第3話 リトラクス
ズズン、ズズン、と重い足音。
四つ足。岩のように硬い胴体。背中には無数の骨の突起。異形の姿は1体目よりもやや大きく、迫力が増したようだ。
シュンはスティックを握り直す。
ユウナは小首をかしげ、静かに告げる。
「気をつけて。大きな拍の歪みが集中しているモンスターよ。
無理に力任せで倒すと、壊れてしまう」
シュンは深呼吸し、集中する。
(よし……行くぞ、エイトビート!)
イメージした瞬間、足元にドラムセットがふわりと出現。
スネア、タム、シンバル、バスドラ。触れると感触も重さも完璧。
いつものリズムを奏でる。
ドンタンドドタン! ドンタンドドタン!!
再び身体とドラム、世界の拍が完全に同期した瞬間――
異形の動きが止まり、体が徐々に縮み始めた。
異形のモンスターは小さくまとまっていった。
つぶらな瞳に、少し拍が狂っているせいか首をかしげる仕草。
ユウナは静かに言った。
「うまく調整できたわね。2回目でこんな慣れて、すごい!」
シュンはそっと手を差し伸べる。
モンスターはぴょこんと跳ねて地面に着地した。
モンスターの周りにはキラキラと光が輝いて見えた。
「この光ってなんだろう?さっきの子にもあったけど」
「それはリトラクスという光よ、その光を集めるように念じてみて」
ユウナは言う。
(よし、こっちへ来い!)
シュンが念じると光が空を旋回してシュンの手に吸い込まれる、
「うわぁ、、」
たちまち一つの塊になった。
コロン
「えっ、何これ。すごい綺麗」
「それが魔石よ、リトラクスを集約したもの」
「魔石……」
シュンは手に取り、温かさを感じる。
ユウナは頷く。
「整えた拍の力は、この世界で価値になるのよ。街ではこれを使って道具や食料、情報も手に入れられる」
シュンは魔石を手に深呼吸した。
(なるほど……ただの戦闘じゃない……世界を整えて、生活も支える……)




