第77話 厳しいタスク
その日のタスクは危ない場面の連続だった。
セムは一旦は自らの実力で戦おうとした。だが、バルムド郊外コルカの森のモンスターは、普通に戦って勝てる相手ではない。
今日のパーティーは三人組で、二人とも先輩だ。
たとえセムが足を引っ張ろうが、それでぶつくさ文句を言われる事は無い。
しかし、女神真教への勧誘を目的とし、自らの影響力を高めたい彼にとっては、タスクの足手まといとなるのはなるべく避けたい。
ハルリからもらった丸薬は2粒。
昨日のタスクで1粒は使ってしまった。その反動で、午後はぐったりと力が入らなくなってしまった。
できれば今日も同じようなことにはなりたくない。極力負担にならないようにと丁寧に半分に割って、半粒ずつある程度時間を分けて口に放り込んだ。
午前中の戦いは一気に覚醒したセムが大活躍した。
それでも午後になると体調が悪化し、意識も朦朧としてしまう。
パーティーメンバーに心配され、今日は早めのおひらきとなった。
セムは何とか聖拍院での報酬の受け渡しまでは無理に笑顔を見せていたが、その後は…。
メンバーがいなくなるまでベンチで回復を待つ。
そしてある程度時が経ってから、セムは極力人目をはばかり、ゆっくりとその場を後にしようとした。
しかし、その様子に気づくものはいる。
「ねぇ、あなた、大丈夫なの?
体が重そうだけど」
マディエラは以前から少しセムが気になっていた。
というのも、勘がいいティンタがどうもセムはおかしいと言うのだ。
マディエラには何のことかわからない。でも、ティンタの野生の勘は、妙に当たることがある。
「あ、マディエラ…さん
大丈夫です、ちょっと今日のタスクで疲れちゃって…
昨日初めて、モンスターと戦ったものですから
まだ今日が2日目で…」
「あらそう
でも怪我してるわけじゃないみたいね
何がそんなに苦しいのかしら?救護班を呼びましょうか?」
「いやいや、いらないいらない!そんなのは」
セムはもともと純朴な青年だ。隠し立てするのは得意なことではない。
「いいじゃない、一目見てもらうだけでも
何かまずいことでもあるの?」
マディエラには追求したい気持ちもあったが、そもそもそれ以前に彼女は多少おせっかいな人でもあった。
「大丈夫ですよ!
ほら、もうこんなに元気ですから」
セムは無理をして背筋を伸ばし、バシッと体を叩いて見せた。
その様子に、ひとまずマディエラも彼を解放することにした。
だが、一度聖拍院を出るとセムの足取りは一気に重くなる。
もちろんその様子は、マディエラの目にも入ることとなった。
(どうもティンタの言うことがわかる気がしてきたわ
彼は何をしようとしているのかしら?)
翌朝、セムは一旦モンスターの討伐タスクをキャンセルすることにした。
あのハルリの薬なしでは、これ以上は戦えない。
それ以前に、今日は全身が筋肉痛で立っているのもやっとだ。
それでも休むわけにはいかない。昨日のマディエラの様子を思えば、下手に休むと怪しまれる可能性がある。
「また今日も薬草採集にしようかな…」
セムは仕方がなく簡単なタスクを探す。
本来の自分にできる、背丈に見合った内容のものを。
「よう、セム
もうモンスタータスクはやらないのか?」
「…あ、ガルワーラー」




