第83話 ジルの錠前
聞こえない。全く聞こえてこない。
シュンは自らの楽器を顕現するより前に、戦いに敗れてしまった。
しかしこれは仕方がないことだ。やはり偉大な師匠が作った錠前。そうやすやすと破れるものではなかった。
「シュン、気を落とすな
こういうこともあるさ
おれにやらせてくれ」
ライドンが割って入ってきた。
目を瞑り、集中する。果たして鼓動は…。
「……」
「……」
ライドンの頬に、一筋の汗が流れ落ちる。
「だめだ
おれにも無理だ、何なんだこの錠前は?」
続いて、アミリア、サビアラ、エイジーンも試してみるも、全く反応がない。
「こりゃ無理だな
普通の錠前として開けようとしても、びくともしない
ジルのやつどうやってこんなものを」
「ウチらでも無理なんだもん、シュンができないわけよね
ショック受けなくていいからね」
シュンは優しい先輩たちに慰められて気持ちは立ち直っていたが、どうしても諦められない。
その時、サビアラが何かに気がつく。
「振動計って中の構造を複雑にすることで、流れる空気の通り道をコントロールするのよね?
多分この錠前も同じ構造で作られてるとしたら…
見た目的には3つ目の錠前よりもさらにシンプルじゃない?サイズだって小さいし
という事は、リズムが複雑なんじゃなくて発する振動に仕掛けがあるのかしら?」
その言葉に反応するエイジーン。
「確かにその通りだな
しかも、ずいぶんフラットで直線的な作りじゃないか
これは…シンプルに一発の音に反応する仕組みじゃないのか?まさか」
「なるほど…再現性が難しい音にしてそうだね、均一性の高い倍音で美しい響きである必要がある、とか?」
アミリアも自分の知識を持ち出して参戦する。
「おそらくそんなところだろうな、いびつな音であったり、その辺で聞くような音だと、勝手に開いちまうからな
よし、やってみるか」
エイジーンがドゥンバを出す
ドン!
タン!
ドン!
タン!
美しい倍音だ。どちらの音も均一性が高く、立ち上がりも良い。
伸びのあるサスティーンが部屋中に響き渡る。
だが、錠前は何の反応もない。
「だめか
ドゥンバだと少し荒っぽい音になっちまうかな
アミリア」
「もう出してるよん
アミリアの手元には、ラトローシュが顕現されていた。
トン!
タン!
トン!
タン!
こちらもきれいな音だ。エイジーンの奏でた音色よりさらに立ち上がりが良い。
ラトローシュの高音は均一な倍音で、こちらも部屋全体に、滲むように広がっていく。
しかし。
錠前は何の反応もない。
「何か…むかつくなぁ
ジルに試されてるみたい」
アミリアはジルとは年も近く、まさに同僚であった。
それだけに、彼女に負けたくないと言う気持ちも強いのだ。
その後は代わる代わるメンバーがおのおのの武器を鳴らしてみたが、錠前は何の反応もなかった。
「あのさぁシュン
これってもしかして…」
ライドンがシュンに耳打ちした。
「ああ、おれも考えていた
やるしかないな
どうしても、宝物庫に入ってみたいし…」




