第93話 決着
その時、それまでじっと黙って戦況を見守っていたジルが大きく声を上げた。
「それまで!」
攻撃を開始しようとしていたシュンがびくっと手を止めた。
ライドンも戦闘体制を解く。二人の間に輝き続けていた光もフッとなくなった。
「師匠…」
「ジルさん…」
「二人ともありがとう
もういいわ、大体わかったから」
その声は、この熱戦に対して、やけに乾いたトーンに聞こえた。
まるで練習試合の軽い手合わせを試みたかのような。
「あの、ジルさん
でも、勝敗が…」
「勝敗?」
「勝った方が、今回の対抗戦の代表になるって…」
「あ、そうね
ごめんなさい、あなたたちの本気度を見たかったの
どれぐらい代表になりたいかどうか、その執念をね
勝ち負けは関係ないわ」
その言葉に、シュンもライドンもその場に座り込んでしまった。
「はは…緊張して損しちゃったかな…」
「シュン、お前ずいぶん強くなったな、びっくりしたぞ」
「そう言ってもらえると嬉しいよ、君には本当にペーペーの頃からこの1ヵ月半ずっと見ててもらったから…」
全力を出し切ったシュンは満足そうな顔をしていた。それを見てライドンも目を細くする。
「お前の勝ちだよ、この勝負は
おれは正直、次お前がどんなリズムを出してくるかびびってた
次のターンで勝てる自信は無いな」
潔いライドンの一言に驚くシュン。
「そんな、嬉しいけどそれはないよ
本気で君に勝てるなんて」
「ああ、うらやましいなぁ
おれもそのドラムセットが叩きたいよ、どうしたら手に入るんだろう」
その言葉はこの場にいる全員が感じたことだ。
「二人ともご苦労様
シュタルクと相談して週明けにはどっちが代表になるか決めて文書で届けるわね」
ジルはそう言うと踵を返し、部屋を後にした。
(どっちが、って言った…?)
やはりジルは二人同時に代表という考えは頭に無いようだ。




