第85 話 選出会議
コンコン。
「ジル、いるか?」
「いいわよ、入って」
クロニア聖拍院内の一室。ジルの仕事部屋は、常に綺麗に整理整頓されていた。
几帳面な彼女らしい空間だった。
「ジャン、久しぶりね
どう?学校は」
「ああ、楽しいよ
若者たちと一緒にやっていると、自分も若返った気になってくる
体がなまっていくのだけがどうしても引っかかるんだけどな」
「ふふ、でも充実してそうだわ
顔にそう書いてあるもの
あなたにとって必要なのは自分の腕じゃなくて、若者を成長させるための力でしょう」
ジルは優しい。昔よりずいぶん優しくなったな、とジャンは思った。
「来週からシュンとライドンが復帰するよ
一週間も休みをとって何をしてるのかと思ったら、まさかドルリダントにまで行くだなんてな
意外と行動力あるんだよなあ」
シュンが本当に行きたいのはフリック大陸だ。ジルはそのことを話すべきか少し考えたが、黙っていることにした。
「あの子は私たちと見てる世界がずいぶん違うみたい
普段は大人しくて受け身なんだけど、どうしても欲しいものには喰らいついてでもやってやるっていう気持ちを感じるわ
楽しみね、どんな顔して帰ってくるのか
ライドンは…まあ遊びたいだけでしょうけど」
「そうなんだな、俺はまだ何日かしか一緒にいないからわからないけど
君の愛弟子を指導することになるっていうのはなんだか変な感じだけど、少し嬉しいよ」
「ふふ、教えるのは絶対にあなたの方が上手だわ
アーネスもいるんでしょう?」
「ジル、本当にすごい奴らを預けてよこしたもんだな
アーネスはお前より上に行くぞ、こいつは桁が違いすぎる」
「そうね、そうなってもらわないと困るわ
妹もね」
話しながらも、ジルは手元でペンを動かしていた。
「なあ、それって…」
「対抗戦のメンバーを決めてるのよ
タラブの連中がどんなのが来るのか、なんとなく予想がつくんだけどね
できるだけ相性が良いメンバーにしたくて」
「なるほど…
難しいよな、単純にレベルだけで決着がつくもんじゃないしな」
「そうよ、でもやっぱりシュンはまだ使えないわね」
「そうなのか?
ドゥンバの覚えもずいぶんいいけどな
あと1ヵ月もあれば相当使えるようになると思うけど…
なんせあいつは足でドゥンバを踏むっていうとんでもないアイデアを思いついたみたいだから」
「聞いてるわ、全部話は届いてるの
シュンの事は、その一挙手一投足までみんなで共有してるから…
馬術もすごいんでしょう?」
「あらら…どっからそんな話が」
「ふふ、シュンを代表に入れるなと言ったのは、ハシュフリードよ
情報の出所もなんとなくわかるでしょ
彼はシュンの使い方をずっと考えてるわ
隠しておいて、最善の一手のところで出したいって言う感じなのよね」
「そうか、もう奴が代表を決めちゃったほうがいいんじゃないか?
団長である君の意見よりも重んじられるんだろう?全く、拍の知識はゼロの分際で」
「確かにその通りかもね
…待って、外に誰かいるわ」




