第95話 ドロイアン
エイカーのアジトは、タラブ王国全体に100以上ある。
彼らの主張は国教であるディルモ教の階級制度を真っ向から否定するため、どうしても政府からの弾圧の対象となってしまう。
ゆえに、そのほとんどが地下に潜り目立たない場所で活動されていた。
だが、ここ数週間、自らをエイカーと名乗る者が増え始めた。
もう隠そうとはしない。彼らとしてもヌァンラのいない今、消滅の危機に瀕していることを考えると、ここでやらないわけにはいかないのだ。
「ドロイアン、南部の区域はほとんど伝達が終りました
山岳が多いため少し手間取ってますが、北部周辺も今週中にはほぼ完成するかと思います」
「そうか、ご苦労だった
キムル、お前的にはどうなんだ?幼なじみがこうも持ち上げられて、この国の代表みたいな有名人になるっていうのは」
「うれしいですよ
本当に、心から
だってティンタはおれたちドゥール(奴隷階級)の代表だから
今までだって、あれだけ拍が使えてすごい奴だってことを本当は周りのみんなに言いふらして回りたかったんだから
ドゥールだってナーバ(僧侶)やトイヤ(貴族)に勝てるっていうところを、ある意味見せつけたわけだから」
ドロイアンはキムルの話しぶりを、穏やかな表情で見つめていた。
「南部や北部の者たちは、拍使いについては心当たりはありそうだったか?」
「いや、難しそうです
そもそも、優秀な者はほとんど律動連盟に入ってしまっておりますし
北部に関しては、戦線の悪化で、少しでも拍が使えるとなると、戦場に送り出されてしまいます
そのため若い目はほとんど摘み取られてしまっております」
「なんたること…これからの次世代を担う若者たちが次々と…」
「ティンタも律動連盟と関わっていなければ、もしかしたら戦場に駆り出されたかもしれませんよね」
「免れないかもな…女だからといって拒絶できるほど、この国の政府は甘くない
キムルよ、もうみんな俺の力では抑えられないほど頭に来てしまってるんだよ
暴発は止められない」
「……」
「送れるだけの賄賂を送って牢の衛兵に様子を聞いたが、
奴ら最新鋭のロックの掛かった部屋にヌァンラをぶち込んでるんだそうだ」
「…エルトリア製ですかね?」
「…わからない
だが並の律動師じゃとても無理だ
食料を与える際も小さな隙間から受け渡すそうで、鍵のありかすらわからないそうだ」
「それでは救出しようがないじゃないですか」
「……そうだな
大槌を持っていったところで、どうにもなりそうもないし
十侍僧の一人でも人質に取れたらと思うが、奴らはそんなもの何とも思わない連中だからな」
「止められないのですか?
何とか、よい救出の作戦が見つかるまででも… 」
「みんな俺の言うことなど聞いてくれやしないよ
それどころか、女神真教の奴らとつるんで何か画策してる奴もいっぱいいる
エイカーはもう規律の取れた団体ではなくなってしまった
せっかくティンタのおかげで反政府的な気運が高まってきたと言うのに… 」
「ドロイアン…」




