第92 話 シュン対ライドン 3
こちらの分がいいと見るや、一気に攻勢をかけるシュン。
BPM 130
ドンタードドタードンタードドター
ドンタードドタードッタンタタンタタカトタタカドゴ
フィルインの最中も、シュンの右足は止まらない。
バスドラムを踏み続けながら、両手で細かなフレーズを叩き切っていく。
足を使わないプレイヤーなら、手が三本必要になるような動きだった。
「ライドン、どうする気だ?」
四人の先輩たちも、固唾を飲んで見守る。
BPM 130
ドンタンドドタンドンタンドドタン
ドンタンドドタンドンタカタタンタツタツタタドンタ
変えた…。ライドンはシュンと同じ形をなぞることをやめ、フィルインそのものの表現を切り替えたのだ。
シュンの足技には付き合わない。
その代わり、自分が最も得意とするリズムをプレイした。
ある意味では、シュンのリズムを再現することを捨てたとも言える。
ただ、自分の技が上と見せつけるためのもので、それはカウンター攻撃とも言えた。
「……」
シュンは自分が勝ったとは思っていない。ただダメージも受けていない。
ライドンは…少し精神的なダメージをくらっている感はあった。だが、自分のターンの攻撃を一度控えている。
「行くぞ、シュン」
BPM 100
ドドンドタンタドスタドドタタンタ
ツッタカタッタッタタンタ6スタタドンド6タカタカタカ
そこまでやるか?というくらい複雑なフィルイン。
リズムの質も16ビートのかなりこだわったものだった。そう、あの、メイナとのゲームで見せたような…。
「シュンもさすがにこれはきついんじゃないか?」
「ライドンのやつ、完全に自分の舞台に引きつける気だね」
アリシアもエイジーンも、このライドンの攻撃には舌を巻く。
だが、シュンは見た。
ライドンは、イストとの戦いでもメイナとの戦いでも、必ず大事なところでは自分の一番得意な16ビートを見せる。
それこそ、学院でみんなに見せた模範演奏においても…。
BPM 100
ドドチドタンタドチタドドタタンタ
チッタカタッタッタタンタ6タタトドゥンド6タカタカタカ
「シュン、お前…」
ライドンはつぶやく。まさか自分の得意なリズムをシュンがここまでトレースしてくるとは。
「これは…研究されてるな」
「そうみたいね、さあ、今度はどうする気かしら?」
ライドンが最後の攻撃に突入する。
「行くぞ!」
BPM 110
ドンドドドドドドタタタンドドタタタ
6タカタカタカ6タカタカタカ6ドドドドドドタ
「は、早い…」
ライドンの武器は何といってもその器用さだ。シュンは確かにうまくコピーはしている。だが、先ほどのそれは、細部にわたってまで完璧にできてはいない。何とか模倣しているに過ぎなく、ここまでのスピードを出されてはかなりきつい。
「よし…」
BPM 110
ドンドドドゥドゥドゥドゥタタタンドドタタタ
6タカタカタカ6タカタカタカ6ドゥドゥドゥドゥドゥドゥジャン!
「ふぅ」
大きく息を吐くシュン。何とか踏みとどまった。確実にリズムを崩したというところまでは行ってない。
律動師のゲームは普通は大体2ターンまでに終わる。いつまでも武器を具現化し続けるのが、精神的にきついからだ。
だが、本人たちが勝負がついてないと思えば、これはいくらでも続けて良い。
シュンはまだ全てを出し切っていない。
自分でもうまくいくかわからないが、うまく刺さればライドンにも勝てそうな独自のリズムがあった。
「行くぞ!ライドン」




