第81話 頼み
「なんと、聞けばまだ16才だそうじゃないですか
よくその若さでその境地まで…素晴らしい才能でございますな
アミリアさんやエイジーンさんもご自身の十代の頃と比べていかがですか?」
二人とも首を横に振る。
「フィリップさん、
最近の若者の強さは異常なんですわ
我々が十代の頃なんて、200に達してるやつなんぞ、ほとんどいませんでしたからな」
「ふふ、ジルが出てくるまではでしょう?
それまでの常識は全部あの子が覆しちゃったからね」
「ジル様はこの国の英雄でございますからな
しかし、シュンさんはその方を引き合いに出されてもおかしくないほどの強さ
本当にすごいですよ」
これまでに味わったことのないほどの賛辞に、シュンはどう反応していいのかわからず、ただ顔を赤らめて戸惑うばかりだった。
「ところで、夜までまだ少し時間があります
よろしければ皆様、ちょっと私の頼みを聞いてもらえますか?」
フィリップは豪商ならではの悩みがあると言う。
この世界のセキュリティは、シュンのいた世界に比べるとずいぶんと遅れているようだった。
かつては金庫破りや窃盗が頻発し、商家にとっては頭の痛い問題だったという。
ディアニルズ家やフィリップら有力商人たちは協力し、ハシュフリードに多額の投資を行った。
その結果、国内全域の治安は目に見えて改善した。
だが、それで鍵そのものが進歩したわけではない。
この世界で一般的に使われている鍵穴は極めて簡素だ。
鉄製の鍵を差し込み、回す。それだけの構造にすぎない。
腕の立つ窃盗団であれば、ピッキングで開けること自体は難しくない。
だが本当に厄介なのは、そうした技術ではなく拍を使う連中だという。
「優秀な拍使いにとっては鍵を開けることなどたやすいことでございましょう?
鍵穴の精巧さとは関係なく、内側のロックを振動させることで外すことが可能になってしまう
律動連盟が開発してくださった、振動計を伴った錠前などもございますが、これが果たして優秀な律動師様の手にかかってもちゃんと機能してくれるのか、私としては多少不安なのでございます」
フィリップは、塩を大量に保管した蔵や、宝飾品のコレクションが、いつ盗まれるかわからないと常に気を揉んでいるらしい。
少々物騒な依頼だとシュンは思ったが、フィリップの普段の生活を思い浮かべると、むしろ当然の不安にも思えた。
「面白そうだな、やってみたい!」
ライドンは、この鍵外しをまるでゲームのように楽しむつもりでいるらしい。
その軽い口調に、場の空気も緩んだ。メンバーたちも顔を見合わせ、それぞれに頷いた。
「それではこちらへ来てください
いくつか鍵を並べておきました」
フィリップは五人を小さな部屋へ案内した。
テーブルが1つあり、鍵が5つ並んでいる。
「そうですな、もしこの5つ全部を開錠できましたら、私の宝物庫の中をご覧入れましょう
そこには世界中の珍しいものがたくさんあります
きっと楽しいことでしょう」
その言葉に、シュンも大いにやる気が起きた。
他国の文化に触れることが、今彼が一番求めていることだったから。
「まずはひとつ目から、やってみてください」




